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133.配信者、ふんしょーする

「マツタケ美味しかったね」


「うまうま!」


「また泣かないかと心配になったけど、一度泣き止めばただのマツタケと変わらないね」


「食べる瞬間に泣かれていたら俺達の罪悪感がすごかっただろうな。作っている時もビクビクしていたわ」


 マツタケは収穫する時に泣いたぐらいで、それからは泣き叫ぶことはなかった。


 庭にいるラップ調のマツタケも今は静かにしている。


「じゃあ、俺達は帰るからな」


「ドリまたね!」


「うん!」


 春樹達は残りのマツタケを持って家に帰って行った。



「あれ? 春樹達は?」


「さっき帰ったばかりだよ」


 祖父はどこかに行っていたのか、発泡スチロールを持ってきた。


「それ何に使うの?」


「ポテトのために持ってきた」


『ワン?』


「あー、温床(おんしょう)を作らないと芽が出ないのか」


 俺は祖父から発泡スチロールを受け取る。


 マツタケを堪能した俺達は早速ある準備を始めていた。


『ウーン』


「そんな顔せんでもちゃんと芽はでるぞ?」


 倉庫が荒らされて売り物にならなくなったさつまいものなかに、黄金のさつまいもも含まれている。


 今回はそのさつまいもを使って、寒くなる前に増やそうと思ったのだ。


「ドリがんばりゅ!」

『ワン!』

『クゥエ!』


 みんなやる気は十分のようだ。


 ただ、あと二ヶ月ほどで寒くなり、例年通りなら雪が降ってくる。


 それを考えると早く作業を終わらせないといけない。


 そこで必要になるのが温床だ。


 温床を使うことで早く芽出しができるし、寒くなる季節には必要になってくる。


 真冬は農家にとって大変な時期だからね。


 今まではドリの力を少し借りていたが、みんなの力を最大限に借りて作るつもりでいる。


「じゃあ、発泡スチロールに穴をいくつか開けるぞ」


 祖父は(きり)を持ってきて発泡スチロールの側面と底にいくつか穴を開けていく。


「これをしないと排水もできないし、息も吸えないからな」


「いきてるもんね!」


 ドリから見たらさつまいもも生きているように見えるのだろう。


 錐で穴を開けたら、底に藁を敷き詰めて落ち葉と米ぬかを混ぜ合わせたものを上から被せていく。


 ちなみに米ぬかは祖母がぬか床で漬物を作っているため、それに使うものを借りた。


『クウェ!』


 そしてここで登場するのが、カラアゲの作った鶏糞肥料だ。


 養鶏場のおじさんが作り方を教えてくれた鶏糞肥料だったが、ドリがあまり肥料を好まないため使うことがなかった。


「ドリは大丈夫?」


「かりゃあげのはいい!」


 ただ、カラアゲの肥料に関しては特別のようだ。


 ポテトとカラアゲも一緒に肥料を混ぜていく。


「あとは水をかけたら、今日の準備は終わりだな」


『ワォン!?』


 ポテトはすぐにさつまいもが植えられると思ったのだろう。


 俺の方を見て唸り始めた。


「ああ、今回は温床で芽を生やす予定だからな。これで数日陽が当たるところに置いていたら、さつまいもの寝床は完成するぞ」


 さつまいもの芽を出すのも結構大変なんだろう。


 じゃがいもでも芽出しは重要な作業だったからね。


「ドリできりゅよ?」


 温床の準備を終えたタイミングでドリは何か気になることを言い出した。


「なにができるの?」


「これちゅくれる!」


「へっ?」


 俺と祖父はお互いに顔を見合わせる。


 ひょっとして温床が作れるのだろうか?


「いくよ?」


 ドリは股割りのように足を広げてしゃがむと、体を丸く縮こませた。


「ふんしょー!」


 大きく腕を挙げると、体全体を使ってくるりと回すと何度も同じことを繰り返す。


 まるでソーラン節を踊っているように見えてくる。


 ひょっとして新しいおまじないなんだろうか。


「ほら、みんなもやりゅ!」


 ドリは俺達にも一緒にやるように勧めてきた。


 せっかくだからと俺はスマホを置いて撮影を始める。


「よいしょ!」


 一緒におまじないをするために、ドリの隣でしゃがみ込む。


「パパ、ちがゆ! ふんしょー!」


 しゃがむために声を出したら、違うと怒られてしまった。


 中々股割りの姿勢ってキツいんだよな。


 それにちゃんとおまじないの言葉も大事らしい。


 ポテトやカラアゲも一緒になってしゃがみ込む。


 犬の股割りって初めて見たな……。


 カラアゲは特に普段と変わりない気がする。


「なになにどうしたの!?」


「みんなで何をしているの?」


 突然撮影が始まったことで、二階にいる探索者達が騒がしくなってきた。


 俺達はみんなで二階を見上げる。


 みんな窓を開けて様子を見ているようだ。


「ヤンキーごっこかな?」


「みんな画面から消えてびっくりしたわよ!」


 俺はスマホが置いてあるところを見ると、斜め上を向いていた。


 急いでスマホを準備していたから、動いちゃったのかな?


 そりゃー、股割り姿勢になったらみんな画面から消えちゃう。


「拙者が直すでござる!」


 急に侍の声が聞こえたと思ったら、窓から飛び降りてスマホの向きを直すと再び二階に戻った。


「ちゃんと足は拭いてくださいね」


「拙者バッチリでござる」


 侍は窓から足を出していた。


「直樹は二階の窓人が飛び降りてきて、一瞬で戻ったことは気にならないのか?」


『ヌケテルモン』


 祖父とポテトは何かコソコソと話しているようだ。


「パパ、はやく!」


 ドリに言われて再び股割り姿勢になる。


「せーの!」


「ふんしょー!」

『ワォーン!』

『クゥエー!』


 しばらく新しいおまじないをして、温床ができるのを楽しみに待つことにした。

書籍情報を一番初めに載せることにしました!

ええ、作者が近況ページ?の使い方をあまり理解していないからです笑

適宜更新していきますので、確認してもらえると嬉しいです!


書籍の方もよろしくお願いいたします・:*+.\(( °ω° ))/.:+

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