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109.配信者、パパイヤに落ち込む

「こんなに謝っているんだし、許したらどうだ?」


『ヤッ!』


 俺はポテトに確認するが、そっぽ向いて全くイノシシを許そうとしない。


 そもそも俺達はイノシシが畑を荒らしているところを見ていない。


 荒らしているのは隣で何か卑猥な言葉を発している先生だ。


「いやーん、なおきゅんもっと視姦してー!」


「しゃかん?」


 ドリの耳を塞ごうと思ったが遅かった。


 俺の隣でドリは服の裾を引っ張りながら、視姦が何かを聞いてくる。


「あー、車と車の距離だな」


「んー、わかんにゃい!」


 どうやらドリには伝わらなかったようだ。


 なんとか誤魔化せたことにホッとしたが、ドリの教育にとって先生は悪影響だからな。


 俺はギリって睨むと顔を赤く染めていた。


 貴腐人からは雑に扱えば良いと言われたが、本当にこの接し方で合っているのだろうか。


 とりあえず静かになったから、イノシシの問題に集中できそうだ。


「それでじゃがいもが食べたくて来たのか?」


『ブヒィ!?』


 イノシシは驚いていた。


 ひょっとしたら少しおバカなんだろうか。


 じゃがいも畑に入った時点で、じゃがいもを食べに来たと普通は思うだろう。


 俺も昔から春樹にどこか抜けている人だと言われるが、そんな俺でもこのイノシシのことが心配になる。


『ハァー』


 怒っていたポテトもどこか呆れている。


 ポテトは土の中を掘ると、じゃがいもを数個取り出した。


『ワン!』


『ブッ……ブヒヒ?』


 きっと同じじゃがいも好きとして、感じる何かがあるのだろう。


 イノシシは立ち上がり、ポテトからじゃがいもを受け取っていた。


 これで仲良くなれば事件は解決するだろう。


「じゃがいもが欲しければあそこの家に来てくれ! たくさん準備してあるからさ」


 イノシシは嬉しそうに、角のような牙を抜いて踊っていた。


「イノシシの牙って簡単に抜けるんだな……それにポテトとそっくりだぞ」


 ポテトとチップスは二足立ちで踊ることもできるが、まさかイノシシも立ち上がるとは思わなかった。


「シャンシャンも!」


「ああ、シャンシャンも肩に木材担いでいたな」


 ここに住む動物はどこか人間味を感じる。


 友好的な動物が多そうだしな。


 家でじゃがいもがもらえることがわかり、特に害はなさそうだと感じた。


「じゃあ、俺達は帰るから気をつけろよ!」


 イノシシに別れを伝えて帰ろうとしたら、突然イノシシが俺に突進してきた。


 一瞬にして緊張した空気が流れてくる。


 ドリとポテトがイノシシを警戒していた。


「どっ……どうしたんだ?」


 イノシシは頭をペコペコしながら、俺の裾を咥えて引っ張っていく。


 それを見てドリとポテトも普段通りに戻った。


 いつのまにか俺のボディーガードみたいだ。


 どうやらポテトのように手が器用ではないため、俺に突撃したのだろう。


 引っ張って来たところは、柵の一番縁のところだった。


 なぜかそこだけが地面が濡れていた。


「ここに何かあったのか?」


『ブヒィ!』


 どうやら何かあったのは間違いないようだ。


「パパ、いや……」


 急にドリが俺を嫌だと言い出した。


 きっとこれは〝パパ、いや〟ではなく〝パパイヤ〟ってことだろう。


 そうでも思わないと、急な衝撃に俺の感情が耐えられない。


「パパはドリのこと好きだぞ?」


 俺はしゃがんでドリと視線を合わせる。


「うん? ドリも!」


 どうやらドリは俺のことがまだ好きなようだ。


 しっかり抱きついて離さないからな。


 それにしてもドリは何が嫌だったのだろうか。


 俺は地面に顔を近づけるとその原因がわかった。


「何か薬品ぽい臭いがする?」


 どことなく鼻の奥に刺さるような刺激臭を感じる。


『くちゃ!』


 ポテトも近づいてみると、すぐに鼻を手で塞いでいた。


「おしっこでもしたの?」


 イノシシに確認すると、首を大きく横に振っていた。


 牙を両手で持って何かをばら撒く動きをしている。


 ただ、俺には何を伝えたいのか全くわからず、首を傾げるしかできなかった。


「ドリはわかるか?」


 ドリに確認すると、どこかへ走って行った。


 やはりにおいが嫌だったのだろうか。


 ポテトもさっきよりは遠くに離れている。


 イノシシの嗅覚は犬並みと言われているが、イノシシは大丈夫のようだ。


 いや、鼻を大きく広げて牙を突っ込んでいた。


 便利な牙に驚いたが、それだと自分の口臭を直に感じることになるだろう。


 しばらくするとドリは何かを持って走ってきた。


「パパ、いや!」


 また俺が嫌だと言い出した。


 ただ、今回は何か持ってきたものを突き出してきた。


 俺は受け取るとそれをクルクルと動かしてパッケージを確認する。


「簡単除草剤?」


 ドリが持って来たのは除草剤だった。


 以前除草剤を撒こうとした時、ドリは拒否反応を示していた。


 俺が地面を指さすと、ドリやポテト、それにイノシシまで頷いていた。


 どうやら俺のじゃがいも畑は何者かに除草剤を撒かれていたようだ。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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