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135.配信者、思い出す

「おふりょおわった?」


『ワン!』


 朝食を食べ終わるとドリ達はさつまいもが入った鍋の前で正座して待っていた。


 そろそろ時間的にもちょうど良いだろう。


「鍋から出したら早速伏せ込みをしようか」


 ドリとポテトは嬉しそうにさつまいもを持っている。


 ちょうど折れて二つになったから喧嘩にならなくて――。


 ドリとポテトの後ろを寂しそうにカラアゲは見ていた。


 きっと誰かが植えられないなら、自分が犠牲になろうと思ったのかな?


「カラアゲは優しいな」


『クゥエ!』


 そんなカラアゲを優しく撫でる。


 甘えているのか羽をバタバタとさせながら、俺にスリスリと甘えてきた。


 昔飼っていた鶏のささみの時も思ったが、鶏って思ったよりも懐くよな……。


 まぁ、カラアゲに関してはカカポ(仮)だけどな。


 本当に絶滅危惧種のカカポだったら、今頃この家にはいられない。


「パパー! きゃらあげー!」


 あまりにも早く植えたいのか、ドリは大きな声で呼んでいる。


 俺とカラアゲは急いで向かう。


 庭に置いてある発泡スチロールに向かうと、ドリとポテトはすでにさつまいもを植えようとしていた。


 俺は急いでスマホを取り出すと、画面に表示されていた電話の発信者表示に気づく。


 そこには市長から直接電話がかかってきていた。


「ちょっと電話してくる待ってられるか?」


「んー」

『ガルルルルル!』


 ドリは悩んでいるが、ポテトは待っていられないのか唸っている。


 さすがに朝食も間に挟んで、おあずけ状態が長く続いているもんな。


「じゃあ、配信は諦めようかな。終わったらポテトが管理するんだぞ」


『ウン!』


 ポテトは嬉しそうに返事をしていた。


 俺はすぐに市長へ電話をかけ直す。


 コール音が数回鳴ると、すぐに市長は電話に出た。


「あっ、おはようございます。森田です」


「おー、朝早くからごめんね」


 今日も市長はフランクな感じで距離が近い。


「いえいえ、何かありましたか?」


「やっと都市開発プロジェクトの出店店舗が決まったから、メールで送信しておいたよ」


 俺はその言葉を聞いて、少し息が苦しくなるような気がした。


 頭によぎるのは説明会の時にあった出来事だ。


 あの時のことは覚えていないが、後で春樹からは話を聞いている。


 大人になっても相変わらず春樹に迷惑をかけたからな。


「すぐに確認しますね」


 俺はメールを開いて中を確認していく。


「これでいいきゃな?」


『ウン!』


 チラッとドリとポテトを見ると、楽しくさつまいもの伏せ込みが終わっていた。


「私達の方でこの町に合っているか判断したから、気になったお店があればサイトから見てみるといい」


 どうやら丁寧なことにお店の名前とコンセプト、今後何をやっていくのかが書かれていた。


 そして、最後の方には会社のホームページサイトのURLが貼られていた。


「また何か話が決まったら連絡します。あと、養鶏場のお友達にも伝えてもらえると助かります」


 どうやら春樹の連絡先は知らないようだ。


 春樹には俺から今回のことを伝えることにして、市長との電話を切った。


 すぐに俺はメールの中を確認して、ある名前を探していく。


――笹島ホールディングス株式会社


 俺が前に勤めていた会社だ。


「ねね、これいれりゅ?」


『マツタケカ?』


「こもりうたになりゅよ!」


『オレハマツタケダヨォ! ヨォヨォマツタケダヨォ!』


『ウルサイゾ?』


 ドリ達がコソコソと話している声は、集中している俺の耳には聞こえなかった。


「ヤオンもできるなら買い物もしやすくなるな」


 そこにはいつも買い物に行くショッピングモールも入っていた。


 下まで確認して、二度目も見たが俺の勤めていた会社の名前はなかった。


 俺はすぐに春樹に連絡をする。


「おっ、直樹どうしたんだ?」


「市長から都市開発プロジェクトの出店店舗情報をもらって――」


「直樹大丈夫か?」


 そんなに俺の声がいつもと違うように聞こえるのだろうか。


 さすが小さい頃から一緒に育った幼馴染だな。


「ああ、大丈夫だ。そういえば働いていた会社はなかったぞ」


「そうか……。よかったな!」


 あれから春樹も心配していたのだろう。


 説明会の後からは俺の記憶が曖昧になることもなく、普段通りに生活はできている。


 これであいつらには関わることはなくなった。


 それを思うとどこか体から力が抜けてほっとした。


「そういえば、朝から桜と百合が忙しそうにしていたけど何かやるのか?」


「今日? 特に予定はないよ?」


「そうか、ならいいや」


「そっちは店の準備どう?」


「外装はある程度できたから、あとは内装を作るだけだな? 中で使う機材はもう買ってあるから、冬には間に合いそうだ」


 冬になったら雪が降ってくる。


 それまでには店を作る工事は終わらせておきたいのだろう。


「のびのびすりゅ?」


『ヤルゾ!』


『クゥエ!』


「のびのびー!」

『ノビノビー!』

『クゥエー!』

『ヨォヨォ!』


 ドリ達はみんなでおまじないをかけていた。


 一応俺も遠くで手を伸ばしておく。


 あとは全てポテトが管理することになる。


 じゃがいもをちゃんと育てたポテトなら、きっと大丈夫だろう。


「じゃあ、また何かあったら連絡する」


「ああ、直樹も畑仕事頑張れよ!」


 俺は春樹と電話を切ってドリの元へ向かう。


「ちゃんと伏せ込みできた?」


「ばっちぐー!」


 ドリは親指を立てていた。


 誰かに教えてもらったのかな?


「じゃあ、ポテトが戻ってきたら畑に行こうか」


 ポテトはさつまいもが取られないように、発泡スチロールを隠しているのだろう。


 俺達はポテトを待ってから、畑に行くことにした。


 このとき庭にいたはずの変なマツタケがなくなっていることに気づいていたら、あんなに大変なことにはならなかったのだろう。

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のびのびー٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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