64.配信者、ドリアードに謝る
俺はドリを追いかける。まずは一度家に帰ると玄関にチップスが丸まっていた。前よりもお腹が大きくなり、誰が見ても妊娠していることがわかるほどだ。
「ドリを見てないか?」
『クゥーン』
首を横に振りながら伝えてくれる。きっとここには帰ってきていないようだ。そういえば、ポテトも家に帰ったはずだが姿が見えない。
「ポテトはどこに行ったんだ?」
『バウ!』
チップスは立ち上がると、花畑の方を向いて吠えている。わざわざ立ち上がらなくても良いが、ミツメウルフは何かあるたびに二足立ちする犬種なんだろうか。
俺はチップスに言われた通りに花畑に向かうと、周辺をくるくる歩いているポテトがいた。
途中で立ち止まっては、しゃがんで頭を抱えている。
「ポテト、ドリがどこにいるか――」
『バウ!』
話し終える前にポテトは花畑の中心を指差し……いや、肉球を向けているのか。
目を凝らして中央を見てみると、ある部分だけボコッと深緑の山が見える。きっとドリの頭だろう。
「ドリー、どこだー?」
「いにゃい」
声をかけると返事が返ってきた。まさか"ここにはいない"と言いたいのだろうか。思わず可愛いドリに頬が緩んでしまう。
「ドリはパパのことが嫌いなの?」
「きりゃい」
いざ、本当に嫌いって言われると胸が張り裂けそうだ。泣いて布団の中に篭りたくなってしまう。
それでもドリは嫌いって言うたびに、どこか鼻をすすっていた。
「パパはドリのこと好きだよ?」
「いちびゃん」
「一番?」
「ドリ、パパいちびゃん」
「ドリはパパが一番?」
「うん」
「パパ、ドリないない」
ドリの中で俺が一番だけど、俺の中でドリが一番ではないと言いたいのだろうか。百合に抱きつかれてキスされているのを見て、自分が一番ではないということに悲しんでいる。
俺の中ではいつでもドリが一番だと思っていたが、寂しい思いをさせてしまったようだ。
「俺の中ではいつもドリが一番だよ?」
「うしょ」
言葉では通じてくれないのなら、何か行動を起こさないとダメなんだろう。ただ、花畑の中に入るにはドリの花を踏んでしまう。
「ちょっとごめんね」
俺は花に謝りながら、花畑の中心まで足を踏み入れていく。少しずつ大きくなっている花畑も中央に行くと周囲は満開の花で囲まれている。
「ドリ」
「ヤッ!」
ドリの手を掴むとおもいっきり弾かれた。本気で弾かれると、大人が手を叩いたよりも痛かった。
「ドリ、ごめんな」
俺が後ろから抱きしめると、ドリは腕の中で暴れている。それだけドリの中で一番じゃなかったのが嫌だったんだろう。
どうしたらドリが一番だとわかってくれるのだろうか。
俺はなぜドリが一番ではないと感じたのか、考えることにした。
たしか百合が俺に抱きついてきた時は、怒っていたけど悲しい顔はしていなかった。
そうなると明らかに、俺の頬にキスをしたのが原因なんだろう。
「ドリは俺の一番だぞ!」
ドリが暴れないように捕まえて頬にキスをする。驚いた衝撃なはわからないが、暴れていたドリは止まった。
「ほんちょ?」
俺の顔を見て首を傾げている。目が充血しているのか白目の部分まで赤く染まり、前に魔物図鑑で見たドリアードのような目になっていた。よく見たら肌もいつもの黄色より緑色になってきている。
これがドリの本当の姿なんだろうか。それとも、感情のコントロールが出来なくなり、ダンジョンにいるようなドリアードになってしまうのか。
初めてみる姿に戸惑いながらも、俺は再び頷いて頬にキスをする。
「ドリいちびゃん!」
ドリは俺に抱きつくと強く抱きしめてきた。相変わらず力の調整ができずに、少し肋骨が軋む音がするが子育てではよくあることなんだろう。
「そうだ。ドリが一番だぞ」
頭を優しく撫でていると、自然に肌の色はいつものように戻り充血していた部分も白く戻っていく。
感情のコントロールができない。
それがドリをより魔物にしてしまうことになると俺は学んだ。
「ふふふ、ドリがいちびゃん!」
腕の中でご機嫌になっていたドリを抱きかかえると、自然に花畑に一本の道筋ができた。
ドリの力で花が動いたのだろうか。
抱えなくても良いとわかった俺はゆっくりとドリを地面に降ろす。
「戻ろうか?」
「うん!」
手を差し出すとドリは優しく握った。笑顔でスキップするドリとともに花道を通って、春樹達がいるところへ戻ることにした。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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