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41.配信者、視聴者の姿に驚く

 朝食を食べ終わると、テーブルや台を玄関前に運んでいく。


「貴婦人さんおはようございます」


「場所はここで合っているかしら?」


 すでに聖奈が連絡していたのか、家の前で貴婦人は待っていた。今日も綺麗な黒のワンピースを着ている。


 その姿でダンジョンに潜っても大丈夫なのかと心配になるが、ミツメウルフの甘噛みでも血が出ていた俺とは体の作りが違うのだろう。


「ここで大丈夫ですよ! お弁当箱ってありますか?」


「ええ」


 彼女が鞄から取り出したのは小さな子供用のお弁当箱だった。100万円ももらっているのに、さすがに量も少なくお金の貰いすぎだ。


「足りますか?」


「昔から少食なんですよね。もう50代だから――」


「うえっ!? 見た目からしてあまり年齢的に変わらないのかと思いました」


 本当に美魔女が目の前に存在していた。見た目も俺よりは少し上にしか見えない程度なのに、これで50代なら世の男性は尻尾を振って飛びつくだろう。


「ふふふ、これでも二児の母なのよ。二人とも若手探索者として活動しているから、いつか連れてくるわね」


 どうやら既婚者で大きな子どもがいるらしい。さすがにこんな美人が独身のはずはないな。


 それにしても今頃両親が生きていたら二人のことを知っているかもしれない。


 今度ゆっくり話す機会があれば聞いてみよう。


「これを運べばいいのね?」


「重いですよ?」


「パパさんのそういうところ素敵ね」


 さすがに重い物を女性に運ばせるわけにはいかないと思ったが、貴婦人は無理やり俺からテーブルを奪う。


 一瞬体が浮いた気がしたのは気のせいだろうか。


 やはり探索者とは体の構造からして違うのかもしれない。


 みんなで協力して食事を並べると、歩いている探索者は興味津々だ。だが、量もそこまで用意はしていないため、聖奈がわかる範囲内で探索者に声をかけていく。


 次々と探索者がお弁当箱を持参して集まって来た。ほとんどの人が種類が多いのか、どれを詰めるのか迷っているようだ。


「おっ、ここが畑の日記の家か」


「あっ、視聴者さんですか? いつもありがとうございます」


「おー、リアルパパさんは存在していたのか。俺は凡人だ」


「凡人……ですか?」


 そこにはスキンヘッドの厳つい男がいた。身長も2m近くあり、どこから見ても凡人には見えない。


 むしろ任侠映画に出てくる俳優って言っても通じるぐらいの見た目をしている。


 家の中にいる祖母が若干その姿に怯えているぐらいだ。


「こんちゃ!」


 ただ、隣にいるドリはいつもと変わらない。挨拶をすると厳つい男の顔もニヤリとしている。


 うん、もっとヤクザに見える。


 ドリは成長したら肝が据わっている女性になるだろう。


「拙者、ずっとここに来たかったでござる」


「ござる!」


 ドリがマネして挨拶をすると、凡人の隣にいた男も崩れ落ちた。


「これが尊死か」


 きっと二人とも視聴者の"名無しの凡人"と"孤高の侍"なんだろう。彼らも探索者として働いていた。


 それにしても俺の視聴者はリアルでも変わり者だった。


「どれにしましょうか?」


「拙者、おにぎりだけで――」


 侍が取り出したのは竹の皮だった。どこまでも時代の違いを感じる人だ。


 あれはただのキャラだと思っていたが、根から侍なんだろう。服装も袴を着ているため、タイムスリップした侍にしか見えない。


「メッ!」


 そんな侍にドリは怒っていた。


「やさいたべりゅ」


 どうやら栄養が偏っていると言いたいのだろう。ただ、その"メッ!"はあの時に封印したはずだ。


 お尻ペンペン事件から視聴者が変なことを教えないから心配になってしまう。


「ドリちゃん俺にも"メッ!"って言ってくれ」


「メッ!」


 ドリはその後もおにぎりだけを入れていく人に怒り続けた。いつのまにかドリの叱られ待ちの列ができるほどだ。


 この人達は一体何をしにきているのだろうか。


「ドリあんまり怒ったらダメだぞ?」


 俺が怒るのを止めるように言うと、ドリは寂しそうな顔をしていた。それを見た探索者は俺を睨んでくる。


 あいつら絶対ドリ狙いのファンだろう。


「おにおに……」


「おにぎりがどうした?」


「ドリのない」


「ああ、ドリの分は向こうに置いてあるぞ!」


 別にドリの分を残してあることを伝えると、ドリの笑顔は太陽に照らされたように輝いていた。


「ああ、女神様!」


「勝利の祝福を!」


 突然探索者達が祈り出したから俺も驚いて、どうすれば良いのかわからない。


 ドリは自分の分のおにぎりが無くなることを気にして怒っていただけだった。


 そんな中、小嶋養鶏場の方からお弁当箱を持った人が自転車に乗って走って来た。


 おじさんかと思ったが、配信をしていることは知らないためきっと違う人物だろう。


 ただ、自転車を止めて近づいてくるその姿はどこか見たことある風貌をしていた。


「よっ! 俺もお弁当箱持ってきたぞ!」


「おい、何でここにいるんだよ」


「なんでって? ここで店を開くために帰るってコメントしただろ」


 目の前には俺の幼馴染で、因縁の相手でもある小嶋養鶏場の息子がお弁当を持って立っていた。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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