12.配信者、知らぬ所で戦争が起きていた ※視聴者視点
あるネット依頼掲示板が戦争になっていた。
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【探索者ギルドネット依頼掲示板】
[依頼住所] イーナカギルド
[依頼内容] 緑か黄土色のCランク魔石一つ
[制限時間] 早いもの順
[報酬代金] 魔石の相場
[追加報酬] キンセンカとコスモスの花束
[特記事項] 花束が枯れればギルドで処分します
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突然現れた可愛い依頼内容に目を惹かれる者が多かった。一般的に追加報酬は早く受けて貰いたい人が、追加にお金を払うことが多い。
そこに書かれていたのが、誰も見たことがない"キンセンカとコスモスの花束"だ。
こんなお金優先の時代に書かれたその言葉に探索者達はほっこりしていた。
だが、そのほっこりも一瞬にして終わった。
すぐにこれが畑の日記を配信しているパパが、ドリちゃんのために依頼した物だとみんな気づいた。そしてその一人に私も入っていた。
私はこの日のために、緑と黄土色の魔石を夜中にダンジョンに潜って取ってきた。
Sランク探索者の私にとっては、Cランク魔石なんてすぐに集めてしまう。だが、ドリちゃんが吸収するなら最高級の物を味合わせてあげたい。
ただ、一人でSランク魔石を落とすアースドラゴンやウインドドラゴンを倒すのは限度がある。
そのため、今回はAランク魔石をドロップするグリフォンとエルダートレントの魔石を用意した。
それなのに問題が発生していた。
「なんで依頼が受理されないのよ!」
ネット依頼掲示板が混雑して、中々依頼が受理されないのだ。
誰かが事前に"畑の日記"の情報をバラしたのだろう。いつのまにか動画配信の再生回数も伸びて、探索者達に火をつけた。
動画を見た探索者は次々とネット依頼を受けるとコメントにも書いてあった。そこにはSやAランク探検者の名前もチラホラ書かれている。
みんなアカウント名と探索者の二つ名が同じだからすぐにわかった。
パパさん見守る会やドリちゃん見守る会もひょっとしたら高ランク探索者なのかもしれない。
みんなが一斉にネット依頼を受けようとしたため、ネット依頼の回線が混雑したようだ。
ページを更新しても受けた人の名前が書かれない。
きっと依頼は何かの影響で受理されているが、誰が受けたのかわからない状態になっている。
誰かわからないやつが取った魔石をドリちゃんに吸収させるわけにはいかない。
そう思った私は依頼のある部分に目をつけた。
それは依頼住所である"イーナカギルド"だ。
イーナカギルドは奥地にある小さな町の探索者ギルドだったはず。
そこにいる探索者は引退に近い人か、お金が余って田舎暮らしがしたい変わり者ぐらいだ。
ダンジョンも小さくて、弱い魔物しか生息していない。
ダンジョンの近くには基本的に探索者ギルドが出来ると言われている。
イーナカギルドで受けても、すぐにはCランク以上の魔石は見つからないだろう。
私はスマホですぐに違う画面を操作する。
「これならすぐにイーナカギルドに行けるわ!」
私が見ていたのはいつも仕事を手配しているサイトだ。
「あとはジェット機の操縦士を予約……えっ、なんでこんな時に誰も空いていないのよ!」
所有しているジェット機ならすぐに着くと思った。
だが、予約サイトで操縦士を探しても、中々見つからなかった。
お金を何に使うか困って買ったのが、このジェット機だ。なのにここでも役に立たないなら処分でもしようか。
「あー、早く行かなきゃダメなのに、新幹線って遅いじゃないの!」
私は魔石を鞄に詰めてすぐに家を出た。新幹線ならスマホで予約しながら向かうこともできる。
ここはポジティブに考えよう。
待っててねドリちゃん!
高級で良質な魔石を届けてあげるからね!
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