表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/163

71.配信者、カラアゲの正体を知る

 畑の作業が終わり俺達は家に帰ると、春樹はすでに家にいた。


「おい、百合にコメント見せるなよ」


「あー、それはすまない」


 百合に変な配信コメントを見せていないかと春樹は心配していた。普段はコメントが表示されないように、百合には動画を見せていたらしい。


 俺もそんな機能があることを知らなかった。


「ってかちゃんと仕事してたのか?」


「あー、それは桜が配信を見ながらじゃないと働かないって言うからな」


 部屋の片隅には俺とドリの顔が貼ってあるうちわを持っていた。その下には手を振ってと書いてあった。


「ドリこっちに来て!」


「にゃーに?」


「桜さんにバイバイしてあげて」


 俺はドリと共に手を振る。


「ひゃああああああ、もう幸せすぎて無理」


 この世のものとは言えない声が部屋の中に響いていた。朝は普通の感じだと思っていたが、数時間の間に何が起きたのだろうか。


「あー、久しぶりに生配信を見たら昔の感情が戻ってきたらしいぞ。こっちに来るまではいつもあんな感じだったからな」


 どうやら封印していた配信を久しぶりに見たら元に戻ったらしい。


 推し活グッズも一度捨てたと言っていたが、簡単に配信の沼から抜け出せないようだ。


「少しの間ドリを見ててもらっても良いか?」


「ちょうどおやつも用意してあるからいいぞ」


 春樹の手にはチョコがついたポテトチップスを持っていた。俺の足元にはチラチラと春樹を見るドリとポテトがいた。


 完全にこいつら春樹に餌付けされている。ポテトなんて、よだれを俺のズボンで拭いているからな。


 これでもお前のテイマー兼飼い主だと言ってやりたい。


「じゃあ、ドリをよろしくね。あとじいちゃんがまた腰を痛めたから湿布を貼ってあげて」


「また腰をやったのね。ポテトとはしゃぎすぎよ」


 そんな祖父の腰を祖母は湿布を貼りながら叩いていた。ドリも一緒に叩きそうになっていたところを急いで止めた。


 そのまま叩いたら祖父はすぐにあの世にいってしまうだろう。


 認知症どころではない。


 それにしても最近祖父の認知症が気にならなくなってきた。定期検診でもう一度確認してもらわないといけない。


「ちょっとカラアゲと散歩してくるね」


 俺はカラアゲを連れて探索者ギルドに行くことにした。


 養鶏場のおじさんには鶏ではないと言われたため、ギルドでカラアゲの正体を聞こうと思ったのだ。


 魔物ならポテト達と同じでチョーカーを用意しないといけない。


 俺は今も鶏だと思っているけどな。


 ギルドまでカラアゲと散歩しながら歩いていく。段々と近づくとダンジョン周囲の環境に驚きしか感じない。


 この間までは何もないただのテントが集まった空間が、いつのまにか仮施設のようにプレハブ小屋がいくつか建てられていた。


 その中からギルドを探すと、ダンジョンの一番近くにあった。


「お久しぶりです」


 中はプレハブ小屋だが、オシャレな内装になっている。


 イーナカギルドはどこか男らしい作りになっていたが、こっちはどちらかと言えばカフェに近い。


 その中にはクマやゴリラのような体が大きい男ばかりで、なんとも言えない雰囲気だ。


「直樹さんこっちです!」


 奥の方に手を振っている人がいた。俺はゆっくりと近づくとその姿に驚いた。


「畑でもやるんですか?」


「貴婦人さんのアイデアで新しく制服を作ったんです」


 ギルドのスタッフが来ていたのは、アースカラーを取り入れたつなぎのような制服だった。自然を意識した物に変更したのだろう。


 それにしても貴婦人は本当に仕事ができる人なんだろう。


「今日はどうしましたか?」


 俺は足元にいるカラアゲを持ち上げて見せる。


「鶏なんですけど……」


「鶏ですか? 私にはカカポに見えますよ」


「カカポ?」


 俺は聞いたこともない言葉にやはり魔物だと思った。おまじないをかけると、動物も魔物になってしまうのだろう。


 だが、女性から言われた言葉は想像と違った。


絶滅危惧種(・・・・・)とも言われているフクロウオウムのことですね」


 女性はパソコンで調べると画像を検索していた。見せられた画像はどことなくカラアゲに似ている。


 体重が重くて飛べないオウムと言われているらしい。


 確かにカラアゲは手をバタバタさせても飛べない。


 鶏なら少しは跳ねると思うが、カラアゲはただバタバタとしているだけだ。


 とりあえず魔物でもないなら、カラアゲはただのカカポということにしておいた。


 魔力を測定するかと聞かれたが、嫌な予感がしたのでやらないことにした。


 カラアゲはカカポだ。


「お前は今日からカカポだよ?」


『クウェ!?』


 大きな声で返事をしているから、特に問題はないだろう。本人もカカポと思っているはずだ。


 問題が解決した俺達は家に帰ることにした。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!


カカポ似(仮)ということになりました笑

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍、電子書籍発売中★

畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

カクヨムコン受賞

『薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう』
ここをタップ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ