102.配信者、にんじんについて学ぶ
「本当にこれっておかしくないのか?」
「確かに熊も正座できるんだな」
「いやいや、そこじゃないだろ!」
俺達はテーブルを囲んで休憩することにした。
シャンシャンも大きな体でちょこんと座布団の上に正座している。
ドリと百合にとったら熊と一緒におやつが食べられて嬉しいのだろう。
ただ、ドリをチラチラ見ているところを見ると、また怒られるのではないかと思っているのだろうか。
しばらくは反省しているシャンシャンを見ることになりそうだ。
「このにんじんって俺が作ったやつだよね?」
春樹が新しいデザートとして持ってきたのはにんじんのパウンドケーキだった。
奥さんの桜と一緒にメニューを考えているらしい。
「ああ、この間もらったやつを使ってみたけど、思ったよりも糖度が高いよな」
「冬を超えてないのに珍しいこともあるんだな」
「じいちゃんどういうこと?」
「そのままの意味だぞ」
水や固体は甘ければ甘いほど凍りにくい仕組みがある。
祖父の話では0度を下回る寒い冬を乗り越えると、自分自身が凍らないように糖分を増やすらしい。
寒さが増せば増すほどにんじんの糖度は上がるため、思っているよりもにんじんは賢いようだ。
「にんにんてんしゃい!」
「ドリも天才だぞ?」
「へへへ」
ドリは天才と言われて喜んでいた。
見た目の可愛さが天才級だ。
「ねぇ、パパ私は?」
「百合ちゃんも――」
「天才だぞ!」
「ハルキには聞いてないもん!」
春樹は即答していたが、百合は俺に言ってもらえず怒っていた。
ただ、その顔は笑顔で溢れていた。
「あー、ほのぼのするな」
『グワァ』
凡人とシャンシャンはそんな子ども達を見て、お茶を啜りながら飲んでいた。
大人になって祖母に言われるまで知らなかったが、最後の一口を音を立てて吸いきることで、最後の一口まで美味しく頂いたという意味があるらしい。
どうやらシャンシャンはちゃんと礼儀を知っているようだ。
「じゃあ、俺達は作業に戻るぞ」
『グワァ!』
シャンシャンは手を合わせて春樹に礼を伝えて、ポテトの小屋作りに戻った。
「もう、色々とおかし過ぎてどこを突っ込めば良いんだ……」
春樹はなぜか頭を抱えていたが、そこまで気にすることだろうか。
俺としては裏庭で作られているポテトの小屋の方が気になる。
ちゃんとコンクリートで土台作りをしているため、思ったよりも立派な小屋になりそうだ。
出産間近のチップスのことを考えると、ある程度は大きい方が良いのだろう。
犬ってたくさん生まれる時もあるからな。
「さぁ、俺達も作業に戻るか」
「私も行っても良い?」
どうやら久しぶりにドリに会って、百合もまだ一緒にいたいのだろう。
「百合も連れてって大丈夫か?」
「ああ、俺も桜とレシピ作りするから頼むわ。百合一人だと暇になるからな」
「わかった。じゃあ、準備して行こうか!」
「キャラアゲは?」
「カラアゲはしばらくお留守番だな」
カラアゲはチップスにずっと付き添っている。
きっといつ生まれても、代わりに温められるように待機しているのだろう。
ただ、犬って卵の状態で出てこないからな。
それを伝えるのも可哀想なため、カラアゲの好きにさせている。
俺達はにんじんのパウンドケーキをチップスとカラアゲに持って行ってから、畑作業に戻ることにした。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
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