番外編.クリスマスプレゼント
「パパー!」
「んー、なーにー」
ドリが何度も体を揺さぶってくる。
さっき寝たばかりなのに、もう朝になったのだろうか。
「おきりゅのー!」
次第に揺れは大きくなり、家が揺れている気がする。
「地震!?」
「ちがうよ?」
すぐに飛び起きると、ドリがベッドを持ち上げていた。
一度起きないからといって、俺を投げ捨てるなと注意したから、ベッドを投げ捨てようと思ったのだろう。
地震だと勘違いしていたのは、俺がベッドごと宙に浮いていたからだ。
「ドリ、まずはゆっくり下ろすんだぞ。まだ夜中だからみんな起こすといけないからな」
「シィー!」
ドリは手を放して、口元に指当てて笑っている。
静かにしているというアピールなんだろう。
「おーい、手を放したらあぶないよ!」
「うわわわわわわわ!」
大きな音とともに俺はベッドから落とされる。
急いでベッドを掴んだから、ベッドが落ちることはなかったが、俺は転がっていく。
『クゥェ!?』
そのまま転がり、近くで寝ていたカラアゲにぶつかった。
こんなに騒いでいても起きないカラアゲは随分神経が図太いのだろう。
「いててて……」
気づいた時には目が覚めてしまった。
ドリの思惑通りになったのか、嬉しそうに笑っていた。
「そんなに嬉しそうにどうしたんだ?」
「ぷれじぇんと!」
ドリは片隅に置いてある綺麗に包まれたプレゼントを持ってきた。
そういえば、さっきまでサンタが来ていたんだっけ?
中々ドリが放してくれずに、用意するのが……あっ、いやサンタも大変だったと聞いている。
「サンタとトナカイが来てくれたのか?」
「うん! ぽてちないないしてた!」
サンタとトナカイのために、ポテトチップスを置いていた。
それがなくなって……いや、俺は食べた記憶がないぞ?
ドリの言葉が気になり、急いで一階に降りるとボリボリとポテトチップスを食べる音が聞こえてくる。
――カチャ!
「誰か起きてるのか?」
『ハァ!?』
電気をつけるとポテトがコソコソとポテトチップスを食べていた。
準備をしている時から狙っているのはわかっていたが、本当に食べていたとは思わなかった。
「パパー?」
ドリが降りてくる前にポテトを隠す。
「ドリにバレる前に部屋に帰るんだ」
『ウン!』
ポテトはポテトチップスが入った皿を手に持って、コソコソと隠れていく。
素早いポテトならドリに見つかることもないのだろう。
「本当にサンタとトナカイが来たんだな」
「うん!」
「毎日いい子にしてたもんな」
ドリはしばらく俺や祖母のお手伝いをして、元気に過ごしていた。
あれがドリなりに良い子にしていたということだろう。
「じゃあ、プレゼントを開けようか」
「わくわくしゅるね」
俺はドリの手を握って部屋に戻っていく。
チラッと居間を見てみたが、ポテトはまだ隠れてポテトチップスを食べていた。
「パパいきゅよ」
「うん」
ドリは綺麗に包み紙を外していく。
ドリの性格ならビリビリに破くと思ったが、それだけクリスマスプレゼントを大事にしているのだろう。
「みてみて!」
嬉しそうにマフラーと手袋を取り出した。
ドリがサンタにお願いしていたのはマフラーと手袋だった。
だが、ドリの顔は段々と曇り始めていた。
「ちぎゃう……」
「えっ? マフラーと手袋が欲しかったんじゃないか?」
ドリは目をウルウルさせて俺を見つめてくる。
「うん……。パパのがほちかったの」
えっ?
俺は……いや、サンタはてっきりドリのマフラーと手袋が欲しいと思っていたはずだ。
「ドリは俺のマフラーと手袋が欲しかったのか?」
「うん?」
ドリの優しさについつい目がウルウルしてしまう。
まさか俺が泣かされるとは思わなかった。
俺はドリを抱きかかえ、マフラーを一緒巻く。
「これで一緒に使えるね」
「ねぇ! いっちょ!」
どうやら今年のクリスマスはうまくいかなくても、ドリの優しさに改めて気づく年だった。
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♢タイトル
薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう
♢URL
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ほのぼのした作品になってます!