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67.配信者、過去を思い出す

「ケーキ食べる?」


「けえーき?」


「今ママが作ってくれてるの! 一緒に食べよ」


「いっちょ!」


 百合がドリの手を取り家の中に入っていく。


「あー、すまないな。ポテトチップスぐらい持ってきたらよかったな」


 謝るだけだと思い、特に何も持ってきていない。ちょうど来る前にポテトチップスを揚げていたから、それを持ってきたらよかった。


「ああ、気にすんな。またみんなを連れて挨拶に行くよ。直樹も上がっていくだろ?」


 なんか春樹に勝ったと思ったら、自然と春樹に対して対抗心はなくなった。むしろ今でもなぜ対抗していたのかもわからない。


「お邪魔します」


 久々に来た春樹の家は懐かしく感じる。いつも隣にある養鶏場に来ることはあっても、家に来るのは学生ぶりだ。


「あっ、お母さんにお線香あげてもいいか?」


 俺は昔のように仏壇がある部屋に入っていく。久しぶりに来たのに、自然と体が覚えている。


「おばさんお久しぶりです」


 仏壇の前に座り、手を合わせて挨拶をする。春樹の母親も探索者をしていた。俺の両親の紹介でおじさんと出会ったとおじさんから聞いている。


 そんな春樹の母親は病気で亡くなった。春樹がお腹の中にいる時に癌になり、春樹が生まれて数年後にはこの世を去った。


 病気の影響で子宮を全て摘出しないといけなくなり、春樹を優先したらしい。


 おじさんとの子どもが欲しかったのと春樹を優先したのだろう。


 その結果、癌が転移して春樹が生まれてからも闘病生活で入退院を繰り返していた。


 俺もその時の記憶はあまり残っていないが、春樹の兄にならないといけないと幼いながらも思った。だが、数年したら俺の両親も亡くなった。


 今じゃ俺も両親の姿をあまり思い出せない。


「なんか懐かしいよな。俺達もいつのまにか父親になっているかね」


 気がつけば俺達も歳を重ねて、亡くなった両親と同じぐらいの年齢になった。


 俺もまさか子どものようなドリや祖父母達とまた一緒に暮らすとは思いもしなかった。


久しぶり(・・・・)に百合の笑顔を見て、俺も頑張らないといけないって思ったよ」


「久しぶり?」


「ああ、俺達共働きで百合には寂しい思いをさせていたからな」


 春樹はいつも朝早くから夜遅くまで仕事で家を空けて、母親の桜も同じように働いていた。


 毎日保育園に預けられ寂しい思いをしていた百合は、次第に笑わない子になったらしい。


 そんなある日、お店に来た探索者に遊んでもらった時に"畑の日記チャンネル"の存在を知った。


 動画の中で楽しそうに畑を作る俺とドリの姿に憧れたのだろう。


 家族で見ていくうちに妻の桜も俺にハマったらしい。


 ここに来る時には手作りのうちわとかボードを捨てるのが大変だと言っていた。


 どこかのアイドルの追っかけみたいで、俺には何を言っているのか意味がわからなかった。


「百合のおかげで直樹がこっちに戻ってきたことを知ったからな。本当に俺達を助けてくれてありがとう」


 真面目に頭を下げられると、俺もどこか恥ずかしくなってしまう。


「ははは、俺が兄貴だからな。百合ちゃんの面倒もみてあげよう」


 子どもが一人増えても構わない。昔みたいにお互いに助け合って生活すれば良いだけだ。


「えっ、私と結婚してくれるの?」


 声がする方を振り返れば、俺達を呼びに来た百合とドリがいた。


 また喧嘩になるかと思ったが、ドリもニコニコとしていた。


 その口には生クリームが付いている。


 先に味見して機嫌が良いのだろう。


「百合ちゃんはまだ子どもだから結婚できないよ。まずは大きくならないといけないね」


 さすがに今断ったら可哀想だと思い、理由をつけるが背後から春樹の視線を感じる。


「ドリ聞いた? 私もたくさん食べて大きくなるね! 男の人は大きな胸が好きってお客さんから聞いたことあるしね」


 客は百合に何を教えているのか。俺と春樹はその場でため息を吐く。


 そんなことを知らない二人はまだ成長していない胸をペシペシ叩いている。


 その隣ではカラアゲが胸を自慢して歩いていた。玄関で待っているように伝えたが付いてきたようだ。


「ああ、カラアゲがすまない」


「それぐらい構わないよ。小嶋養鶏場ではそれぐらい当たり前だからな」


 小学生の頃に自由研究で孵化させた、ささみとぼんじりが常にお互いの家にいた。


 あいつらも今頃は天国で楽しくやっているのだろうか。最後は食べるのが嫌で、ペットとしてずっと飼っていたからな。


 一人で懐かしんでいるとみんなに呼ばれた。


「パパ!」

「パパ早く!」

「直樹いくぞー」


 俺はドリ達とともにケーキを食べに居間に向かった。

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「ほちちょーらい!」

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