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150.配信者、秘密を知る

「遊んでるのかな?」


 クリニックの帰り道、畑で何かしているドリとポテトがいた。


 畑作業をしているのかと思ったが、何やらコソコソとしているようだ。


『オドカス?』


 チップスは目をキラキラさせて尻尾を振っている。


 思ったよりも天真爛漫な犬なのかもしれない。


 ポテトと結婚するぐらいだからな。


「俺が行くとバレそうだから、ゆっくり近づいてね」


『ウン!』


 チップスは忍者のように忍び足で移動し、少しずつ背後に近づいていく。


「いいきゃな?」


『ナオキバカダカラ、バレナイヨ!』


 何を話しているのか気になるが、ここからは全く聞こえないな。


 チップスが驚かす瞬間を立ち止まって見届ける。


 背後に立ち止まったチップスに、ドリ達は何かに集中していてまだ気づかない。


 大きく息をすると、ドリとポテトの肩を叩いた。


『テンネンダ!』


「わぁ!?」

『ハァ!?』


 驚いてその場で飛び上がっていた。


 遠くから見ても驚くのわかるほどだ。


 見てても俺も楽しくなってくる。


 それにしてもチップスは何を言ったのだろうか。


「畑で何していたの?」


 俺が近づくとドリとポテトはやけにくっついていた。


 まるで後ろにある何かを見られたくないように隠している気がする。


「ないよ!」

『ハタケデアソンデタ! イヤー、キョウムシガオオイカラタイヘンダナ。チップスモコンナトコロデナニシテルンダ?』


 俺が後ろを見ようとチラチラするが、邪魔をして全く見えない。


 それに捲し立てるように話し出すポテトに怪しさが滲み出ていた。


 さっきから俺と全く視線が合わないからな。


『ウワキ?』


『ヘェ?』


 そんなポテトにチップスが詰め寄っている。


『ネェ、ウワキシテイルノネ?』


『イヤ、チガウ。コレニハワケガアルンダ』


 なぜかポテトは慌て出した。


 すぐにドリを見ているが、ドリも視線を合わせようとしない。


 知らんぷりを貫き通している。


『ウソツキヨクハナス』 


『ウワキシテナイ!』


 チップスはポテトをバシバシ叩いているが、鈍い音が畑に響いている。


 必死に謝るポテトの姿を見て、だんだんと悲しくなってきた。


 浮気は改めて良くないことだと、我が犬達に教えてもらった。


 俺には相手がいないから、これからも関係ないけどな。


「チップスもその辺にしたらどうだ?」


『ウワキシテ――』


『ウワキシテナイヨ!』


 ポテトは俺に助けを求めるように近づいてきた。


 いつもは自分から近寄ってくることはあまりないのに、ここぞとばかりに脚の後ろに隠れている。


 ただ、ポテトって立ち上がったら、顔が俺の尻の位置にあるぐらい大きいからな。


 今も隠れていないだろう。


「お前、また噛んでたな!」


 さっきから違和感を感じていると思ったら、ポテトが俺の尻を噛んでいた。


 隠れる振りをしてお尻を噛むとはなんてやつだ。


『マタマリョクモラテル』


「魔力をもらってる?」


 俺の言葉にチップスは頷いていた。


 体を捻ってポテトを見るが、また視線を逸らしていた。


 ガッチリと手で押さえて、いつまで俺の尻を噛んでいるのだろうか。


 それにさっきチップスから叩かれていた傷も目立たなくなっている。


「魔力をもらってるって俺から取ってるのか?」


『シラナイ』


「浮気はしたのか?」


『シテナイ』


 浮気の話を持ち出したらしっかりと目があった。


 だが、再び魔力の話をしたら目を逸らしていた。


『ポテトカンデマリョクモラウ』


「どういうことだ?」


「ポテはかいふくおしょいの」


「魔力を回復するためにお尻を噛んでいるってことか?」


「うん!」

『ウン!』


 ドリとチップスの声が重なった。


 どうやら知らなかったのは俺だけのようだ。


 魔力を譲渡できない俺から魔力を吸収するために、ポテトは俺の尻を噛んでいるってことか。


 ならドリやチップスはなぜ平気なんだろう。


「ドリ達は良いのか?」


 尻を向けるがドリとチップスに首を振られた。


 それはそれで悲しくなる。


 一旦離れたポテトはまた俺の尻を狙っていた。


「やしゃいたべりゅもん」

『チップモ!』


 ひょっとしたら魔力入りの野菜でドリ達は魔力を回復しており、じゃがいも料理しか食べない偏食のポテトは魔力が足りないのだろうか。


 いつもトマトやきゅうりを出しても食べないしな。


 食べたとしても肉料理ばかりだ。


 魔物達もバランスが良い食事が大事なんだろう。


「よし、今日から野菜メニューを増やしてもらおうか!」


『イヤダアアアアア!』


 ポテトはその場から逃げるように家に帰っていく。


 きっと祖母にお願いをしに行くのだろう。


「そういえば、浮気についてはどうなったんだ?」


『ハァ!?』


 チップスは思い出したのか、急いでポテトを追いかけていった。


 我が家の犬は相変わらずバタバタとしているようだ。


 魔力についても、もう少し探索者の人達に教えてもらわないといけないことがわかった。


 それに魔力が必要なら、先生の実験にこれからも協力したほうが良さそうだしな。


「俺達も帰ろうか」


「うん!」


 俺はドリと手を繋いで帰ることにした。


 何か忘れているような気もするが、覚えていないってことは問題ないのだろう。


『ヨォヨォ、アイツラマタワスレテルヨォ! ヌオオオオオオオ!』


 畑には発泡スチロールとともに放置されている存在がいた。


 それに気づくのは冬が近づいた時だった。

10/10に二巻が発売します。

 今後の続刊のためにも、購入検討していただけると嬉しいです!

 よろしくお願いいたします!


 また、『このライトノベルがすごい!2025』のアンケートが本日までです。

 この作品も対象になっているので、良かったら参加していただけると嬉しいです!

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