表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/163

99.配信者、ファーストキスは砂の味

 俺達は買う予定の種や球根を持ってレジに向かっていると、突然ドリが走り出した。


「おっ、おい! どこに行くんだ!?」


 その後ろを俺が急いで追いかける。


 相変わらず興味があるものを見つけると、走って行ってしまうのは変わらないようだ。


 ホームセンターのため、特に人とぶつかることはない。


 ただ、周囲には大きな木材があったりなど危険なものは多い。


 ドリならぶつかった瞬間に、棚を壊してしまいそうだしな。


「ドリ、止まれ!」


 俺の声に反応して、ドリは急に止まった。


 前にショッピングモールで走った時に注意したため、それを思い出したのだろう。


 ただ、急に止まったら危ないのも伝えておくべきだった。


「おっとととと」


 ドリを追いかけていた俺が急に止まれないのだ。


 そのままドリに突撃しそうになったタイミングで、ドリは何かが気になったのかその場を動いた。


「ちょ、急に動くのは――」


「うん?」


 ドリを抱きかかえて、減速すれば良いと思っていた。


 ただ、目の前にドリがいないとなれば、俺はそのまま勢いを止めれないでいた。


 そんな俺の服をドリがタイミングよく掴んでいた。


「だいじーぶ?」


 大丈夫かと言ったら大丈夫だ。


 俺を呼ぶために掴んだはずだが、ちょうどタイミングが合って転ばずに済んだ。


 ただ、足がギリギリついたところで体が浮いているため、姿勢を戻そうにも戻せない。


 感覚的には斜め45°で姿勢を保てているため、あの有名なダンスを再現しているみたいだ。


 今のところゆっくり手を離してもらうか、引っ張ってもらうしかないだろう。


「ドリ、ゆっくり手を緩めていくんだぞ?」


「えっさ!」


 ドリは大きな声で返事をした。


 だが、敬礼のポーズをしようとして、そのまま俺の服を掴んでいた手を離してしまった。


「ぬぁ!?」


 そのまま落下する俺の体。


 急いで手を前に突き出すが、間に合いそうになさそうだ。


 目を閉じて受け身を取る準備をする。


「ふぬぬぬ!」


 そろそろ痛みが来るかと思ったが、一向に体は痛くない。


 むしろ何かに引っ張ってもらっているようだ。


「パーパー!」


 どうやら気づいたドリがすぐに支えたのだろう。


 相変わらず力強いドリに、魔物の力が人間とは桁外れなのを思い出す。


 そりゃー、熊も力比べしちゃうよ。


 だが、足が離れて微妙に浮いているため、俺は床にキスしている状態だった。


 何度も何度も床にフレンチキス。


 ちゃんと掃除をしていない床なら、今頃俺の口は細菌だらけだ。


「二人ともそんなところで何してるんだ?」


 そんな俺達のところに凡人がやってきた。


 店の中で子どもに支えられながら、床にキスをしていたら誰だって疑問に思うだろう。


 俺だってわけがわからない。


「凡人さん、助けてください!」


「ああ、ドリちゃん手を離して」


「うん!」


 ドリは言われた通りに手を離すと、俺はそのまま床に落ちた。


「ふぇ!?」


 つい変な声が出てしまった。


 ただ、俺のファーストキスはホームセンターの床になってしまった。


 いや、これはファーストキスではない。


 ドリと百合から頬にキスをしてもらったため、あれがファーストキスだ。


 大事な何かを失ったものの怪我をせずに済んだ。


 俺は心の中でそう思うことにした。


「それでドリは何を急いでいたんだ?」


「シャンシャン!」


「シャンシャン?」


 シャンシャンとはあの熊のことだろうか。


 ただ、周囲を見渡してもどこにも熊の要素は一切見当たらない。


 目の前にあるのは、俺達がよく着ている作業着だ。


「まさか……これを着せるってことか?」


「うん!」


 以前、普通の熊とシャンシャンの見分けがつかないため、目印が欲しいと思っていた。


 俺の中では、シャンシャンの存在が分かれば良いと思うぐらいだった。


 力比べしているドリや聖奈だったら、鈴程度ならつけるのは可能だろうと思っていた。


 ただ、熊に作業着を着させることは俺にはできない気がする。


「あいつに合うサイズがあるか?」


 凡人の言う通り、そもそも熊の服のサイズがわからない。


「3Lでも入る気がしないよ?」


 店舗にあった一番大きなサイズを取り出してみたが、シャンシャンの方が腕周りは大きい。


「にゃいの……?」


 犬や猫なら専門のお店があるだろう。


 ただ、熊ってなるとオーダーメイドになりそうだ。


 ドリはシャンシャン用の作業着がないことに落ち込んでいた。


「んー、ないから仕方ない――」


「あー、今肥料に相談したら作れるって言ってるぞ」


「へっ!?」


 凡人はスマホで畑の日記ちゃんねるのファンクラブ掲示板に書き込みをしていたらしい。


 その中で動物専門の服を作っている人がいた。


 ペットウェアデザイナーという名前の職業らしい。


 あまり聞いたことのない職業だが、肥料にはたくさんの人がいる。


「向こうもぜひ作ってみたいって言ってるから、聖女を通して依頼しておくぞ」


 そう言って凡人は聖女に連絡していた。


「シャンシャンお揃い?」


「あー、そうなるかな?」


 どうやら俺達は熊とお揃いの作業着を着ることになるらしい。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍、電子書籍発売中★

畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

カクヨムコン受賞

『薬剤師の俺、ゲームの悪役に転生したみたいだがスキルが薬師で何とかなりそう』
ここをタップ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ