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148.配信者、騙される

「よし、準備はできたか?」


「できたよー!」


 俺達はいつものようにツナギに着替えて玄関に向かう。


 外も少しずつ寒くなり、昼間の温度も下がって過ごしやすくなってきた。


『ナオキー!』


 あれからポテトとチップスは普通に話すようになった。


 時折、犬語になるのか何を言っているのかわからないが、どこか外国人と話しているような感覚に近い。


 そのうち、ちびっこわんこ達も話すようになるのだろう。


 実際、もうちびっことは言えないほど、だんしゃくばかりどんどん成長している。


「なにかあったのか?」


 靴を履いて準備をしていると、ポテトは発泡スチロールを持ってきた。


 そういえぼ、金色のさつまいもを増やすために温床を作って苗にするのをポテトに任せていた。


 その苗に何か問題が起きたのだろうか。


『ドウシヨウ』


 ポテトは少し困り顔で発泡スチロールの蓋を開ける。


『ヨォヨォ、オマエラヨォ、スグニトジコメルヨォ!』


 俺は開けた蓋を一度閉じる。


 中はしっかり苗ができており、葉っぱも良い感じで生えていた。


 ただ、なぜやつがいるのだろうか。


 苗と一緒に入っていたのは、秋の初め頃にマツタケ狩りに行った時に収穫した話すマツタケだった。


「ポテトが入れたのか?」


『チャウヨ? ドリガイレタ』


「ふぇ!?」


 知らんぷりしていたドリはポテトに裏切られた。


 やけに視線を逸らすと思ったら、やっぱりドリが何かをやっていたのか。


「ポテトもいれたもん!」


 必死にポテトを捕まえようとするドリ。


 だが、素早いポテトを中々捕まえられないようだ。


 俺の周りもドリとポテトがクルクルと走り回る。


 これじゃあ、畑に行こうにもいけないな。


「はあはあ……」

『ナカナカヤルナ……』


 しばらくするとお互いに息切れして立ち止まった。


 そのまま床に寝転び休憩している。


「とりあえずこれは預かるとして畑に行けるのか?」


 息が整っていないため話せないのだろう。


 今日は俺一人で作業をしないといけなさそうだ。


 作業と言ってもほとんどは五味がいじった畑の整備が中心になる。


 前回は畑を耕すとさつまいもが出てきた。


 さすがに食べるかどうか迷ったが、毒が入っている可能性もあるとみんなに言われて処分した。


 生産者には悪いが、あの人が何をやっていたのか見た者はいないからね。


「じゃあ、行ってきま――」


『イク!』


 玄関の扉を開けると、何かが飛びついてきた。


 振り返ると雑巾を持っているチップスだった。


 ここ最近チップスと一緒にいることも増えてきた。


 そんなチップスはドリとポテトの顔を見てニヤリと笑っている。


「子ども達はいいのか?」


『カラアゲヤッテル』


 チップスが肉球を向けているところには、カラアゲで遊んでいるちびっこわんこ達がいた。


 カラアゲが面倒を見てくれるのだろう。


『クゥエエエエ!』


 いや、あれは食べられそうになっている気もするが良いのかな?


 ちびっこわんこ達に潰されてカラアゲは叫んでいた。


「ほどほどにしとけよー」


 俺の声にちびっこわんこ達も手をあげている。


 さすがに手加減ぐらいできるだろう。


 ポテトもまだ家で休んでいるから、父親として注意もできるはず。


『ハイ!』


「散歩じゃないけど持つのか?」


『ウン!』


 俺はチップスにリードを渡されて、早速元さつまいも畑に向かっていく。


 やはり外の気温も下がってきた影響か、探索者の姿も少なくなってきた。


 夏の時はダンジョンが報告されたばかりで人が集まっていた。


 ただ、プレハブ小屋では今後のことを考えると、まだ環境が整っていないのもあり、元いたダンジョンに戻る人も少なくない。


 それに我が家の近くにできたダンジョンは最高難易度らしいしね。


 そんな危ないダンジョンに毎日行くのもストレスが溜まるだろう。


「さぁ、今日も畑……おい、チップスどこに行くんだ?」


『コッチダヨ?』


 チップスはさつまいも畑を通り過ぎて、そのまま歩き出す。


 そのまま付いていくと、ある声が聞こえてきた。


「あら、なおきゅん! 今日は来てくれたのね」


「あっ……いやー」


 俺はゆっくりと後退りをするが、俺のお尻を両手で押している奴がいた。


「チップス裏切ったな!」


『バアチャンニタノマレタ』


 畑作業について行くと言ったから一緒に来たのに、俺をクリニックに連れて行くためだったとはな。


 あれから畑作業があるからとクリニックに行くのを後回しにすることが増えた。


 数回は行ったが、元々病院に行くのは苦手だったからね。


「さあさあ、今日もカウンセリングするわよー」


「もう話すことないですよ?」


「なおきゅんがなくても私にはあるのよ! 乙女はいつでも恋バナよ!」


 ここに来ると先生の話がとにかく長いからな。


 俺のカウンセリングのはずなのに、先生の話をずっと聞かされる。


 最近は恋バナをするわよとお菓子と飲み物まで用意されていることが増えた。


 彼女もいたことがない俺に恋バナができるはずがない。


 まだ鯉とバナナの話の方ができそうだ。


 逃げようにも首元を掴まれた俺は、そのままクリニックの中に連れ込まれて行く。


 ああ、患者をこんな扱いしている先生はヤブ医者だ!

10/10に二巻が発売します。

今後の続刊のためにも、購入検討していただけると嬉しいです!

よろしくお願いいたします!


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この作品も対象になっているので、良かったら参加していただけると嬉しいです!

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