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COMIC発売前SS 幼女お肉克服大作戦③

「みんなー! ご飯できたよー!」


 俺がご飯ができたことを伝えると、ドリや聖奈、祖父がやってきた。

 すぐに箸やコップ、ご飯を運んで座布団の上に座る。


「むー、きゃらあげ!」


 ドリは唐揚げを見て、俺の方にお皿を押してくる。

 やはり鶏の唐揚げが入っていることがバレたのだろうか。


「これは大豆の唐揚げだよ。私が用意したけど嫌だったかな……?」


 どこか聖奈は悲しそうな顔をしていた。


「別に聖奈さんのせいじゃないですからね」


 せっかく飛行機まで用意して買いに行ったから、食べる前から拒否られたら俺でも辛いからな。


「ほら、手を合わせて食べるわよ」


 祖母に言われて、俺達は手を合わせる。


「「「いただきます!」」」


 俺は早速、大豆ミートで作った唐揚げを一つ箸で持ち上げる。

 箸で掴んだ感触も鶏の唐揚げと変わらない。

 見た目や匂いもほとんど同じだ。


「うん、大豆ミートでもうまいな」


 口に入れると、本当に鶏の唐揚げを食べているみたいだ。

 いや、これは普通の唐揚げなのかもしれない。

 混ぜて作ってあるため、さらに混乱するがお肉の苦手意識は薄れるような気がした。


「ドリも食べてみな」


 俺はドリのお皿に唐揚げを一つ置く。

 少し警戒しながらも、ドリはフォークを唐揚げに刺すと、ゆっくり口に入れた。

 その姿を俺達はジーッと眺める。


「……んっ? おいちい?」


 ドリは首を傾げていた。

 見た目が肉に見えて嫌なだけで、味は肉に近づけた大豆だからね。

 少し混乱はしていそうだが、俺がお皿に乗せていくと次々と唐揚げを口に入れていく。


「今、食べましたよ!」

「さっきから食べてますよ?」


 聖奈はずっとドリが食べるところを眺めていた。

 その姿を目に焼き付けようと、瞼をこれでもかと開け、顎をほんのり前に突き出して食い入るように視線を注いでいた。

 瞬きをしないせいで目が乾き始めても構わない、そんな覚悟すら感じる。

 目が痛くならないのも、Sランク探索者としての修業の賜物なんだろう。


「ドリちゃんが今お肉を食べましたよ!」

「……しょうなの?」


 ドリも気づいていないのか、今も口をモグモグとしている。


「ドリ、えらいな!」


 そんなドリの頭を優しく撫でる。

 これが苦手なお肉を食べられるようになる第一歩になるだろう。


「もっとたべりゅ!」


 よほど嬉しいのかドリは聖奈にお皿を渡していた。


「はぁ……はぁ……推しが……」


 ドリに頼まれた聖奈は息を荒げていた。


「大丈夫ですか?」

「ゴホン!」


 あまりにも息が荒くなっていたので声をかけると、俺達の視線に気づいたのか咳払いをして元に戻った。

 時折おかしくなるのはSランク探索者の特徴なんだろうか。

 前に探索者ギルドであった貴婦人って方も、俺を見て息を荒げていたからね。

 普段から一般人の俺達にはわからないことを経験しているから、少し変わり者が多いのだろう。


「こっちが大豆でこっちがお肉だけど大丈夫かな?」


 俺には全て同じに見えるが、聖奈はお皿に分けて唐揚げを置いた。

 今度はあえて分けたのだろう。

 聖奈の口元が、何かを企んでいる時の笑みに見えたが……まぁ気のせいか。


「やっぱり無理そうか?」


 聖奈の言葉にドリは戸惑っているのか、中々お肉の方の唐揚げを口に入れないでいた。

 やっぱりお肉とわかると食べにくいのだろう。

 だが、聖奈は嬉しそうにしていた。


「ドリちゃん、騙してごめんね。実はどっちもお肉の唐揚げなんだ……」

「「へっ……?」」


 つい俺も一緒に声を出してしまった。

 俺もドリと一緒になって騙されていた。


「きっと苦手意識が先に来ちゃうと思って試してみたんだけど――」


 さすがSランク探索者は色々なことを考えているのだろう。

 自然と己を成長させるように意識しているのが伝わってくる。


「ネーネ、ひどい!」


 ドリは聖奈をドスドスと叩く。

 普通なら「痛っ」と声が出るはずなのに、聖奈は口角を上げて目を細め、むしろ「もっと」と言い出しそうな顔をしていた。


「やっぱり探索者はすごいね」


 ただ、あまり人を叩いた時に出る音じゃないけど、聖奈は大丈……問題ないようだ。

 抵抗することなく、今も手を大きく広げているからな。

 見たこともない笑顔で天に召されそうな勢いだ。


「でもこれでお肉も食べられるね」

「うん! おきゃわり!」


 ドリは再び俺にお皿を渡してきた。

 どこか聖奈にジーッと見られているが、きっと気のせいだろう。

 さすがにドリのお皿に唐揚げを置くだけのことで嫉妬はしていないよな?


 ドリがお肉を食べられるようになったら、これからももっと成長する。

 たくさん食べるから、将来は俺の身長を超えるぐらい成長するのかな。

 今も隣でモグモグと食べているドリを見て、将来が楽しみになってきた。

 ただ、食事が終わるまで聖奈の目は、唐揚げを置く俺の手元に吸い寄せられたままだった。

みなさんお盆を楽しんでいますか?

今日の8/15にコミック1巻が発売しました!

いぇーい! 初のコミカライズです!

書店に自分のペンネームが書かれている漫画が置いてあるって違和感がしますね。

ぜひ、お盆の癒しにもなる作品になっておりますので、手に取っていただけると嬉しいです!

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