表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/163

131.配信者、環境の変化

「あらどうしたの?」


 俺達が家に帰ると、祖母が優しく出迎えてくれた。


 ポテトからは普段の元気さはなく、俺が撫でても噛む様子がないほど落ち込んでいる。


「さつまいもが全部ダメになったからね」


 持ってきたさつまいもを見て、祖母は優しく微笑んでいた。


「これを使ってさつまいもパーティーをしないとね」


昔から変わらない祖母の笑顔に俺はほっとする。


 何か悪いことがあった時は、いつも優しくニコニコしながら慰めてくれたな。


『へっ⁉︎』


 落ち込んでいたポテトの目はキラキラとしていた。


 割れたものに関しては売り物にはできない。


 ただ、自分達で消費することはできる。


 割れた部分から傷んだり、腐ったりするから、早く食べないといけないのは仕方ないね。


 それにしばらくは冒険者達にも安くして販売すれば、ある程度は買ってくれるかもしれない。


 ちょうど旬なのもあり、ホクホクで甘い美味しいさつまいもになっているだろう。


「ひょっとしてもう食べられないと思ったのか?」


『ガルルルルル!』


 ポテトを俺に唸り声をあげて怒っていた。


 繋いでいた手を思いっきり振り解きやがったな。


 今まで落ち込んでいたのは、食べられないと思っていたからだろう。


 一回も食べられないと言ってないからな?


「ポテちゃんも一緒に何を作るか決める?」


『うん!』


 ポテトは嬉しそうにタブレットを持って、祖母と台所に向かった。


 いつもの元気な姿に戻ってホッとする。


 さすがに家族の誰かが落ち込んでいるのは悲しいからね。


 それにしてもポテトは肉球を使ってタブレットを操作できることに驚きだ。


「俺達はマツタケをどうするかだな」


「そろそろ桜達も帰ってくるだろ?」


 一方、俺達は後ろで堂々と付いてきていた聖奈達が帰ってくるのを待つことにした。


 マツタケについて聞きたいことがあったからね。


 さすがに叫んでいたマツタケを食べても良いのか疑問だった。


 食べる瞬間、叫ばれたり断末魔が聞こえたらかなりトラウマになりそう。


「パパ! まったけちょーらい!」


「マツタケ?」


「うん!」


 ドリはカゴからマツタケを二本だけ取り出すと、百合とともに庭に向かった。


 マツタケでも埋めるのかな?


 さすがにマツタケは野菜と違って、埋めても生えてこない。


 何をやっているのかあとで様子を見に行こう。


「ただいま帰りましたわ」


「ああ、みなさんおかえり!」


 少し待っていたら聖奈達が帰ってきた。


 彼女達も一緒にキノコ狩りをしていたのか、たくさんのキノコを持っている。


「そのキノコも一緒に晩御飯で食べますか?」


「あら? これは全て毒キノコよ」


「へっ?」


 貴婦人は何も言わないままニコリと微笑んでいる。


 詳しくは聞いてはいけなさそうな雰囲気に、俺達は話を変えた。


「このマツタケって食べても大丈夫ですか? なんかずっと叫んでいたけど……」


「ええ、大丈夫よ」


「魔物みたいに変異しても見た目はマツタケですよ」


「へっ!?」

「はぁん!?」


 聖奈と貴婦人の言葉に、俺と春樹は再び驚いた。


 どうやらダンジョンができると周囲の生態系は変化することがあるらしい。


 その中でも生物が魔物化することも稀にあると。


 稀にあることが今大量にカゴの中で起きているということだ。


「あのダンジョンが最高難易度と言われている理由もそういうことね。魔素って空気みたいに見えないから、外にも漏れ出ちゃうのよ」


「魔素って……?」


「魔力の素みたいなものですね。ダンジョンの外にはそこまで魔素が出てきても、ダンジョンの中みたいに影響は少ないから大丈夫ですよ」


 ダンジョンから溢れ出てきた魔素を吸収すると、少しずつ変化する。


 それでもダンジョンの中にいる魔物のように凶暴化するわけではない。


 その証拠にクマのシャンシャンやイノシシがそれに当たるらしい。


 マツタケは魔物みたいに変異したマツタケ。


 だからマツタケと同じ認識らしい。


 シャンシャンは魔物みたいに変異したクマという扱いだ。


 確かに立ち上がったり、奇妙な行動をしているもんな。


 今まではのびのびの影響で、野菜に魔力が込められると思っていた。


 ただ、ドリののびのびだけではなく、環境の影響もあるのだろう。


 それをドリ達にも伝えようと、俺は庭に向かった。


 ついでにおやつも用意してあるらしいしね。


「二人とも何をやってるの?」


 庭にいたドリと百合に声をかけると、二人ともビクッとしていた。


「にゃにも!」


「のびのびしていたわけではないよ!」


 うん?


 必死に隠そうとしている二人が怪しいぞ。


 俺は必死に隙間から顔を出そうとした、ドリと百合は素早く動いて隠そうとしていた。


「あっ、ポテトチップスができたって言ったぞ!」


「ゆりちゃんいこ!」


 ドリは百合の手を引っ張って、居間に向かっていく。


『オレハマツタケダヨォ! ヨォヨォマツタケダヨォ!』


 庭に生えているマツタケがなぜか歌を歌っていた。

新作の短編を投稿しました!

下にあるタグからよろしくお願いいたします!


そして、書籍もよろしくお願いいたします。

半分近く書き下ろしなので、web読者でもきっと楽しめると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍、電子書籍発売中★

畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

カクヨムコン受賞

『薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう』
ここをタップ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ