142.配信者、ゴロゴロする ※一部五味視点
「あー、暇だな」
子犬達と遊び終わり、暇になった俺は家の中でゴロゴロしていた。
「直樹邪魔よ」
『ガウ!』
どうやら床の掃除をしている祖母とチップスの邪魔をしていたようだ。
チップスは俺が寝転んでいる床を掃除したいのか、器用に両手を俺と床の間に入れて、転がそうとしてくる。
コロコロと移動すると、チップスはその後も俺と床の間に手を入れてきた。
『ハァハァ!』
尻尾を大きく振って、目をキラキラ輝かせて待機している。
ボール投げの後は、俺がボールの役目になるのだろうか。
今までチップスは妊犬だったから、遊んであげることもなかったな。
「なにをやっているのよ……」
その後もチップスに付き合って、ゴロゴロしていると祖母から冷ややかな目で見られていた。
ひょっとしたら、ただゴロゴロしているだけだと思われたのか?
「俺はチップスと……」
振り返るとチップスは別のところを掃除していた。
やっぱりポテトの妻って感じだな。
チラッと目が合うが、すぐに目を逸らしていた。
「暇なら先生のところにお手伝いに行ってきたらどうかしら?」
「先生?」
本当にやることがないと、廃人のように寝ることしかなくなってしまう。
ただ、先生のところに行くと、外に出てしまうのは問題にならないのだろうか。
「ドリに叩かれると本当に痛いからな……」
「あそこなら畑にも近づかないからドリちゃんにも怒られないんじゃないか? 体も休まるだろうし」
庭で作業をしている凡人も勧めてきた。
どうやら俺が畑に行くと、仕事をする可能性があるから、外に出さないことになっていたらしい。
確かに畑を見ると作業をしたくなるもんな。
それにクリニックがある方は畑を休ませているため、今は何も育てていなかったはず。
それなら問題はないだろう。
ただ、クリニックに行った方が疲れるような気もするけどな……。
先生のキャラってこの辺で一番強烈だからな。
「ほらほら、ついでにチップちゃんを散歩に連れていってちょうだい。今まであまり外に出ていないのよ」
「それなら仕方ないか」
妊娠中は家にいることの方が多かったし、産後は家で少しずつ家事を手伝いながら運動をしていた。
今まで外に散歩に行ってないなら、尚更行かないといけないな。
チップスもリードを持って玄関で待っていた。
さっきまで俺から目を逸らしていたのに、今はキラキラした瞳でジーッと見つめてくる。
靴に履き替えると、チップスは手を差し出してきた。
「手を繋ぐのか?」
『ンーンー』
チップスは首を振ると俺の手にリードを渡してきた。
お互いに手でリードを掴んでいるが、犬の散歩ってこれが当たり前だったっけ?
せっかく休むように注意されているため、特に考えることもせずクリニックに向かうことにした。
♢
俺は発注したばかりのさつまいもを持ってあいつの畑に向かったが、以前よりも厳重に警戒されていた。
双眼鏡で確認しているが、子どもや犬がキョロキョロしているし、畑作業に大人が増えた。
「これじゃあ、倉庫にも行けないだろ」
倉庫にさつまいもを戻せば、全て解決すると思っていた。
何か疑われても証拠はあるのかと言えるからな。
ただ、カメラも畑や倉庫に向いているため、身動きが取れずに俺の考えは全て台無しになってしまった。
そこで新しく考えたのは、さつまいもを土の中に植える手段だ。
これだけ畑作業をする人が増えたら、ひっそりと隠蔽作業をしても姿は隠せるだろう。
育てたさつまいもの蔓を追加で送ってもらい、袋に入れて運ぶ。
見た目はあいつらと一緒で同じ色のツナギに帽子を被っているから、誰にもバレないだろう。
これで準備は全て整った。
「あーくそ! これもあいつのせいだ!」
人気が少ない畑を掘って、土を柔らかくしたらさつまいもを埋めていく。
これを何度も繰り返していけば、周囲にさつまいも畑が完成する。
これで俺は無実だな。
この度第二巻の追加情報が発表されました。
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ちなみに個人的に好きなのは、応援書店SSです笑
祖父とポテトの面白い掛け合いが見られます。
今後の続刊のためにも、購入検討していただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
「ほんきゃってね! きゃわないこは……」
『カミツクゾ!』
ポテトがあなたのお尻を狙っているかもしれないですよ?