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25.配信者、戸惑う

――ピンポーン!


 誰かがインターホンを鳴らしている。


――ピポピポピポピポピポピンポーン!


 何度インターホンを鳴らしているのだろうか。こんな朝から近所迷惑だ。


 寝ている体を起こして玄関に向かう。昨日は居間で寝ていたようだ。


「朝からうるさ――」


「直樹さん失礼します!」


 扉を開けた先にいたのは探索者ギルドの職員と昨日野菜を二番目に買ってくれた女性だ。


「へっ? 朝からどうされたんですか?」


 女性達は家の中に入り周囲を見渡している。


「本当に配信中に寝ていたんですね」


 ギルドの職員は居間の汚れた状況を見て、少し思い詰めた顔をしていた。そんなに家の中が汚かったのだろうか。


「ドリちゃんはいますか?」


「ドリですか?」


「確か二階に寝ている――」


 もう一人の女性が勢いよく二階に上がって行く。動きが速すぎて目で追うこともできなかった。


「こんな時間からどうした――」


「直樹さん落ち着いて聞いてください。ドリちゃんが誘拐されました」


 俺はまだ寝ているのだろうか。ドリは今二階で寝ているはずだ。


 俺も二階に上がると、さっきの女性は部屋の扉を全て開けて中を確認していた。


「直樹これはどういうことだ?」


 祖父母も起きて、突然知らない人が家に入ってきて困惑している。俺だってまだ寝ぼけているのか、頭が全然働いていない。


「ドリが誘拐されたって。そんなはずは――」


 部屋を見るがドリはいなかった。いつも俺の隣に布団を敷いて寝ているが、もぬけの殻になっている。


 俺はドリの名前を叫ぶが何も反応がない。トイレや風呂場、倉庫を確認するがドリはどこにもいない。


 昨日話していたことが、本当に起きるとは思わなかった。


「やはり誘拐されたのね」


 女性は何かを知っているのだろう。早くドリを助けないと、何をされるかわからない。


 俺がドリと一緒に配信したのが、今回誘拐されるきっかけになったのだろう。


「この前のあいつらが誘拐したのか?」


 祖父は元職場の上司と探索者ギルドと名乗った人のことを言っているのだろう。


「それってこの人達ですか?」


 女性に見せられた画像はこの間来た人達だった。しかも、一緒に見せられた動画は俺の背後でコソコソと動く奴らだった。


「きっと布団に包まれて誘拐されたのだと思います。幸い直樹さんが動画配信を切り忘れたことで、犯行が全て記録として残っているので、言い逃れはできないと思います」


 動画が残っていても、ドリが安全なのかもわからない。見た目も可愛い幼女だから、そういう趣味の人もいるだろう。


 考えれば考えるほど正気が保てなくなる。


「パパさん落ち着いてください!」


 あたふたとしている俺の肩を掴み、女性は落ち着くように声をかけてきた。


「パパさん?」


「あっ、すみません。自己紹介が遅れました。動画配信視聴者の鉄壁の聖女こと"天守(あまもり)聖奈(せな)"です」


 どうやら聖奈は時折メッセージをくれた視聴者らしい。初めてコメントをしてくれた人ってこともあり、俺の中でも記憶に残っている。


「彼女はSランクの探索者です」


「Sランク!?」


 探索者のことを知らなくても、Sランクと言えば日本に数人しかいない人だ。


 ランクはSSまであるが、今存在している人はSランクが最高だった気がする。


 それだけ有名な人だから、一瞬でドリがドリアードだとわかったのだろう。


「パパさん、大丈夫ですよ! みんながもう居場所を突き止めてますからね」


 見せてもらったスマホにはたくさんの情報が書かれていた。誘拐した二人がどこを通ったのか、現在どこにいるのかも全て丸わかりだ。


 どうやってここまで情報を手に入れたかわからないが、今は彼女達に頼るしかないだろう。


「ドリはそこの倉庫に居るんですね!」


 俺は鍬を持って車に乗ると、エンジンをすぐにつける。そのタイミングで、車の扉が開いた。


「私も行かないと道案内できないですよね」


 ちゃっかり聖奈も車に乗ってきた。どうやら断っても一緒に来そうな雰囲気だ。


 探索者ギルドの職員に祖父母を任せて、俺はドリアードが連れられたところに向かった。

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