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144.配信者、知らないことばかりです

「そういえば、なおきゅんは外に出てもよかったのかしら? おじいちゃまが休ませて――」


 きっと祖父が先生に相談をしていたのだろう。


 先生は少しずつ俺に近づいてくると、そっと顔を覗き込んだ。


「ちょっと……あなた顔色悪いじゃないの! 発作でも出ているのかしら?」


「発作ですか?」


「えっ、あー……えーっと……」


 先生は困ったように頭を掻きながら、視線を逸らしてどこかを見ていた。


 いつもはお調子者の先生だが、ここまで戸惑う姿をあまり見たことがない。


「ほら葉っぱが出ているじゃないの」


 先生は五味の持っているさつまいもの蔓を指さしていた。


 葉っぱを発作って聞き間違えたのかな?


「やっぱりここに住む人達はおかしなやつらばかりなんだな」


「なによ? 私に文句があるのかしら?」


「本当のことを言って悪いのか? 使えないやつとオカマみたいな――」


「はぁー、あなた本人を目の前にしてよくそういうことが言えるわね。どこからどう見ても立派なオカマよ!」


「なっ!?」


「胸を張ってオカマと言って何が悪いのよ!」


 五味は先生の勢いに圧倒されていた。


 たしかに先生って本名が釜田だったもんね。


 あの五味がさすがの先生にも丁寧な言葉遣いで、〝御釜〟と言ったのだろう。


 なら、俺も胸を張って御生産者様と認められないとな。


「俺は生産者だ! だから自分が作った野菜ぐらい知っている」


 俺だって自分の作ったさつまいもぐらい違うと言える。


「それに俺に文句を言ってもいいが、関係ない先生に言うのはお門違いだ」


「なおきゅん……」


 なぜか先生から熱い視線を向けられるが、これはなんだろうか。


 重だるくなっていた体が、さらに重くなっていく気がする。


「お前みたいなクズがよくそんなことが言えるな。あれだけミスをしてきた――」


「それはあなたが言ってもいいのかしら? あなたの方が犯罪者よ」


「何を言ってるんだ?」


「はぁー、あなた自分が何をしたのか忘れたのかしら?」


 先生は大きくため息を吐いて、見たこともない鋭い視線で五味を見る。


「まず除草剤を撒いたことで器物損壊罪や威力業務妨害罪にあたるわ」


「そうなんですか?」


 五味が除草剤を撒いたことは知っている。


 ただ、それだけのことが犯罪行為になるとは思いもしなかった。


「それに倉庫も荒らしているから業務妨害罪もあるかしら」


「それは……そもそもここの畑はお前じゃなくて、そこにいる犬みたいなのが作ったんだろ! 人間相手じゃないのに罪になるわけないだろ!」


 ん?


 畑はポテトのじゃがいも畑以外は俺が作っているはずだが、五味はポテトが作ったと思っているのだろうか。


「いやー、ここの生産者俺ですが?」


「なわけないだろ! 雑誌やテレビの取材もそこの犬が答えていただろ!」


 ネットニュースでは生産者の一言があったが、あれは祖父が答えていたと思ったが……。


「そうなのか?」


 俺は近くにいるチップスに確認してみるが、首を横に振っていた。


 チップスじゃなければ確実にポテトだが、我が家の犬は取材の対応ができるはずない。


 そもそもポテトが話せるわけないからな。


『ポテト!』


 チップスは何かに気づいたのだろう。


 向こうの畑から鍬持って走ってくるポテトがいた。


 もちろんいつものように二足立ちなのは変わらない。


『コンニャロオー!』


 ん?


 一瞬、ポテトが話しているように聞こえたが気のせいか?


 それにチップスもポテトの名前を呼んでいた。


「あと、あなたやなおきゅんも知らないと思うけど、ここの野菜って第二の国家資源として認定されたわよ」


「第二の国家資源?」


 国家資源とはなんだろうか。


 資源で思いつくのはガスや石油といった、今はあまり聞かなくなったものを指しているはず。


「ここで作られた魔力が含まれている野菜は国が保護する対象になったのよ。いわゆるガスや石油、ダンジョンとかと同等の扱いね」


「えっ……えー!」


 つい驚いて俺の声が畑に響いていく。


 だってガスや石油は夢の存在だし、ダンジョンは国に管理されているのは誰だって知っているレベルだ。


 ここの畑も管理されるようになるのだろうか。


 それだと尚更畑作業がやりづらくなるな。


 まぁ、カメラから様子を見てもらえばいいか。


 ただ、ここで作った野菜が資源と同等な扱いってあまりにも無理がある気がする。


 ここの野菜って結構簡単に作れてしまう。


 ドリとおまじないをかけていたら、普通の野菜の半分の期間でできる。


 そんな野菜を第二の国家資源にしても良いのだろうか。


 むしろ、国に不安を抱いてくる。


「パパ!」

「パパさん、悲鳴が聞こえたけど大丈夫!」


 頭を整理するために考えていたら、聖奈と貴婦人が気づいたら目の前に立っていた。


「んー!」


 ドリは俺の頭を撫でようとして背伸びをしているが届かないのだろう。


「話せないほど何か言われたのね。あいつは地獄に堕としてあげるから安心しなさい」


 重装備をした聖奈と大きな毒沼を出した貴婦人。


 いくらなんでもダンジョンではなく、畑の真ん中でするような光景ではない。


『ダイジョウブ?』

『ナオキガシンパイ』

『シリヲカメバイイヨ!』


 足元でやっぱりポテトが……いや、チップスも話している気がするぞ。


 それよりも俺が今やらなければいけないことがあった。


「あのー、ちょっとやりすぎだと思います」


 俺は急いで二人を止めるように手を握る。


 さすがにいくら休ませている畑でも、荒らされるわけにはいかない。


「はぁい!?」


 聖奈は驚いて盾を落としてしまった。


 びっくりさせてしまったようだ。


 そんな聖奈を貴婦人はニヤニヤしながら微笑んでいる。


「なおきゅん大丈夫よ。第二の国家資源の畑を荒らすやつは犯罪者や魔物と同じ扱いになるからね」


「はぁん!?」


「法律で裁けないものは探索者の手で捌けるのよ。さぁ、楽しみだわね」


 どうやら五味は魔物と同等の扱いとなるため、探索者で処分をして良いことが決まっているらしい。


 どこか強引な気がするが、本当にこの国は大丈夫なのか?


 いつのまにか俺の周りは、探索者と魔物の集団で囲まれていた。


「パパ、いいこーいいこー」


 そんな中ドリは俺の頭を撫でていた。


 その手……土がたくさん付いているじゃないか……。

10/10に二巻が発売します。

今後の続刊のためにも、購入検討していただけると嬉しいです!

よろしくお願いいたします!


「ほんきゃってね! きゃわないこは……」

『カミツクゾ!』

 ポテトがあなたのお尻を狙っているかもしれないですよ?


 また、本日より『このライトノベルがすごい!2025』のアンケートが開始されます。

 この作品も対象になっているので、良かったら参加していただけると嬉しいです!

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