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26.配信者、鉄壁の聖女に驚く

 車を走らせること一時間。本当にその倉庫にドリがいるのか気になってしまうが、ただただ車を運転する。


「どうやってドリの居場所がわかったんですか?」


 防犯カメラがない田舎では、情報を記録しておくものがないはずだ。そんな中、聖奈はなぜか空を指さしていた。


「視聴者に衛星カメラを所有している人がいるんです」


 衛星カメラとは宇宙にある地球を全方向から監視ができる、あのカメラのことを言っているのだろうか。


 そんな物を所有できる一般人が実際にいたとは驚きだ。


「私も詳しくは分かりませんが、さまざまなカップリングを楽しみたいと言っていました」


 カップリングって曲が発売される時に聞く言葉だ。それが何を指しているのか俺もわからない。


 ただ言えるのは、視聴者がたくさんいてよかったってことだけだ。


「そこを曲がったら倉庫に着きます」


 角を曲がるとそこには本当に古びた倉庫が目の前にあった。


 中は電気がついており、光が建物から溢れ出ている。きっと誰かがいるのだろう。


「少し待ってくださいね」


 聖奈が何かを起動すると、突然小さな鞄から鎧のようなものがたくさん出てきた。女性には珍しい重装備で、大きな盾を持っているのが印象的だ。


「田舎ですけどダンジョン外で装着しても大丈夫ですか?」


「はい! これは緊急事態なので! ドリちゃんにイタズラするやつは――」


「それは緊急事態以外にないですね!」


 どうやら聖奈とは気が合うようだ。ドリに何かする男がいたら、俺は鍬で殴りかかるだろう。


 これが可愛い娘がお嫁に行く時の感覚なんだろうか。


 俺達が倉庫に向かうと聖奈は扉を持つ。


 ええ、扉の取っ手を持つのではなく、物理的に扉ごと持っている。


 まさかそんな行動をするとは誰も思わないだろう。


「ふん!」


 扉をそのまま外して放り投げていた。


 大きな音が鳴り響き、男達は驚いてこっちを見ている。


「のび……のび……」


 その隣にはふらふらになりながらも、おまじないをしているドリがいた。体には痣や内出血ができている。


 探索者ギルドの職員の手には鞭が握られていた。


 沸々と怒りが湧き出てくる。ドリをあの鞭で叩いたのだろうか。


 考えれば考えるほど嫌なことしか出てこない。


「おい、ドリに――」


「てめぇら! 皆殺しだ!!」


 あの声はどこから聞こえたのだろうか。この場には目の前にいる男達と自分と聖奈しかいないはずだ。


 チラッと見ると、さっきまで隣にいた聖奈はすでにいなくなっていた。いや、聖奈という聖女みたいな女性は元からいなかったのだろう。


 目の間にいるのは"()"だ


 盾を突き出すように、鞭を持った男に突撃した。


 そのまま勢いよく男は飛んでいく。人間ってあんなに簡単に飛んでいくのが普通なんだろうか。


「次はお前か?」


「ヒィ!?」


 阿保は聖奈に睨みつけられて、その場で腰が抜けていた。


 探索者だから一般人には手を出さないようにしているのだろう。


 なぜ、あの男は飛ばされたのか。それは彼がギルドに所属しているからだ。


 探索者ギルドの職員は探索者としての才能があるのが職員になる条件だ。


 だから、あの男は攻撃されても問題はない。


 俺はその間にドリの元へ駆けつける。


「おい、ドリ大丈夫か?」


「パパ? パパ!」


 やっと俺達のことに気づいたのだろう。ボロボロになったドリは嬉しそうに、俺に頬をスリスリと擦り付けてくる。


「気づくのが遅くてごめんな」


 わずかに意識を保ちながら植物の成長を促していたのだろう。


 倉庫には成熟した野菜だけではなく、違法薬物である大麻やケシが植えられていた。


「おい、森田もこの女を止めてくれ! 俺の部下だろ」


 あいつは何を言っているのだろうか。


 もう会社を辞めたら部下でもなく、関係もない赤の他人だ。


「お前何を言ってるんだ?」


「はぁん!? 元奴隷(・・)のくせに――」


 鈍い音が倉庫の中に響く。俺は握った拳を阿保の顔面にお見舞いした。


 今まで人をおもいっきり殴ったことなんて一度もなかった。今まで溜めていた鬱憤が吐き出された。


「おい、無実な俺を殴ってタダで済むと思うなよ。お前達を暴行罪で訴えてやる!」


「証拠があるって言ったらどうする?」


「そんなのは嘘だ。やったのは俺じゃないあいつだ!」


 何か言い訳をしているが、二人が一緒にいたら阿保も犯人なのは確実だ。現に家に侵入しているのは知っている。


 その言葉を聞いて聖奈は自分のスマホを取り出した。


「家に不法侵入したところがバッチリ動画に残ってるんだよ!」


 聖奈の動画を見て阿保はその場でぐったりとしていた。ここまでちゃんと証拠が残っていたら、不法侵入として言い逃れはできないだろう。


「ドリお家に帰ろうか!」


「うん!」


 ドリと手を繋いで家に帰ることにした。


「あっ、ばあちゃんに連絡しないと――」


 スマホを取り出して、画面をつけるとあることに気づく。


「やばっ、配信したままだった」


 俺は充電器からそのままスマホを抜き取ると、ポケットに入れていた。画面は暗くても音だけでそのまま生配信が継続されていた。


 コメントもたくさんきている。


==================


名無しの凡人 5分前

バーサーカーの姫君が暴走しているな。

▶︎返信する


孤高の侍 4分前

拙者も駆けつけたかったでござる。

▶︎返信する


貴腐人様 最近

私の衛星カメラが役に立ったようね。これでいつでもパパさんのカップリングを見られるわ。

▶︎返信する


パパを見守る人 最近

パパさん後ろ!

▶︎返信する


畑の日記大好きさん 最近

今すぐ逃げて!

▶︎返信する


==================


「無事にどうにか……えっ、後ろ?」


 振り返った時には何か犬のような動物が俺に向かって飛びかかってくきた。


 首には探索者ギルドで販売されていた首輪がキラリと光っていた。

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