53.配信者、ポテトチップスに驚く
椅子に座るとテーブルにはお茶とポテトチップスが置いてあった。
いつも春樹が遊びに来ると、祖母はポテトチップスを用意していた。今回も友達が来たと思ったのだろう。
「祖母が作ったやつなので、よかったら食べてください」
ギルドマスターはポテトチップスを一つ手に取ると口に入れる。
「うまっ……」
心から出た声だろう。黙々とギルドマスターはポテトチップスを食べていた。
手の動きが速すぎて、彼も探索者だったことを改めて知る。
「パパ……」
そんな中、ドリは俺の服を引っ張っていた。きっとドリも食べたいのだろう。
俺が作ったじゃがいもだから、材料はいくらでもある。その様子を見ていた祖母も、再び台所でポテトチップスを作り出した。
「すまない。ついつい手が止まらなくなってしまって」
「いえいえ、ばあちゃんのポテトチップスってどこで買うよりも美味しいからね」
「そんなこと言っても何も出ないよー?」
そう言いながらもどんどんポテトチップスを揚げてテーブルに置いていく。相変わらず祖母の料理をする速さにも驚きだ。
俺も一つ手に取り食べてみる。
まず持った段階ですごい軽く、良い香りが鼻を突き抜ける。
今まで食べていたポテトチップスとは別物だ。
これが俺の作ったじゃがいも効果なんだろうか。
口に入れた瞬間、サクサクと絶妙な食感が口に広がっていく。パリっとした音とともに香ばしいじゃがいもの風味が舌の上で踊り、一緒に踊りそうになる。
「えっ……なんだこれ」
油で揚げているはずなのに、後味さっぱりとしていて、飽きが来ずに何度でも手が伸びてしまう。
一度食べ始めると、止まらなくなる危険性があるほど美味しい。
昔食べたポテトチップスより遥かに美味しかった。
「ぽちぇと!」
ドリもすぐに無くなったからか、お皿を持って祖母のところへ取りに行った。
「森田さんのお婆さんって何者なんですか?」
「いやー、普通のおばあちゃんのはずなんだけどね」
ミツメウルフの気持ちも読めて、美味しい料理を簡単に作ってしまう。お弁当を作った時の素早い動きには驚いたが、さらに驚くことばかりだ。
『クゥーン!』
そんな俺達をみてミツメウルフが寄ってきた。ポテトチップスが食べたいのだろうか。
犬に食べさせていいのか疑問だが、同じ魔物であるドリが食べて問題ないなら食べさせて良いだろう。
「食べるか?」
俺は食べやすいようにお皿を目の前に出すと、そのまま咥えてどこかに行ってしまった。
後を追いかけると、妊娠している奥さんにポテトチップスをあげていた。
ポテトチップスを食べて目をキラキラと光らせていた。
「もっと食べるか?」
俺の問いに二匹して頷いていた。俺は祖母からポテトチップスを受け取ると、母犬ばかり食べていた。
よっぽど子どもへの栄養が足りてなかったのだろうか。
ギルドマスターに確認すると、きっと妊娠しているから魔力を求めているかもしれないと言っていた。
「お前の分もあるから食べていいぞ」
もう一つお皿を用意すると、皿と俺を交互に見ていた。自分が食べるか迷っているのだろう。
「早く食べないとドリに取られるぞ?」
『バァ!?』
その言葉を聞いたミツメウルフはガツガツと食べていた。
もう一度言うが、食べているのは肉ではなくてポテトチップスだ。
しばらくそれが続くと、お腹いっぱいになったのか二匹とも毛布の上に包まって寝ている。
どこから見ても犬にしか見えないミツメウルフに、俺の意思は固まっていた。
「東堂さん、俺のところでこの二匹を預かってもいいかな? 魔力に関しては魔石でなんとかするよ」
ドリと同様にテイマーとして素質はないし、魔力もない俺にはミツメウルフをテイムすることはできない。
ただ、魔石を使うことで一度ぐらいは言うことを聞かすことはできるだろう。
だが、そんなことがないようにはしたい。
きっとその時はこの子らを首輪の力で締め殺す時になる。
「森田さんがその気ならこっちは助かるかな」
我が家で番犬のミツメウルフを飼うことになった。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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