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116.配信者、収穫祭を始める

 俺は準備を終えるとみんなで畑に向かうことにした。


 すでに畑にはある人物がいた。


「よっ、ちゃんと百合を連れてきたぞ」


「春樹はやっていかないのか?」


「あー、俺はまだ店の準備が忙しくてな」


 春樹は養鶏場近くにオープン予定の店の準備にバタバタとしていた。


 やっと建物ができて、今は内装を作っている段階らしい。


「パパ!」

「見てみて!」


 ドリと百合は俺達の前でクルクルと一周した。


「新しく作ってもらったの!」


「あー、最近ばあちゃんが忙しそうにしていたのはそのためか」


 ドリと百合はお揃いの花柄のツナギを着ていた。


 今までワッペンを買っては付けていたが、花柄にするにはたくさん必要だった。


 そんなドリのために祖母が花柄の布からツナギを作っていた。


「百合のも作ってもらって、ばあちゃんには無理言って悪かったね」


「ははは、あいつはそんなこと気にしとらんよ。一着も二着も変わらんって言ってたぞ。ほら俺も布が余ったからって同じだぞ!」


 お尻を俺に向けて、ニヤニヤと笑っている。


 お尻の部分だけ、花柄が縫い付けられていた。


 きっと畑作業の時に座って作業しても良いように、お尻の生地を分厚くしたのだろう。


 座ってズルズル移動しながら作業したら、お尻の布の部分だけ薄くなってくるからな。


 たまにドリが祖父のお尻と髪の毛がお揃いだと言っていた。


 祖父は気づいていなかったが、祖母はそんな祖父が傷つかないように気を使ったのだろう。


「どうだ? 直樹も羨ましいだろ?」


「あー、確かにそうだね。お尻の布が厚くなって、ポテトに噛まれても痛くなさそうだね」


「……」


 あれ?


 何か間違ったことを言ったのか?


 確かに花柄はおしゃれだけど、俺に似合うかと言ったら似合わないだろう。


 単純にお尻部分の生地が分厚くなっているのが羨ましい。


 いや、ひょっとして祖父が気づいたのかと思ったが、祖父は呆れた顔をしていた。


 どうやら祖父を傷つけなくて済んだようだ。


 そんな俺を見てポテトはニヤニヤしていた。


「いやいや、生地が厚くなったら噛んでも良いよなって顔をするなよ」


 ひょっとしたら生地を分厚くしたら、甘噛みより強く噛んできそうだ。


「そういえば、何で二人はあんなに離れているんだ?」


「あー、今日から探索者達で見回りをしてくれるらしいよ」


 遠くで聖奈と貴婦人がスマホと双眼鏡を持って見回りをしていた。


 パノラマカメラと双眼鏡を持っているのは、しっかり周囲を確認するためだろう。


 それにしても双眼鏡をすでに持っていることに驚いた。


「あー、見回りにしては違う意味がありそうだけどな……」


「そうなの?」


「まぁ、直樹が気にしていないならいいわ。じゃあ、百合を頼むな。また、桜と夜になったら迎えに行くよ」


「夜飯も食べていくよね? ばあちゃんに連絡しておくよ」


「ああ、助かる」


 そう言って春樹は養鶏場の方へ戻って行った。


「パパ!」


「ん? どうしたの?」


「おちてる」


 何か落ちているのかと思ったが、足元には何もなかった。


「何かが落ちてるの?」


「んーん、ちがう!」


 ドリは大きく首を振っていた。


「ドリちゃん、あれは落ち込んでいるんだよ」


「しょしょ! おちてる!」


 そんなドリの言葉を百合が修正するが、ドリはうまく言えないようだ。


 百合が指をさしている方を見ると、確かに貴婦人が半分くらい溶けかけていた。


「二人とも目が良いんだね」


「さすがに見えなくてもわかるよ? だって、パパとハルキって仲が良いもんね!」


「あー、確かにいつも春樹といる時は、貴婦人さんずっと見てるね」


 俺と春樹が喧嘩していないか貴婦人は心配なんだろう。


 貴婦人達が初めて家に来た時は、ちょうど春樹が帰ってきた頃で、よく言い合いをしていた。


 今は春樹とも仲良くしている。


 喧嘩するのはドリが百合どちらが可愛いか言い合う時ぐらいだ。


 結局、二人とも可愛いからそれで落ち着くけどな。


 確か貴婦人の子どもも俺達と年齢が近いって言っていた。


 きっと子どもを見ているような感覚に近いのだろう。


「それよりも早速始めようか!」


「うん!」


 ドリと百合の声が重なった。


 俺はすぐにスマホを準備して、みんなの前で挨拶をする。


「みなさん、こんにちは!」


「こんちゃ!」

「こんにちは!」


 画面に向かってみんなで手を振る。


「今から第一回収穫祭を始めます!」


「しゅーきゃくしゃい?」


「ドリちゃん、収穫祭だよ!」


「しゅーきゃくしゃい!」


 俺達は除草剤を撒かれる前に収穫を早めにすることにした。


 それが今からやる第一回収穫祭だ。


「今回はみんなで芋掘り大会をします!」


「いぇーい!」


『グルルルルル!』


 芋掘りと聞いてポテトは唸っていた。


 すでにお尻を狙いを定めて、歯をキラリと光らせている。


 きっと自分のじゃがいも畑が勝手に収穫されると勘違いしているのだろう。


「おい、ポテト! さすがにお前のじゃがいも畑のじゃがいもを収穫するわけじゃないからな?」


『ウェ!?』


 ポテトは驚いた顔をしている。


「芋掘り大会と言ったら、あれしかないでしょ」


「ああ、あれしかないな」


 俺達は畑が見えるように少し位置をズレる。


「じゃーん、秋の味覚さつまいも堀りです!」


 畑には長く伸びたツルや葉で生い茂っていた。


 この日までさつまいも堀りはしてこなかったからな。


 少し収穫するには早い気もするが問題ない。


 除草剤を撒かれるぐらいなら、今収穫するのが良いだろう。


「じゃあ、ルールを説明します!」


 俺は早速ルール説明を始めた。

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畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

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