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42.配信者、幼馴染が嫌い ※一部貴婦人視点

 「いやー、直樹久々だな! 元気だったか!」


 馴れ馴れしく肩を組んでくる男を俺は一生懸命剥がす。


 俺はこいつのことを昔からライバルだと思っている。


 毎回俺のことを邪魔しては優越感に浸っているような男だ。


 自由研究の時もそうだが、学生時代に好きになる人も同じだし、田舎だからクラスも部活も同じになる。


 家も近くだから帰るのも同じだ。


 基本的に小嶋養鶏場のおじさんと祖父が交互に学校に送ってくれたからいつも一緒にいることになる。


 そこまで一緒になると常にセット扱いになっていた。


 女の子が俺に寄ってくるのも、決まって目の前にいる男と仲良くなりたいからだった。


 これで俺が女性だったら、あわよくば良い関係になったのだろう。


 だが、俺は男だし身近に優秀なやつがいたらライバル心しか芽生えない。


「お前なんでいるんだ?」


 こいつは俺と同じタイミングで都会に行ったはずだ。元々料理人になりたいとおじさんから聞いていた。


「おいおい、相変わらずつれないやつだな。俺には春樹って名前が……おいおい!」


 めんどくさいことには関わらない方が良いだろう。


 探索者がいなくなった途端に俺は急いでテーブルを片付ける。


 何かずっと話していたが、俺は積極的に無視をする。


 これは必然で当たり前のことだ。


 こいつに関わると良いことは起きないからな。


「パパさんこっちも片付け終わりました」


「パパー!」


 そんな俺の元に聖奈とドリがやってきた。


 ああ、癒される。


 ドリを見たらあいつの嫌な顔にモザイクがかかったように感じる。


 いつからか春樹の顔はモザイクのかかったようにぼやけている。


 きっと嫌いなやつの顔を脳内で消去しているのだろう。


「あっ、この方は?」


「初めまして! 俺は幼馴染の小嶋(こじま)春樹(はるき)って――」


「ただの隣に住むやつだな」


「それを幼馴染と言いませんか?」


 聖奈も俺と春樹を幼馴染にしたいようだ。


 そこは一歩譲っても良いが、こいつはいつまでいるのだろうか。


「俺は忙しいからお前も帰れよ! ほらほら!」


 春樹を追い払うように手を振る。


 これが終わったら畑の作業もあるし、玄関にいたら邪魔になる。


「パパ?」


「なんだ?」


「おこおこメッ!」


 俺はドリに怒られるほど機嫌が悪かったらしい。


 昔から春樹が関わってくると怒っていたからな。


 それは大人になっても変わらないようだ。


「おお、それはすまなかった」


 すぐに聖奈とドリに謝ると、二人になぜか頭を撫でられた。


 あれ?


 なぜ聖奈も俺の頭を撫でているんだ?





 私は新しく見つかった最高難易度のダンジョンの探索を始めた。昨日少しだけ覗いたときは、特に最高難易度と言われる雰囲気はなかった。


 だが、それは一階層のみだった。


「出てくる魔物が大きいものばかりでめんどくさいわね」


 目の前で大きく手を振り上げているオーガの攻撃を一瞬で避ける。


 正確にいえば、体を毒液に変えて攻撃をいなしている。


「もう、そろそろ毒沼にでも落ちて欲しいわ」


 周囲には毒魔法で作った特製の沼が出来ている。そこに入った瞬間に体が溶けていく仕様なのに、中々オーガは落ちてくれない。


 私は毒沼に潜ると少しずつオーガに近づく。


 オーガは突然いなくなった私を探して、周囲をキョロキョロしている。


「いい加減お弁当を食べたいから落ちて頂戴」


 そのまま毒沼からオーガの足を掴み、引きずり落とす。何が起きたのかわからず、その場で暴れるオーガ。


 動けば動くほど、毒沼に埋もれていくのは早くなる。


 これが"毒沼の貴婦人"と呼ばれるようになった私の戦い方だ。今では"腐沼の貴腐人"だと裏では言われている。


 女性探索者にBLを流行らせたのは私の教育のおかげだ。


 探索者って一見男達が多いから、カップリングに向いていると思っても、基本は頭のおかしいやつしかいないため楽しくない。


 そんな中現れたのが、私の癒しであり推しのパパさんだ。


 彼にならいくらでも惜しみなくお金を使うことができる。


 彼のことを考えているとオーガは毒沼に埋もれた。


「はぁー、めんどくさいわね」


 ゆっくりと沼の中から這い上がると、指を鳴らして魔法を解除した。一瞬で毒沼は消えて、目の前にあるのはオーガのドロップ品のみだ。


 それを鞄の中に回収して、やっと休憩時間となる。


「魔力の消費が激しいから疲れるわ」


 私の魔法は威力が強い分、魔力の消費も激しい。そのため、隔日しか探索者として働けないという特徴がある。


 それを変えたのが愛しのパパさんが作る野菜だ。


 スマホをつけるが、今日は生配信をしていないようだ。朝からお弁当の準備で大変だったから仕方ない。


 私は早速お弁当の蓋を開ける。油で揚げたはずの天ぷらはまだサクサクの状態だった。


 私だけ特別に用意してくれた天ぷらに彼の愛情を感じる。ただ、お弁当に追加で天ぷらは私の胃の中に入るのだろうか。


 箸を使って天ぷらを一つ口元に持ってくる。


「見た目も揚げたてのままね」


 ゆっくりと一口食べる。サクサクと音が鳴るほど衣のサクサク感が食欲をそそる。


「あー、疲れが一瞬にして取れるわ。そこら辺の高級店に負けてないほど美味しい天ぷらね」


 期待していたが、それよりも格段に飛び越える美味しい天ぷらに、少食の私でも物足りないと感じた。


 そして、食べている合間にもどんどんと魔力は回復していくのがわかる。これならもう少しダンジョン探索ができるだろう。


 そして、それと同時に普段と違うことに気づいた。


 魔力の容量が増えているって?


 そんなのすぐわかるわ。


 私が感じたのはある探知能力よ。


「えっ? これってパパさんにカップリングができるってことかしら」


 私の才能は相性の良いカップリングを見つけることだ。その才能をビンビンに感じている気がする。


 急いで荷物を片付けて、私はパパさんの元へ戻ることにした。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

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