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44.配信者、農業体験を考える

「あのー、本当に私もやって良いんですか?」


「大丈夫ですよ。むしろ今後の民泊で希望者がいれば、やってみようかと思ってたんです」


 市長の話もあり、民泊を始めるにあたって何かできないかと考えた。そこで思いついたのが農業体験だ。


 自分で野菜を収穫したり、畑を耕したりなどこの世の中で経験することはほとんどなくなった。


 それがダンジョン都市で気軽に体験できるのも、生産者として畑を広めるきっかけになると思った。


 自分で収穫した野菜が食事に出てくる農業体験が都市でもできるって他の都市にはない魅力を感じた。


 もし成功したら規模を大きくして、小嶋養鶏場にも協力してもらい、町おこしとしてのイベントに繋がるだろう。


 ダンジョンに行かないから声をかけたら、今日は畑作業の見学をしたいと言っていた。


 せっかくなら手伝ってもらおうというところから始まった。


「ネーネ!」


 ドリは聖奈を連れてトマトの収穫に向かった。舌足らずでも必死にジェスチャーで伝えようとしている姿に俺も微笑んでしまう。


「直樹ちょっといいか?」


「じいちゃんどうしたの」


「あの子は直樹のお嫁さんか?」


「えっ……」


 突然の祖父の言葉に唖然としてしまう。聖奈が家に来てから数日は経つが、今でもお嫁さんだと認識しているのだろうか。


「いや、あの人は違うよ」


「そうか……ならお嫁さんにどうだ?」


 祖父達の年代ってお見合いやら、仲人やらお節介なほど、くっつけるのが好きな人達が多い。


 出会いが少ない田舎だからこそ尚更そう思うのだろう。


「まぁ、俺はドリがいたら良いかな」


「そりゃそうだな。ドリは可愛いからな」


 そこで納得するのがどこか祖父らしい。無理に押し付けたりもせずに、意思を尊重してくれるからこそ、俺は都会に行って働くことができた。


「パパー!」


 ドリがたくさんのトマトを持って走ってきた。聖奈に収穫の仕方を教えていたのだろう。


 トマトを受け取ると、みんなで収穫を始めた。





 収穫した野菜を持って家に帰ると、玄関には見知らぬ男女の靴があった。


「ばあちゃん誰か来てる――」


「おお、直樹おかえり!」


 そこにはなぜかフライパンを振っている春樹がいた。あいつはあの時、養鶏場に帰らせたはずだがそのまま家にいたのだろうか。


 むしろ鶏の餌にでもなればいい。


「なんでまだここにいるんだ?」


「おばあちゃんに誘われたから遊びに来たんだよ。別に幼馴染だからいいだろう」


 俺達の言い合いは止まらない。


 いつも俺が怒っていることが多いが……。


「幼馴染のケンカップル……最高!」


 振り向くとテーブルでは優雅に麦茶を飲む貴婦人がいた。彼女が飲んだら、麦茶も高級な紅茶に見えてくる。


「あっ、貴婦人さん」


「ああ、どうぞ話を続けてください。私のことはお構いなく、今は石像として佇んでいるだけです」


 探索者はどこか変わり者が多いのだろうか。


 どうぞと言われても特に春樹とは話すことはない。


 それになぜフライパンを持って台所にいるのだろうか。


「久しぶりに直樹に食べてもらおうと思ってな」


 料理ができたのか俺のところに持ってきた。


 香ばしい匂いが疲れた俺の体を突き抜ける。


「あんた忘れたのかね? 小さい頃、直樹が作った野菜を春樹くんが料理するって約束してたじゃないの」


 小さい頃の記憶なんてほとんどない。


 俺が覚えているのは自由研究が被ったのと、好きな人が取られたのと、春樹がすぐにレギュラーを奪ったこと。


 こいつとの嫌な思い出をあげたらきりが無い。


「パパメッ! だよ?」


 また少しイライラしているのがバレてしまった。


 ドリは俺の背中を叩いて怒っている。


 そんな俺を見兼ねたのか、春樹は肩を組んできた。


「俺と直樹は親友だよな?」


「はぁん?」


「パパ?」


 ドリの赤い瞳が俺の顔をずっと見つめてくる。


 なぜかこの瞳に見つめられると逃げられないような気がする。


親友(・・)だよな?」


 春樹も俺を見てくる。


 これは返事をしないとずっとドリから怒られ続けるのだろう。


「そっ……そうだよ。パパは春樹と親友だ!」


 俺は春樹を睨みつける。


 だが、それを見て喜んでいる人もいた。


「もう、無理! トイレでいいから私もここに住ませてください!」


 貴婦人は次々と鞄からお金を取り出し、テーブルに積み上げていく。


 この人はいつもどれだけの大金を持ち歩いているのだろうか。


 全て帯付が付いているため、軽く500万以上はあるだろう。


「これから賑やかになって良いわね。せっかく春樹くんがご飯を作ったから食べていってください」


 祖母に丸められて俺達は春樹の作ったご飯を食べることになった。


 正直悔しいが、春樹が作ったご飯はめちゃくちゃ美味かった。


 ドリが一瞬にして懐くぐらいだ。


 やはり俺はこいつに一生勝てないのだろう。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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