コラボ作品SS 地下には畑がある
「わしはポテトと散歩に行ってくるぞ!」
「一人で大丈夫ですか?」
「ポテトもいるぞ?」
『ウン!』
昼食を終えた後、祖父とポテトが散歩に行くと言っていた。
どこに行っても相変わらず一緒にいる。
そんな祖父を店主の幸治さんが心配そうに見ていた。
「いつも一緒に散歩しているから大丈夫ですよ。じいちゃんの散歩みたいなものですし」
ポテトは腕を組み、大きく頷いている。
ポテトの散歩というより、祖父のための散歩だからな。
それでも幸治さんは心配そうにしていた。
きっと優しい人なんだろうな。
「俺とケトも付いていきます」
『にゃ! あちゃ!?』
ゆったりとお茶を飲んでいる猫のケトは驚き、お茶をこぼしていた。
今時の猫は椅子に座って、お茶を飲む子もいるようだ。
我が家の犬も同じように椅子に座って、足を組んでおじさんのようにお茶を啜っているからな。
急いで幸治さんはケトをタオルで拭くと、何かぶつぶつと話している声が聞こえてきた。
「呪うよ? 本当に呪うよ? わかってる? オイラ呪えちゃうよ?」
あまりにも不吉な言葉に俺もお茶を吹き出しそうになった。
今の猫は流暢な言葉を話すようだ。
そういえば、我が家のポテトも――。
『ナニ?』
ジーッと見つめてたら、たまに話しかけてくるからな。
本人……いや、本犬も気づいてないくらい普通に話しかけてくる。
「ポテト、今話した?」
『ハァ!?』
俺がこうやって突くと、逃げるかのように玄関に向かって走っていく。
その姿はまるで何かのキャラクターみたいだな。
「じゃあ、お祖父さん行きましょうか!」
「ああ、そうだな」
ポテトを追うように祖父と幸治さんたちは散歩に向かった。
そういえば、祖父とポテトの散歩ってかなりハードだけど大丈夫なんだろうか。
俺が行っても置いてかれるほどだけどな……。
「一度材料を取りに帰りますね。チーズと牛乳、卵はすぐに持ってきます」
そう言って、牛島さんも一度家に戻って行った。
民泊にくる途中で見かけた農場で働いているらしい。
家に残された俺、ドリ、祖母。
そしてシルちゃんは家の中でボーッとしていた。
「シルちゃん、冷蔵庫の中を確認してもいいかしら?」
「いいよ!」
普段からテキパキしている祖母は、旅先でもボーッとするのは苦手なようだ。
この後の夕食で何が作れるのか考えるらしい。
「あら……思ったよりも材料がないわね」
「食べられるものはありそう?」
少し心配になり俺も冷蔵庫を覗く。
冷蔵庫の中には調味料はたくさんあったが、材料はそこまでなさそうだ。
お肉は真空パックになっており、マジックでうさぎと書いてあった。
「買い物に行くにはどれくらいかかるかしら?」
「くるまで……いちじかん?」
「んー、もっとかかったような気もしたけどね」
迷子になりながらここまで来たが、一時間以上かかったような気がする。
小麦粉などの粉類は置いてあるから、それを使えば料理の幅は広がるが、いつも何を食べているのだろうか。
「普段は何を食べているの?」
「んーっと……かっぷらーめん!」
シルちゃんはポケットからカップラーメンを取り出した。
一体その小さなポケットにどうやってカップラーメンを入れていたのだろうか。
俺がジーッと見ていたら、シルちゃんはすぐにポケットに戻した。
「あげないよ?」
「ごめんごめん」
どうやら取られたと思ったらしい。
「カップラーメンも美味しいわよね」
「おいちいよね!」
「俺はカップうどんがすきだな」
我が家でもたまにカップラーメンを食べる。
ただ、栄養の面が気になるからな。
牛島さんが日頃から料理を作りに来ていると言っていたが、牛島さんがいないと幸治さんたちはカップラーメンしか作れないのかもしれない。
どこか心配になる家族だな……。
「他には栄養があるもの……野菜とかは?」
「やさいこっち!」
そう言って、シルちゃんは近くにある床を指さしていた。
「にゃにがありゅの?」
「はたけ!」
畑と聞いてドリは嬉しそうな顔をしていた。
さすがに地下に畑があるはずがない。
シルちゃんは必死に床に付いている床下収納の扉を開けようとしていた。
「ちょっと、どいてね」
そう言って、俺が扉を開けると地下に降りる階段が出てきた。
「勝手に行くのはさすがに失礼だよね?」
「べつにいいよ? ドリちゃんいこ!」
「うん!」
シルちゃんはドリの手を引っ張って地下に降りていく。
「ばあちゃん、牛島さんが戻ってきたら地下にいるって伝えてもらってもいいかな? 扉が閉まるのも怖いし」
「ええ、わかったわ」
みんなで中に入って、閉じ込められたりしたら大変だからね。
祖母に待ってもらうように伝えて、階段を降りていく。
冷たい風が全身を撫でる。
どこか初めて畑近くにできたダンジョンを見た時と同じような感覚がする。
「わあああああ!」
奥の方でドリの驚いている声が聞こえてきた。
俺は急いで駆け寄ると、目の前の光景に驚いた。
「本当に畑がある……」
「パパ、しゅごいよ!」
家の地下に体育館ほどの広さの畑があった。
それもどこか人工的に作られたような構造で、野菜も様々な種類が植えられている。
「パパ!」
ドリに引っ張られると、そこにはトマトが植えられていた。
我が家で作られているトマトとどこか似ており、まるでドリが作ったと言ってもおかしくない。
「まりょくあるね」
「そうなのか?」
「うん!」
ドリもトマトを見て魔力があると言っていた。
俺にはわからないがきっとこの家の畑はダンジョンとかに繋がっているのかもしれない。
「シルちゃん、ここはダンジョンなの?」
「ダンジョン? ううん、はたけ!」
「そっかー。さすがにダンジョンが家にあるわけないよね」
聖奈にも聞いてみたことあるが、基本的にダンジョンは有名な観光地や自然があるところにしかできない。
我が家の畑近くにできたことが初めてだったから、尚更家の地下にできることはないよね……?
――ゴソゴソ!
「えっ……?」
何か物音が聞こえて視線を畑に戻すと、目の前でキラリと光る何かが見えた。
「あぶない!」
「パパッ!」
シルちゃんとドリの声と同時に目の前に鋭く尖った何かが近づいてくる。
俺は咄嗟に避けると、そのまま二人に引っ張られた。
いや、引っ張られるというよりは確実に投げられた気がする。
「痛ったたたた……」
ここが畑でまだ良かったのだろう。
転がるように受け身を取ったから、ケガはなさそうだ。
「二人と力が強いな……」
ドリが力強いのは知っていたが、シルちゃんもかなり力があるようだ。
ただ、二人とも何かに興味を示していた。
「あれにゃに?」
「うさぎ! おいしいやつ!」
そこには額に角が生えたうさぎがいた。
まるで俺を狙っているのか、足をジタバタと鳴らしてこっちに向かってこようとしている。
ただ、それを許す二人ではない。
「いきゅよー!」
「まてー!」
ドリとシルちゃんはうさぎに果敢に攻めて……いや、すでに捕まえていた。
そのままシルちゃんはうさぎを絞めると、ポケットからナイフを――。
「ナイフ!?」
「ちぬきをしないとかたくなるからね」
笑顔でうさぎの血抜きをするシルちゃんに驚いた。
容赦なく血抜きをする姿に尊敬するぐらいだ。
確かに食べるなら早く血抜きをしないといけないが、明らかに動きが手慣れている。
「ドリもやる!」
「いいよ!」
ドリも好奇心旺盛だからか、シルちゃんと一緒に血抜き作業をしていた。
最近の子どもたちは元気が有り余りすぎて、俺には付いていけそうにないな。
あぁ……今頃、幸治さんたちは大丈夫だろうか……。
俺はしばらく畑に座ってボーッと子どもたちを見守っていた。
「あぁ……だめだ、気持ち悪っ……」
発売前に書く予定だったSSを今頃書いてます。
風邪を引いて遅くなりました笑
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