表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/163

152.配信者、屋外パーティーの準備をする

「パパ!」


「起きないとキスするよ? きてきて!」


 誰かが俺の体を揺らしている。


 ここ最近涼しくなって、朝早く起きるのもしんどくなってきた。


 いや、起きるのが苦手なのは季節関係ないか。


「くくく」


 なぜか笑い声が聞こえてくる。


 ドリと百合が近くにいるのはわかるが、影が二人よりも大きい気がする。


「俺の熱いキスで直樹も目覚め――」


 目を開けると目の前には春樹の顔があった。


「やめてくれ。もう起きたわ」


 近づく春樹の顔を押し返す。


 ここ最近春樹が起こしに来ることはなかったが、朝から何かあったのだろうか。


「朝から何かあるのか?」


「パーティーの準備で食材を買いに行こうと思ったけど、何を作るか決めてなかったからな」


 ポテトの苦手な野菜を克服する料理を考えるという話をしていたが、何を作るかまでは決まっていなかった。


 準備もあるから早めに買い出しに行きたかったのだろう。


「とりあえず一階にいくか」


「あっ、まだ待った方が――」


「うぎゃ!?」


 部屋の扉を開けると、何か声が聞こえてきたような気がする。


 ゆっくりと覗くと、耳を澄ませて話を聞いていた聖奈と貴婦人がいた。


「あっ、私も少し気になっていただけなので、決して寝言を盗み聞きしていたわけではないですよ」


 なぜか焦って立ち上がる聖奈。


「ええ、聖奈はそうでも私は違うわ。推しとのイチャイチャカップリングも今日までって思うと寂しいわ。この際付き合ったらどうなのかしら? 奥さんは私が毒沼に入れて説得するわよ。娘に頼めばドラマ化も現実になるから、ついでに地上波デビューもしますか? ええ、きっとそれがいいわ。全ての春直ファンはそれを望んでいるわよ」


 そんな聖奈とは違い、貴婦人は堂々としていた。

 

 朝から話が濃すぎて何を言っているのか全く頭に入ってこない。


 しかも、貴婦人の話が早過ぎて聞き取り検査のように感じる。


 俺はまだ寝ぼけているのだろうか。


「あー、とりあえずおはようございます」

「直樹、ちゃんと顔も洗ってこいよ?」

「それぐらいわかってるわ」


 肩から春樹が顔を出して、二人の様子を伺っていた。


「ぎょあああああああああああ! 最後の生推し活……」


「貴婦人さん?」


 そのまま貴婦人は毒を吐きながら倒れていく。


「ママー、急いでぞうきんとバケツ持ってきてー!」


 百合は急いで一階にいる桜を呼びに行った。


 もうこの光景もしばらく見られないって思うと寂しくなるな。



 貴婦人は聖奈と百合に任せて、俺達は一階に降りていく。


「直樹いつまで寝ていたんだ?」


『ネボスケダカラネ』


 すでにみんな起きており色々と準備していた。


 朝早いと思ったがやることが多くて、起こすのを忘れていただけのようだ。


 俺は一人で朝食を食べながら、春樹と話し合うことにした。


「準備って何をしてるんだ?」


「俺達は食べ物の準備だけど、探索者達は飾りつけをするって言ってたぞ。凡人とシャンシャンはあの通りだな」


 ベランダから見える凡人とシャンシャンは、急いで家の中の内装を作っていた。


 本当に犬小屋なのかと思うほどの大きさのプレハブ小屋が完成間近になっている。


 ちびっこわんこ達も楽しみにしているのか、その様子をベランダに座って見ていた。


「とりあえず、天気も良いから外で食べる形でいいか?」

 

「自宅のベランダで立食パーティーって思い出になりそうだな」


 せっかくパーティーをするなら思い出に残る方が良いだろう。


 探索者と協力して何かをやるのは夏以来だな。


「メニューはどうする?」


「小さめで食べやすい大きさの方が良いよな。それにポテトが食べられる野菜料理か……」


「手で食べられる料理って何がある?」


 ポテトが食べるなら、じゃがいもと野菜を混ぜた料理を作る必要がある。


 ただ、手で食べられる小さなものって中々難しいからな。


「んー、手で持って気軽に食べられるじゃがいも料理……」


「「コロッケ!」」


 俺と春樹の声が重なり合う。


 頭の中で出てきたのは下町で食べ歩きしたコロッケだ。


 コロッケならじゃがいもを使っているし、野菜を細かく刻むことでポテトも苦手意識なく、食べやすいかもしれない。


 あとは小さなグラスにじゃがいもの冷製スープでも作れば、少しでも野菜は食べられるだろう。


 他にもカプレーゼ串、ミニキッシュ、ブルスケッタ、ミニハンバーガー、ピンチョス、トルティーヤで巻いたラップサンドなどお腹が膨れる食べやすい料理を用意することになった。


「じゃあ、俺達は買い出しに行ってくるからあとはよろしく」


 そう言って春樹は桜と祖母を連れて買い物に向かった。


 思ったよりも大きな屋外パーティーになりそうだな。


「私達は飾りつけをしましょうか」


 貴婦人の様子を見ていた聖奈と百合も降りてきた。


「貴婦人さんは大丈夫そうですか?」


「しばらく毒を吐いてから来るそうですよ」


「ははは、相変わらずですね」


 食べ終わった食器を片付けてベランダに向かう。


 そこにはたくさんの道具が置かれていた。


 たくさんの電飾やランプ、ガーランドや風船といった飾りつけだけではなく、テントやパラソル、屋外用ソファまである。


 それにここに必要かどうかもわからないものまである。


「これどうしたんですか?」


「あっ、えーっと……推し活です!」


 ひっそりとクマの着ぐるみも置いてあるが、何に使うのか想像がつかない。


 笑顔で押し切られていたため、これ以上は聞かない方が良いのだろう。


「パパ、はやく!」


「どっちが速く膨らませるか競争しよう!」


 ドリと百合はとても楽しみなんだろう。


 俺達に風船を渡してきた。


 すぐに屋外パーティーの準備に取り掛かることにした。

10/10に二巻が発売します。

 今後の続刊のためにも、購入検討していただけると嬉しいです!

 あと一週間になり胃が痛くなってきました笑

 ぜひ、予約や購入していただけたら、コメントいただけると嬉しいです。


 もう一つ……。


 今度はつぎラノのエントリーが始まりました。

 一作品から応募できるので、よければこの作品もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍、電子書籍発売中★

畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

カクヨムコン受賞

『薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう』
ここをタップ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ