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1.プロローグ-人を探すその男-

全50話の予定です


前作を読まなくても内容は追い付けると思いますが、もし機会がありましたら前作も読んで頂けると幸いです


前作「ヒューマン 1 -繰り返される事件と繰り返す時間遡行-」

https://ncode.syosetu.com/n2996hx/


日曜~木曜は1話ずつ、金曜と土曜は2話をアップ予定です


 その男はとある人物を探している。その人との関係は、今ではどんな関係だったのかかなりぼんやりしてしまったが[探さなければならない]という義務感のようなもので、とある人物を探している。


 探す為に、ずいぶんと試行錯誤をした。だが、一度失った関係性はなかなか修正出来るものではないのも事実である。今では、その探している人物というのはどんな人なのか、それすらだんだんとあやふやになりつつある。普通はそんな人物の事は気にしない。そこまで覚えていないという事は、自分にとってほぼ関わり合いがないであろうからだ。だが、その男は捜すのを止めない。


 とにかくひたすら探している。そう、それは木に咲く花の枝をひとつひとつ潰していくような、そんな作業だ。一つの枝に手を伸ばしては、違うと分かると手を引っ込める。そして次の枝にまた手を伸ばして、という気の遠くなるような作業を黙々とこなしている。ある意味これはその男の、探す事への[執念]そういったものなのかも知れない。


 だが、それも今日で終わりだ。


 これは、とある街での出来事。


 その男は中心街を歩いていた。この季節にしては場違いな、フード付きのパーカーを目深に羽織っているので、顔全体の表情までは読み取る事は出来ず、口元の表情くらいが分かる程度である。


 そこに前から三男組みの男たちが話しながら近づいて来る。三人組は見た目が少しガラの悪そうな男たちである。どうやら三人ともその男が正面から近づいているのには気が付いていないようで、お互いに生産性のない内容の話をループさせて、おのおのがでかい声で喋りながら真っ直ぐ彼に向かっていた。


 その男にすれば、自分が避けるか、声を挙げるかしなければ多分ぶつかるだろう。相手の外見で判断すれば、自分が避けたほうが丸く収まる、そんな感じの相手だ。だが、その男は[そんな事はどうでもいい]と言わんばかりに何かに集中している様子である。


 と、間もなく、


「やっと……見つけた」


 そうつぶやくとほぼ同時に三人組たちの一人とぶつかった。


「おい、お前! どこを見て歩いているんだ!」


 ぶつかられた男が怒鳴る。いきなり相手を怒鳴りつけるところからして、どうやら見た目どおりの人物のようだ。


 だが、ぶつかったその男は口元がニヤついていた。彼にしてみれば、やっと目的のものが見つかったのだから無理もない。もちろん三人組のほうにしてみれば、そんな事情は分かるはずもないが。


「おい、聞いてんのか!?」


 その男を、三人は取り囲むようにして退路を断つ。だが、その男は顔に笑みを貼り付けたまま、


「見つけた……見つけたぞ」


 そう繰り返すだけだ。


「てめー、聞いてんのかっつってんだろうが!!」


 別の一人がその男の肩を掴もうとする。


 すると、


「消えた!?」


 そう、三人組の目の前からスーっといなくなったのだ。これには流石に動揺を隠せないようだ。あわてて三人とも辺りを見回すが、やはり何処にもその男の姿形はない。


「お、おい、お前らも見ただろ? 俺がぶつかられんの」


「ああ、確かに見た」


「って言うか、今のは何なんだ?」


 三人とも口々にわめきだす、が、やはりその男の姿は、どこを探しても綺麗さっぱりといなくなっていた。


「もしかして幽霊の類か? でも当たった感覚はあったんだ」


 ぶつかられた男が動揺しながら二人にそう告げる。


「こんな真昼間にか? 冗談じゃあない」


 二人とも動揺していた。


「おいっ、もう気持ち悪いから行こうぜ」


 そう言ってその場から立ち去ろうとする。念のために、と、男たちのうちの一人がもう一度辺りを見回すが、やはりどこにも消えたその男の形跡はないようだ。


全50話の予定です

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