7.萩原教授-夢の相談を-
全50話の予定です
日曜~木曜は1話ずつ、金曜と土曜は2話をアップ予定です(例外あり)
翌日、和也は幸いにも[夢]も見ずに、千歳のモーニングコールのおかげもあって何とか無事に朝起きる事が出来た。午前中の講義を受講して、予定通りにお昼を二人でパスタ屋で済ませてから目的の大学に向かう事にする。
今日訪ねる予定の萩原教授というのは、和也たちの学校から近くにある国立の総合大学で、理論物理学の教鞭をとっている人物である。だが、いわゆるオカルト的なものも造詣が深い。それは、一見すると科学と非科学、相反するものに見えそうだが[どちらも一貫して理論立てたものの上に成り立っている]という意見の持ち主である。
そんな教授に会いに、自分たちの学校の道路とほぼ平行に走っている幹線道路の路線バスに乗ってその大学に向かう。とは言え、途中のパスタ屋に寄ったので、実際にはほんの二つ停留所の先だが。
途中、正門前で警備員に来校の意思を伝え、通してもらう。
ここは以前に一度訪ねているので、すんなりと目的の棟に向かう事が出来、建物の階段を上って三階の目的地を目指す。
[コンコン]
「どうぞ」
と中から声がしたので、
「失礼します」
そう言いながら部屋の中に入ると、相変わらず何に使うのかさっぱり分からない木の道具やら鉄の器なんかがあちらこちらにおいてあり、それを避けながら前に進む。
それでも何とか机があるであろうところまで来ると、
「おお、きみたちかね」
「その節は大変お世話になりました。そのあとご挨拶にも訪れずに大変申し訳ありませんでした」
和也はそう言って山之辺教授からの手紙を手渡す。するとこれも相変わらず受け取った手紙は開かずに机に置き、
「それはいい。で、あれからどうなったね?」
と教授が問うので、
「ええ、あの時に先生がおっしゃったとおり、未来視の、それも人の意識をコントロール出来る人間の犯行でした」
前回、萩原教授に相談した後日談を伝える。
自分が過去に干渉出来る能力[過去視]を獲得している事、未来に干渉する事が出来る能力[未来視]を持った犯人は、実は自分の幼なじみであった事、そして、その幼なじみとの出会いのきっかけを、実際に能力を使用して過去に遡り消した事、その結果として、彼は自分たちの目の前からいなくなった事。
一連の事件があってからもう一年は経つのだが、未だに自分自身でもこれらの能力の事は信じられないという点も追加して、順を追って説明を続けた。
「なるほどな、そういう事はもっと早く報告してくれ。研究対象に出来るではないか」
そう言う教授に、
「すみません、出来ればもう無かった事にしたくて」
和也は頭を下げる。
すると、
「なに、ただの冗談だよ。これ以上[変人]呼ばわりされたくはないからな。で、今度は何の用だね?」
表情を一つも崩さずにそう問いかける。
――この人は本当に顔色変えないな。この様子だと多分、生徒を叱る時もこんな様子なんだろうな。
和也はそんな事を思いながら、
「実は、今悩まされている、私が体験している[夢]の話でして」
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