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16.配信者、ギルドのルールを知る ※一部第三者視点

 家族会議の結果、探索者ギルドに電話をかけることにした。


「はい、こちらイーナカ探索者ギルドです」


「あのー、この間野菜を持って行った森田直樹です」


「ああ、直樹さんお久しぶりです」


 電話の声はいつも対応してくれる受付嬢の人だ。彼女ならあの卸売業者の人について聞きやすい。


「この間の野菜ありがとうございました! あんなにみずみずしいトマトを初めて食べました。レタスもずっとシャキシャキしてて毎日食べたいぐらいです」


 どうやらギルド内でも野菜についての評価は高いようだ。そんな探索者ギルドがあんなに横暴なことをするのだろうか。


「あのー、さっき卸売業者の方が来て野菜を売って欲しいと頼まれたんです。理由があってお断りをしたんですが、探索者ギルドの依頼を断ることは非国民だと言われまして」


「大変申し訳ありません。探索者ギルドの一部が森田様にご迷惑をおかけしたんですね。もう一度訪れた卸売業者の会社もしくはその方の名前を伺ってもよろしいですか?」


 そういえば、どこの卸売業者なのかも名乗っていなかった。


「あー、あまりにもイライラして聞くのを忘れました」


「ふふふ、それは仕方ないですね。ただ、一つ気になることをお伝えしてもいいですか?」


「はい」


「探索者ギルドは危機的な状況でしか企業様を通して依頼を頼んではいけないと言われています」


「それはどういうことですか?」


「例えばですが、ダンジョンから魔物が溢れ出た時に避難勧告をするとか、支援物資が欲しい時がその例に該当しますね」


 この話が事実なら昨日来た卸売業者は嘘をついていたことになる。


 じゃあ、何のためにあの野菜を無理してまで手に入れようとしたのだろうか。


「ひょっとしたら勝手に探索者ギルドの名前を使う不届き者かもしれないので、私達ギルドの名前が出てきた際は全てお断りしてもらっても構いません」


「わかりました」


 それだけ直接聞くことができれば気は楽だ。ギルドの名前を使って悪いことをするやつがいるとは思いもしなかった。


「あと、何か危険なことがあればすぐにご連絡ください。ギルド所属の探索者がすぐに駆けつけます」


「ははは、流石にすぐに駆けつけることはできないですよ。ギルドから一時間以上はかかりますよ」


「えっ? 直輝さんってそんな遠くに住んでるんですね。なんだー、中々会えないじゃん」


 電話越しに聞こえる彼女の声で、今どんな様子なのか想像できそうだ。きっと野菜が食べたくて、また来て欲しいと思っているのだろう。


「あっ、やばい! 上司が来たのでまた何かあったらご連絡お待ちしております」


 そう言って彼女は電話を切った。どこか慌ただしい人で笑ってしまう。


「パパ?」


「あっ、準備できたんだね」


「うん!」


 今日はいつもと違って、ドリはオーバーオールではなくてシャツとスカートを履いている。


「初めての売り子頑張ろうか!」


「うん!」


 俺達はドリが作った花を直売所で売ることにしたのだ。野菜は流石に売れないため、花で模擬練習のようなものだ。


 祖母もいるため、すぐその場で花束も用意することができる。


 初めての経験で俺とドリもドキドキしていた。


 たくさんの花を車に詰めて、直売所に向かう。





 ある会社の事務所で男は上司と何やら話していた。


「おい、どうだった?」


「聞いてくださいよ。めちゃくちゃ頑固なお爺ちゃんと馬鹿っぽい孫が出てきて、話も聞かずに突っぱねてきたんですよ」


「ほぉ、それは探索者ギルドの名前を出したのにか?」


「そうなんですよね。探索者ギルドって名前を出せば絶対に契約できると思ったんですけどね。この間買ったハイブランドの靴に泥もついて最悪です」


 男達は探索者ギルドから頼まれたと名前を出して野菜を手に入れるつもりだった。


 それなのに生産者の怒りに触れてしまったようだ。


「ははは、お前はまだまだ勉強不足だってことだな」


「それなら次は阿保部長(・・)が行ってくださいよー! 絶対俺の顔覚えられていますよ」


「本当に部下の尻拭いは私の仕事だな」


 男はニヤニヤと笑っている。それだけ尻拭いが得意分野なんだろう。

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