COMIC発売前SS 幼女お肉克服大作戦
コミック1巻 8/15発売
その内容に対応したSSになっております!
俺は居間にあるテーブルに肘をついて、深刻そうな顔で話を始めた。
「では会議を始める」
今回、会議に集まったのは俺と祖母、そして一緒に住み始めた聖奈だ。
認知症の祖父に夜更かしさせるわけにはいかないため、昼にドリとたくさん遊ばせて早くに寝かしつけた。
「ドリが成長しないんだ!」
俺は祖母と聖奈に訴えかける。
「子どもはそんなものよ?」
「ドリちゃんは魔物ですからね?」
たが、反応はあっけらかんとしていた。
祖母と聖奈は呑気なことを言っているが、子どもがあれだけたくさん食べて、遊んでいるのに全く大きくならないってことはないと思う。
毎月柱に線を書いて身長を測っているが、全く身長が伸びていない。
「原因は肉を嫌っているからだと思う」
子どもの成長にはたんぱく質が必要となる。
豆製品と少しばかりの魚だけでは無理があるからな。
「直樹がまともなことを言っているわ……」
祖母は俺と祖父を間違えているのだろうか。
俺はいつもまともなことしか言っていないからな。
そんな中、申し訳なさそうに聖奈は手を挙げた。
「あのー、ドリアードはそもそも光合成で栄養補給してるので、野菜も食べないですよ?」
俺と祖母は驚いて聖奈の顔を見る。
言いたいことはきっと同じだろう。
野菜も食べないって、そんなことあるはずがない。
ドリは家に来たその夜にはモリモリと肉じゃがを頬張っていた。
いや……肉じゃがのじゃがいもだけ食べていたな。
「それならドリはドリアードではないってことですか?」
「ドリちゃんは……天使です! 私を樹海に引きずり込むような力は天使しかありませんわ! ああ、本当にドリちゃんは可愛いですよ。この第一回目の配信でひっそり映ってるドリちゃんが――」
聖奈はスマホに映る「畑の日記ちゃんねる」を見て、鼻息を荒くしていた。
「「……」」
そんな姿を見て、俺と祖母は何も言えなかった。
むしろドリ好きの聖奈に聞いた俺が間違いだった。
推しがいるとここまで変わり者になってしまうのだろうか。
それに樹海に引きずり込まれたら、もう戻って来られない。
「ばあちゃん、ドリに肉を食べさせるにはどうすればいいと思う」
「小さなお肉でも気づいちゃうからね……」
思い返すと肉じゃがの肉だけ俺のお皿に載せていたり、この間はピーマンの肉詰めの肉を取り除いて、ただのピーマンとして食べていた。
野菜の割合を増やしたとしても、ドリの肉嫌いはどうしようもなかったのが現状だ。
「魚は食べられるのに、肉がダメなのは血の匂いとかかしら?」
「それなら魚の生臭さも苦手になりそうだけどね……」
ドリは魚も好きではないが、普通に食べられる。
むしろしらすと高菜のおにぎりとかは大好物だ。
そう考えると匂いがダメなんだろうか。
「それなら大豆ミートはどうですか?」
妄想の樹海から帰ってきた聖奈はスマホの画面を俺達に見せる。
そこには「お肉が苦手な子どもでも美味しい!」「植物性だから臭くない!」「お肉みたいなのにお肉じゃない!」と書いてあった。
「これならドリでも食べられるかな?」
「大豆ミートっていうぐらいだから、大豆ってことで良いのよね?」
田舎者の俺と祖母には大豆ミートってそこまで馴染みがあるわけではない。
「ここには油を絞った後の大豆を使ってあると書いてありますよ」
大豆ミートは脱脂大豆を肉っぽい食感に仕上げた商品らしい。
口コミレビューにも、お肉が食べられない子どもでも食べられたと書いてあった。
これならどうにか肉嫌いなドリでも食べられるような気がした。
だが、こんな田舎に大豆ミートなんて売っているのだろうか。
「そもそも入手するのが――」
「ここは私に任せてください! ドリちゃんのためなら、航空便の手配……いや、私が今すぐに買ってきます!」
聖奈はその場ですぐに電話をかけ始めた。
さすがSランクの探索者は行動も早い。
あとは何を作るかが問題だ。
「しっかり味付けするなら、唐揚げとかが食べやすいかな?」
「このブロックタイプが良さそうね」
ブロック状になった大豆ミートだと、外はカラッとして、中はふわふわで食べやすいらしい。
それに見た目が唐揚げやナゲットに近ければ、少しずつ慣れていくかもしれない。
「今すぐに行ってきますわ!」
「「えっ……!?」」
気づいた時には聖奈は荷物をまとめて、ベランダから走ってどこかに行ってしまった。
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8/15までの発売まで、もう少しお待ちください!