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「さて、それじゃあ行くぞ! アドソープション!」
ミストルティンのステータスを開いたまま俺はそう口にする。
「おおっ」
すると俺の手の中のミストルティンが僅かに熱を発したかと思うと、頭の中で声がした。
『アイテム:魔法灯 アドソープション完了――EXPを2獲得――得られた知識をマスターに転送いたします』
機械的な少女のような声。
『機器共有のため初期設定を開始します――完了しました』
そしてその声と同時に俺の脳内に今まで存在しなかった知識が流れ込んできたのである。
「まさか『学習』ってミストルティン自身だけじゃなく俺も学習できるとはね」
事実さっきまで全くわからなかったランプ――正式名称『魔法灯』の使い方を今は完璧に理解している。
「こうやって、こう」
壁に掛かった魔法灯に掌を向けて握るような動作をする。
すると部屋を照らしていた灯りが全て消え、もう一度同じ動作をすると灯りが点く。
「それでこうすると」
次は同じように掌を向け指を一本だけ曲げる。
こんどは目の前の魔法灯だけ消灯し他は消えない。
「コレは便利だな。さてと」
俺はミストルティンを目線まで持ち上げて見つめステータスを確認する。
『
ミストルティン
レベル:1
EXP:2 NEXT 10
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:魔法灯 2:なし
』
先ほど頭に聞こえた声の通り経験値であるEXPが2増え、アイテムスロットに『魔法灯』が追加されていた。
「よし。それじゃあ次は」
たぶん初めてミストルティンを使ったときにそうなるように仕組まれていたのだろう。
魔法灯の使い方を理解する前にミストルティン自身の使い方も同じように俺には伝わって来た。
「形態変化を試してみよう」
少し恥ずかしいがどうせ誰も見ていない。
それにここは異世界で剣と魔法の世界だ。
こんなことを口走っていても『中二乙!』とも言われまい。
「ミストルティン、モードチェンジ!」
俺は無駄にポーズを決めながら小枝を掲げた。
『了解しました――魔法灯モードへ移行します』
アドソープションした時と同じ機械的な声が脳内に響く。
と同時に手の中の小枝が一瞬で壁に掛かっている魔法灯と同じものへ姿を変えた。
「おおっと」
元々壁掛け用の魔法灯は持ち手というものが存在しない。
なので俺は変化したそれを落としかけ、慌てて抱きしめるように受け止めた。