69.配信者、さつまいもを作る
先頭から俺、ドリ、百合、カラアゲの順番で一列になって畑に向かう。その姿はゲームの中で冒険をしている主人公達のようだ。
「今日は苗植え、苗植え楽しいな」
「たのちいたのちい」
「苗植えだ」
『クゥェクゥェ』
今日はさつまいもの苗を植えるつもりだ。夏野菜のシーズンが終わり頃になり、秋の味覚にチェンジしていく。
じゃがいもにおまじないをかけた時もすぐにできたため、さつまいもも同じようにどれだけ早くできるか実験の意味合いも含まれている。
「ここでやるの?」
着いた畑を見て百合は驚いた顔をしている。目の前にあるのは、雑草が茂った畑だからだ。
今回は畑を広げるつもりでさつまいもを植えていく。
「さつまいもは痩せた土地じゃないとつるぼけしちゃうんだ」
「つるぼけ?」
「パパ?」
いや、つるぼけはどちらかといえば祖父だろう。頭がツルツルしているしボケている。
「ドリ、俺はフサフサのピンピンだ」
「パパはフサフサのピンピンなの?」
「あー、うん。そうだな」
俺は心の中で春樹に謝った。百合には言わせたらいけないことを教えたようだ。
「つるぼけは大きなさつまいもができなくなる感じだね」
肥料をやり過ぎると茎や葉ばかりに栄養がいって花や実がつかなくなってしまう。
さつまいもみたいな芋類は根に養分がいかないと痩せたさつまいもになる。
そのため、夏野菜を植えていた土よりは新しい畑の方が最適だ。
ちょうど日光がよく当たり、通気性が良い場所が、まだ畑にはなっていなかった。
何を勘違いしたのか百合は自分の胸をペチペチと触っていた。
さすがにそこは成長期になったら、ある程度は大きくなるから気にしなくても大丈夫だろう。
作業を始める前に、俺はさっそくスマホを準備して生配信を始めた。
==================
幼女を見守る人 最近
幼女が増えているだと……羨ましいぜ!
▶︎返信する
ハタケノカカシ 最近
次こそはカカシに出番ありますか?
▶︎返信する
犬も歩けば電信柱に当たる 最近
電信柱もいまだに出番がないです
▶︎返信する
未婚の母 最近
私も移住しようかしら。
▶︎返信する
==================
どんどんとコメントが流れていく。百合を生配信するのは事前に春樹から許可は得ている。
むしろ百合ちゃんに一緒に出たいと頼み込まれて、どうしようもなかったってのもあった。
実際にドリの誘拐みたいに何が起こるかわからないし、問題が起きてからでは遅い。
探索者には百合の周囲も警戒してもらうように伝えたらいいだろう。
「じゃあ、さっそく雑草を抜いて……ちょ、カラアゲそれは野菜じゃないぞ!?」
雑草の処理から始めようとしたら、なんとカラアゲが雑草を食べていた。
『クゥェ?』
カラアゲは不思議そうな顔でこっちを見ていた。野菜ばかり好んで食べていたから、雑草を食べないかと思ったがそこは鶏と同じらしい。
除草を目的に鶏を飼育することは少なくない。
雑草を食べた鶏の糞が肥料になり、土壌が良くなるというサイクルもできる。
カラアゲの雑草を食べるのが速く、次々と雑草がなくなっていく。
俺達も負けずとみんなで競いながら薬草を抜いていくと、すぐに雑草はなくなった。
「おーい、順調か?」
散歩を終えた祖父とポテトが帰ってきた。爽やかな顔をしているが、小嶋養鶏場があるところから回って帰ってきているため距離は結構ある。
俺なんておじさんに会いに行く時はいつも車を使っている。
「あとは土を少し解して苗を植えるだけだよ」
みんなでスコップを用意して、硬くなった土を解していく。
ここにも穴掘りのプロがいた。ポテトは中腰になって土を解していく。
ガラパゴス携帯のように折り畳まれた姿勢で、素早く動けることに驚きだ。
「おおお、ポテトも張り切ってるな!」
「おい、じいちゃんがやったら――」
「うっ……腰がやられた」
案の定、再び祖父が腰を痛めていた。あれだけリハビリの先生に腰を使ってと注意を受けていたのに、ドリ達にかっこいい姿を見せたかったのだろう。
近くに置いてある椅子に腰掛けて作業が終わるまで待ってもらうことにした。
==================
名無しの凡人 最近
爺さん大丈夫か?
▶︎返信する
孤高の侍 最近
拙者が夜のマッサージするでござる
▶︎返信する
オホモダチ 最近
夜のマッサージって何するのよ。侍は枯れ専なのかしら?
▶︎返信する
鉄壁の聖女 最近
枯れ専?
▶︎返信する
ハタケノカカシ 最近
枯れ専?
▶︎返信する
畑の日記大好きさん 最近
それってドリちゃんと百合ちゃんに聞かせたらいけない単語では?
▶︎返信する
オサレシェフ 最近
よし、侍を叱っておく。
▶︎返信する
孤高の侍 最近
拙者は関係ないでござる!!
▶︎返信する
==================
畑ではないところでバタバタとしている男の姿がそこにはあった。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。