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100.配信者、ツッコミ役になる

 俺達は材料を買って家に帰ることにした。


 木材に関しては、量が多いためホームセンター側が届けてくれるらしい。


 ただ、何度も住所を確認されて、本当に住んでいるのかと聞かれた。


 やはり田舎過ぎてそんなところに人が住んでいるとは思わなかったのだろう。


 ドリを見つけた時に警察署に迷子の電話したら、イタズラ電話だと間違われたこともあったからな。


「ばあちゃん帰ってきたよ!」


「たーいーまー!」


「たーだーいーまーだぞ?」


「たーいーまー!」


 凡人とドリは隣でただいまの練習をしている。


 いつもはすぐに祖母が顔を出すが、どこかに出かけているのだろうか。


 少し心配になりながらも、俺達は洗面台に向かった。


「ごろごろー」


「おえおえー」


 みんなでうがいをしていると、遅れて祖母が顔を出してきた。


「あら、おかえりなさい。みんな裏庭にいるわよ」


「裏庭?」


 家の庭は広いため、入り口から居間で使っている部屋まである。


 聖奈が洗濯中のドリの服が盗まれないようにと、探索者ギルドができてからは、玄関側には何も置かなくなった。


 俺達は居間の方へ向かうと、普通の家では見ない光景を目にした。


「おいおい、熊がなぜ家にいるんだよ!?」


「シャンシャンさんが松茸を持ってきたんですよ」


「へっ……?」


 近くのテーブルには松茸が置いてあった。


 直接置いてあるが、一応松茸って高級な食材だったはず。


 シャンシャンは祖父とポテトと共に、縁側に腰をかけてポテトチップスを食べていた。


 どこかおじさん達が飲み屋で話しているような雰囲気だ。


 いや、熊って縁側に座れるのか?


 そう思うほど自然に足を組んで、ゆったりとしている。


 まぁ、ポテトも脚を組めるから、そういう熊もいるのだろう。


 昔自転車を乗っているクマをテレビで見たこともあるからな。


「シャーンシャン!」


 ドリはそんなシャンシャンの背中に抱きついていた。


「おっ、ドリおかえり」


『ワン!』


「たーらーいーまー!」


「ははは、それはタロ芋ぽいな」


『いも!?』


 芋という言葉を聞いてポテトは尻尾を大きく振っていた。


 今も鳴き声が芋に聞こえてくるぐらい、本当に芋好きなのは変わらないようだ。


 そういえば、聖奈がシャンシャンの服のサイズを測ると言っていたが、終わったのだろうか。


 松茸のお礼も含めてシャンシャンに声をかけることにした。


「あっ、シャンシャンさん――」


『グワァ?』


「あっ、すみません」


 ついつい熊の迫力があり過ぎて謝ってしまった。


 世間では熊は可愛いイメージで、キャラクターなどに使われることが多い。


 ただ、実物はものすごく怖い。


 俺よりも普通に大きいからな。


「シャンシャン、メッ!」


『グワァ!?』


「メッ! だよ?」


『グッ……』


「メッ! メッ!」


『グゥーン』


 そんなシャンシャンをドリは叱っていた。


 子どもに怒られる熊って、何かの童話を目の前で見ているようだ。


「あっ、皆さんもう帰ってきてたんですね」


 振り返るとそこにはメジャーを持った聖奈がいた。


「お祖母様とメジャーを探していたんです」

 

 たしかに2m以上を測定できる工具用のメジャーって家のどこにあるのか覚えがない。


 普通の洋裁に使用するメジャーで計れなかったのだろう。


「ではお祖母様行きますよ」


「ええ」


 祖母にメジャーを渡すと、聖奈は走ってシャンシャンの元へ近づいた。


 シャンシャンもそれに気づいたのだろう。


 縁側にゆったりと座っていたのに、いつのまにか庭に降りて仁王立ちしている。


「さぁ、久しぶりの力比べよ」


 睨み合う人間と熊一匹は腰を落とし、一気に間合いを詰めた。


「負けないわよ!」


『グァ!』


 お互いの手を合わせて、押し合いをしていた。


 あっ、これは手押し相撲か。


「おー! のこったのこった!」

「がんば!」

『ワーン!』


 みんな相撲を見ているように応援しているが、熊と手押し相撲って普通に考えて危ない。


「お祖母様、今がチャンスです!」


「はい!」


 祖母はその隙間を潜って、シャンシャンの体型をメジャーで測定していく。


 なんというのか、あれはあれで効率が悪そうな気がする。


 正直見ていて祖母が突き飛ばされないかと、俺はハラハラしていた。


『グゥ……』


 いや、熊のシャンシャンも祖母を体で押さないか気にしていた。


 思ったよりも見た目とは違って、優しい熊のようだ。


「聖奈さん、測定終わりました」


「よし、シャンシャンごめんね」


 そう言って聖奈はシャンシャンの手を握ると、そのまま持ち上げる。


 あれ……?


 これは手押し相撲じゃなくて違う競技だったのか?


 シャンシャンの体は浮いていた。まるでチアリーディングの技を見ているようだ。


 その後、投げ飛ばされたシャンシャンは悔しそうに地面を叩いた。


 うん……。


 やはり熊は力は強いのだろう。


 次第に地面が抉れていた。


 本当に祖母が巻き込まれなくてよかったと思う。


 ただ、測定方法はいくらでもあっただろう。


「ドリ、ちょっとシャンシャンにこれを言ってきて?」


 俺はドリに耳打ちをすると、急いでシャンシャンの元へ走っていく。


『グワァ?』


 シャンシャンは近づいたドリを見ていた。


「シャンシャン、きをちゅけ!」


『グワァ!』


 急いでシャンシャンは立ち上がり、背筋をまっすぐ伸ばした。


 遠目で見ても俺よりも身長は高いようだ。


 きっと大きさ的には凡人と同じぐらいだろう。


「ばんじゃい!」


『グワァ!』


 ドリに言われた通りに、シャンシャンは両手を上げた。


「ドリならわざわざ相撲をしなくても、測れたんじゃないか?」


「はっ!?」

「えっ!?」

『ワオ!?』


 どうやらみんなは気づかなかったらしい。


「ははは、今日はパパさんがしっかりしているな」


 そんな中、遠くで見ていた凡人は腹を抱えて笑っていた。


「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

カクヨムコン受賞

『薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう』
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