61.配信者、家に帰る
俺はいつの間にか企業に対しての説明会に行っていたようだ。帰りに意識を失って倒れたと春樹に聞かされた。
過去に倒れたことは数回あるが、大人になって初めて起きた気がする。
実際、記憶がないため倒れたかどうかもわからない。
頭がぼーっとして考えるのも疲れてくる。
静かな車の中。
俺はおじさんに聞かないといけないことを思い出した。
「おじさんのところの卵って、カラーひよこが生まれるの?」
「なっ!? やっぱり頭でも打ったのか?」
おじさんは驚いていた。やはりおかしな発言なんだろう。
養鶏場にいる鶏からカラーひよこが生まれることは絶対ないらしい。
「次の日には歩いていたし、野菜も食べてたんだよね……」
「それはひよこなのか?」
おじさんは養鶏場をやっていてそんな経験はないと。他の養鶏場仲間にも聞いたことはないらしい。
「カラアゲちゃんってひょっとしたら魔物かもしれないわね」
「まさか?」
「だって、ドリちゃんの"のびのびー"で野菜に魔力が込められたなら、カラアゲちゃんに魔力が宿って魔物になるのもおかしくないわよ」
動物に魔力が宿った姿を魔物と言っている文献もあるらしい。実際には違う生き物と言われているのが一般的だ。
俺は急いでスマホから鳥の姿をした魔物を探す。
「コカトリス……可愛くないよ?」
有名な鳥系魔物はコカトリスという大きな鶏みたいな魔物が出てきた。尻尾には蛇が付いているらしい。
カラアゲが将来コカトリスになるなら、その前に唐揚げにした方が、本人にとって幸せかもしれないと思うほどの見た目だった。
ドリだけではなく、カラアゲでも今後悩むことになるだろう。
その後も車に乗っている時は体調が悪くなることもなく、無事に家に着いた。
「今日はゆっくり休めよ」
「ああ、今日は迷惑かけたな。ありがとう」
俺はそう言って車から降りた。車の中で春樹と貴婦人の叫び声が聞こえていた。
一日出かけていただけなのに、すごく疲れた気がする。まだ頭は曇っているような感覚だ。
「ただいま」
「パパー!」
扉を開けるとドリが泣いて駆け寄ってきた。後ろには疲れ切った探索者達がいる。
「パパ……?」
ドリは俺の姿を見ると立ち止まり、大きく手を広げている。
これは抱っこしてという合図だろうか。
「ドリー!」
俺はそのままドリを抱きかかえると、なぜか俺の頭を撫でている。
いつもとは違うゴシゴシするような感じではなく、トントンとしている。
「いいこ」
するとさっきまでぼーっとしていた意識も、次第にすっきりとしてくる。頭の中が晴れたような感じだ。
ミツメウルフに噛まれた時にも似たような経験をした。
「あれって回復魔法だよね?」
「俺から見てもそうだな」
「撫でてもらえるだけで、拙者も回復するでござる」
「なら俺が――」
「やめるでござるー!」
凡人と侍が戯れあっていた。それを見ていた貴婦人の手は震えている。
俺と春樹が戯れあっている時と同じ反応をしていた。
「気持ち悪いもの見せないでくれるかしら?」
貴婦人は凍てつくほどの冷たい言葉と毒魔法を二人に放っていた。どうやらあの二人には興味ないようだ。
「ドリとお留守番ありがとうございます。お礼のケーキです」
一日ドリの面倒を見てくれたみんなにお礼としてケーキを渡す。
チワワのように目をキラキラと輝かせていた。餌付けするわけではないが、疲れた体は甘いものを求めていたのだろう。
「ドリちゃんが急に泣き出して大変でした。何が原因かもわからなくて」
「昼過ぎから泣き喚いて、畑や家の中をずっと探し回ってたぞ」
「拙者もついつい普段の話し方になったでござる」
どうやらドリはずっと俺を探しながら泣いていたらしい。何か嫌なことがあったのか、寂しいのかと聞いてもずっと俺を呼んでいたと。
普段は泣くことのないドリだし、祖父母や探索者、ポテトとチップスもいる。
それだけドリの中で、俺の存在が少し大きくなったのだろうか。
「これからはドリと一緒じゃないとダメだな」
「いっちょ! パパいいこ!」
ドリはずっと俺の頭を撫でていた。優しく撫でれるなら、これからもゴシゴシしない方法で撫でてもらいたいものだ。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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