51.配信者、学校があるか聞きにいく
動画の撮影も終わり、ダンジョンに行くといつもの受付嬢が仕事をしていた。
「ギルドマスターって今日どこにいるかわかりますか?」
「一応ここのギルドマスターはしばらくの間は私になりますね」
どうやらギルドマスターはギルドに一人はいる管理者のことを言うらしい。
ここには彼女しかいないため、彼女がここのダンジョンのギルドマスターとして一旦配属になった。
「それで何かあったんですか?」
「魔物が通う学校ってあったりしますか?」
俺はドリが希望するなら学校に通わせたいと思った。
ただ、今のドリの年齢もわからないし、魔物が通う学校があるかも知らない。
そのためギルドマスターに確認しに来たのだ。
「魔物の学校ですか? それは魔物育成所のことで合ってますか?」
どうやらテイマー向けに生まれた魔物を教育する機関はあるらしい。
イメージとしては盲導犬や救助犬を育てる場所に近いようだ。
ただ、聞いた話でもそれがドリに通わせたい学校とは遠く離れていた。
きっとドリにはのびのびと育ってもらった方が良いのだろう。
「そういえば、直樹さんってテイマーでしたよね?」
「一応テイマーですが……」
テイマーはテイマーだが、魔力を持っていない特殊なテイマーだ。
ドリと一緒にいるのも、ただ仲良くなって一緒にいるだけだ。
チョーカーも魔石の魔力を使っているが、俺に拘束するだけの力はない。
「ちょうどテイマーを探していたんです。少し待って頂いてもよろしいですか?」
彼女はスマホで連絡すると、どこかに電話をかけているようだ。
「東堂さん、今時間いいですか? ちょうど良いテイマーが近場にいましたよ!」
彼女はそのままスマホを俺に渡してきた。
「あっ、もしもし」
「ん? その声は森田くんかな?」
電話から聞こえてくる声は、俺の探していたギルドマスターだった。
電話越しからもどことなく、距離感の近いチャラさが伝わってくる。
「あっ、そうか。森田くんもテイマーという扱いだったのか! いやー、良いところにテイマーがいたよ」
どうやらギルドマスターも俺のことをテイマーとして認識していなかったようだ。ギルドでテイマーを探していたらしい。
「何かあったんですか?」
「この間の事件で捕まった大葉がテイムしていたミツメウルフは覚えているか?」
俺にかなり痛い甘噛みをしていたミツメウルフのことを言っているのだろう。
最後はドリに怯えて二足歩行で走ってた変わったやつだった。
「実は大葉が探索者の資格を失ったから、テイムした魔物をどうするか迷っていたんだよ」
基本的にテイマーが亡くなる時は、すでにテイムした魔物も亡くなっていることが多い。
だが、今回みたいに犯罪で捕まった人はテイムした魔物を没収されてしまう。
その魔物達を今後どうするか。
それは必然的に殺処分される道をいくしかなくなってしまう。
そもそも探索者にテイマーの数が少ないのと、テイムされた魔物はそのテイマーにしか懐かないと言われているのが原因だ。
大葉がテイムしていたミツメウルフは10匹ほどいた。魔物の中でも懐きやすいミツメウルフは、数体はどうにかテイマーに引き取ってもらえた。
ただ、その中で2匹の番だけは誰にも懐かないため、引き取り手がいないらしい。
殺処分をするかギルド側で迷っている段階で俺が電話をしたらしい。
自分勝手な人間に育てられた魔物が、どこか可哀想に思ってしまった。
パートナーとしてテイムするなら、最後まで面倒を見るのがテイマーとしての常識ではないのだろうか。
俺はドリを一生見捨てる気はないけどな。
きっと命をかけてでもドリを守るだろう。
俺は準備が出来次第、一度ミツメウルフを家に連れてきてもらうように頼んだ。
俺に懐けばテイムが出来なくても、飼うことはできるだろう。
「じゃあ、また何かあれば連絡してください」
「わかりました! 東堂から連絡があれば直接お伺いしますね」
彼女にそう告げると家に戻ることにした。
あっ、そういえばまた彼女の名前を聞くのを忘れていた。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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