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122.配信者、企画が増える

 きっと誰もがこの中で一番だと思っている。


 まぁ、ほとんどが形が違うだけで良質なさつまいもだからな。


 それだけドリののびのびが効果的だってことだ。


 名無しの凡人 最近

 おい、ポテトのさつまいもおかしくないか?


 孤高の侍 最近

 キラキラ見えるのは拙者の影が薄いわけではないでござるな。


 ハタケノカカシ 最近

 黄色のさつまいもはあるけど、金のさつまいもってどういうことだ?


 犬も歩けば電信柱に当たる 最近

 これは新種のさつまいもか?


 パパを見守る人 最近

 色んなさつまいもを知っているけど見たことないかも……。


 オサレシェフ 最近

 これってすごいことじゃないのか?


 次々とコメントが流れていくのを見て、俺はポテトの手元を見る。


「本当にさつまいもか?」


『ガルルルル!』


「別にポテトを疑ったわけではないぞ!」


 実際はポテトを疑いたくなるほど、キラキラしたさつまいもに驚いている。


「きらきら!」


「うわぁー!」


 ドリと百合も目を大きく見開いて釘付けになるほど、輝いているのだ。


――金色のさつまいも


 俺も今まで見たことも聞いたこともない。


 むしろ、今さっき塗料で塗ってきましたと言われた方が納得できるレベルだ。


「じいちゃんちょっと見て!」


「なんじゃ? まだ目を開けたらダメなんじゃないか?」


「それどころじゃないからこれを見てよ!」


『ガルルルル!』


 コンテストを中止すると言われて、ポテトは唸って怒りだした。


 今すぐにでも噛みついてきそうだが、きっと今はそれどころではないだろう。


「よし、もうみんなで遊びに行くし、たくさんさつまいもチップスを作ってもらうよ!」


「えっ?」

『エッ?』


 俺の一言で時間が停止したかのように、みんな止まり出した。


 だって、それだけさつまいもが輝いているんだよ。


 時間が止まったと感じるくらい衝撃的なことだよね?


「ドリ聞いた?」


「うん!」


『ワオオオオオン!』


 ドリ達はみんなで手を繋いでクルクルと回っていた。


 どうやら金色のさつまいものことで驚いたわけではないようだ。


 そんなにみんなで遊びたかったのだろうか。


 もうちょっと遊ぶ時間を作ってあげないといけないな。


「それでじいちゃんはこれ何かわかる?」


 俺は祖父に金色のさつまいもを渡した。


 祖父はクルクルと回しながら、さつまいもをじっくりと見ていく。


「んー、黄金千貫(こがねせんがん)にしては光っているな……」


「黄金千貫?」


「こがね?」


『ワォ?』


 俺達は首を傾げる。


 ここは畑名人の祖父の出番だろう。


「黄金千貫は名前の通り黄金のイモがざくざく採れるって言われているんだが……」


「んーっと……一つだよ?」


 金色に輝くさつまいもはパッと見た感じポテトが持っている一つしかない。


 黄金千貫という品種のさつまいもがあるのだろう。


「元々デンプンの量が多くて、収穫量が多いから焼酎とかに使われることが多いな」


「さすがじいちゃんだね」


「じいじ、しゅごい!」


 頼られたことが嬉しかったのか、祖父は喜びながら胸を張っていた。


 認知症だったとしても、過去の記憶とかは覚えていたりするからな。


 祖父にとってはこれも良い経験になっているのだろう。


「でも、なんでこれだけ違うの?」


「それはワシでも知らないな。黄金千貫は品種改良されたやつだが、元は日本のさつまいもだって聞いたことがあるぞ」


 きっと突然変異したさつまいもなんだろう。


 我が家の野菜に魔力が含まれているように、さつまいもにも、もちろん魔力は含まれている。


 それが関係しているのだろうか。


 一度、聖奈達探索者に確認してもらった方が良さそうだ。


「せっかくだから苗にして育てたら、新種のさつまいもになるかもしれないな」


 今回掘り当てたのはポテトだ。


 食べるのか、苗にするのか決めるのはポテトが選択した方が良いだろう。


 祖父が言うにはさつまいもから苗を作るのは簡単らしい。


 それに金色のさつまいもを親株として使うことで、その特性をそのまま引き継がせることができると言っていた。


「ポテトはどうしたい?」


『ンー』


 ポテトは手を頭の上に置いて悩んでいた。


 きっとさつまいもチップスにして食べようか迷っているようだ。


 ポテトは食欲旺盛だから、尚更迷うのだろう。


「パパ!」


「どうした?」


 そんなポテトを見て、ドリは俺の服を引っ張っていた。


「ドリがいっちょにしょだてる」


「百合もやりたいです!」


『ワォ!?』


 どうやらドリと百合は金色のさつまいもを育ててみたいようだ。


 ただ、それには問題があった。


「今の時期から苗を作ったら早いよね?」


「ああ、そのまま保存しておいても春前には腐るかもしれないな」


 さつまいもの苗作りは大体2月や3月に行う。


 ちょうど今が秋になったばかりだから、半年近く先になってしまう。


 いくら魔力が含まれているからって、腐らずそのまま保つのかもわからない。


 普通のさつまいもなら最大で三ヶ月は保つが、魔力があったとしても四ヶ月くらいだろう。


 うちには湿度や温度を調整する倉庫がないからな。


 ただの日陰にする倉庫しかないため、ちゃんとした保存もできない。


「どの苗かもわからないしな……」


 せめて同じ苗を残しておいて、また植えればできたかもしれない。


「んー、どうしようね」


 俺と祖父で悩んでいると、心配した顔でドリ達がこっちを見ていた。


「みんなでのびのびしたら良いんじゃないか?」


 祖父は再び寒くなる前に、さつまいもを作るという案だった。


 今回のさつまいもは夏前に苗を植えて、およそ半分の二カ月でさつまいもになった。


 今から苗にして、さつまいもができるまでの時間を考慮したら寒くなるギリギリだろう。


「できるかわからんけど、やってみる価値はあるかもね?」


『ウン! ヤル!』


 どうやらポテトもやる気満々のようだ。


 俺達は再びスマホの前に立ち宣言をする。


「これから新種のさつまいもを作ります!」

「ちゅくりましゅ!」

「作ります!」

『ワン!』


 新しい畑の日記ちゃんねるにさつまいもの新種育成日記が追加された。


 そして、さつまいもコンテストは曖昧なまま幕を閉じた。

「パパ、ほんがほちい」

「本が欲しいのか?」

「うん!」

 俺はスマホの前にドリと並ぶ。

「4/20に畑の日記ちゃんねるが書籍になりました!」

「ほちいね! ほちいね!」

「公式HPではSSペーパーがついてくるって!」

「えっ!?」

「しかも、書き下ろしSSはポテトと初めて散歩に行った内容だよ!」

『フンッ!』

 ポテトは呆れた顔で俺を見ていた。

 あの時の散歩大変だったからな……。

「ぜひ、手に取っていただけると嬉しいです!」

「でしゅ!」

 俺とドリは手を振って本の紹介を終えた。


「なんかあいつら胡散臭いな」

「それでハルキは出てくるの?」

「あー、俺か? それは本を見て――」

「興味ないからいいよ」

「おい、百合待ってくれ!!」

 今日も直樹とドリの周囲はバタバタとしていた。


 発売まで……あと3日!!


他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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