COMIC発売前SS 幼女お肉克服大作戦②
翌日、聖奈は大量の荷物とともに帰ってきた。
ダンボールの中には様々なタイプの大豆ミートがたくさん入っていた。
「全国各地の良質な大豆ミートを買って……はっ!? 私としたことが、畑をやっているパパさんたちに不誠実なことを……今すぐダンジョンに行って魔物にやられてきます!」
相変わらず聖奈はどこかおかしい。
急いで俺は手を引いて止める。
「聖奈さん、ありがとうございます。うちでは大豆を作ってないので助かってますよ!」
さすがに調査に来ているSランク探索者をこんな理由で危ない目に遭わすわけにはいかない。
それに聖奈はドリのことになると、本当に何も持たずにダンジョンの中に入っていきそうだ。
「あらあら、これだけあればたくさん作れるわね」
本当は大豆ミートで作った唐揚げだけを作るつもりだった。
「ダンボールが二箱もあるからね……」
ダンボールから一つ取り出すと、袋には3~4人前と書かれていた。
それがダンボールの中に20袋ぐらい入っている。
あまりの多さにしばらくは大豆をミート生活が続きそうだ。
「さっそく作ってみるか」
「それもそうね!」
俺は祖母と一緒に大豆ミートを使った唐揚げを作ることにした。
その間、聖奈にはドリと一緒に遊んでもらう。
俺だと足も遅いし、力も弱いから、聖奈の方が体を動かす遊びにはちょうど良い。
「えーっと……まずは水にふやかせばいいんだね」
ボウルに大豆ミートを一袋半入れて、水をかけてふやかしていく。
「初めて使うけど、どこまで膨らむのかしらね?」
小さな袋で3~4人前が作れるってなると、かなりの大きさに膨らむのだろう。
少しドキドキしながら、その他のおかずも一緒に作っていく。
「大豆ミートの唐揚げの中に鶏の唐揚げが混ざっていた方が克服できるかな?」
「下の方にいくつか混ぜていたらバレないと思うわ」
大豆ミートの唐揚げに慣れてから、鶏の唐揚げを食べさせるつもりだったが、どれか見分けがつかない方が食べやすいかもしれない。
そう思った俺は小さく鶏のもも肉を切っていく。
祖母の話では俺も昔食べられなかった野菜とかは、細かく刻んだり、好物も混ぜたことがあったらしい。
俺の記憶に残っていないってことは、それだけ自然に混ぜれば気づかないってことだろう。
もも肉を切り終えると、水にふやかしていた大豆ミートを軽く手で潰して、水気を絞る。
「やっぱり多かったわね」
「ドリと聖奈さんがたくさん食べるよ」
二人とも結構食いしん坊だからね。
「パパ、よんだ?」
居間で遊んでいたドリが急に顔を出してきた。
「ああ、こんなにたくさんお豆さんができたからさ。ドリと聖奈さんにたくさん食べてもらおうと思ってね」
俺は急いで切ってあるもも肉を大豆ミートが入ってるボウルの中に隠す。
ドリは初めて見た大豆ミートをジーッと見つめる。
「おみゃめさん?」
「ああ、見た目は丸くないけど、これもお豆さんだよ」
「しょうなんだね!」
ドリは特に疑うこともなく、聖奈の元へ戻っていく。
苦手なものを食べさせるだけで、こんなにヒヤヒヤするとは思いもしなかった。
「ふふふ、昔の直樹にそっくりね」
そんな俺とドリを見て祖母は笑っていた。
きっと昔の俺もドリみたいに、苦手なものを入れないように監視していたのだろう。
ボウルの中に、醤油、酒、みりん、おろし生姜とほんの少しだけおろしニンニクを加えて混ぜる。
すでに俺から見ても、パッと見てどれが大豆ミートか鶏のもも肉なのかもわかりにくい。
しばらく放置して下味をつけたら、片栗粉をまぶして油の中に入れていく。
「本当に鶏の唐揚げと変わらないね」
油の中でパチパチと弾ける姿も浮かび上がってくる姿も、ほぼ鶏の唐揚げと変わりはない。
あとは味の変化だが、揚げたばかりの大豆ミートの唐揚げを食べてみる。
「んっ……これはどっちなんだ?」
「さすがにそれくらい……世の中便利になったわね」
祖母が食べてもわからないなら、ドリが食べても気にはならないのだろう。
あとは大豆ミートと鶏の唐揚げを食べてもらうだけだ。
だって――。
「どれが鶏の唐揚げかわからなくなったら、食べられるようになったかわからないね……」
揚げ終わった大豆ミートと鶏の唐揚げは見た目が同じだった。
前に投稿したと思ったのに、投稿されてなかったよおおおおお!
ってことで本日コミック第一巻発売しています!