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最終話 『幸せになるその日まで……ずっと』

 そもそもこの村の住民たちは誰も彼も王国から追放されたり王国を見限った者ばかりである。

 しかも勇者クェンジーと同郷の俺が住んでいる上に、クェンジーからは俺の人となりがかなり上方修正されて伝わっているらしく、北方国家としてもそんな俺たちと敵対するのは避けたいという思惑があるのだろう。


「ミストルティンもずいぶんレベルアップしたけど、俺自身はケンジと違って普通の人間なんだけどなぁ」

「普通……ですかね? 前に見たときよりもそのミストルティンとかいうチートアイテムの加護がずいぶんパワーアップしてるじゃ無いですか」


 ケンジは俺の胸元を指さして呆れたように告げる。

 そこにある胸ポケットからは小枝状態のミストルティンがちょこんと枝先をのぞかせていた。


「加護って……」

「僕のレーヴァテインの力と経験を吸収した上に、僕の知らない聖剣の能力まで引き出すんだもんなぁ。チートですよチート」

「いや、まさか聖剣もアドソープション出来るとは思わなかったんだよ」


 一月前、帰り際に俺は『試しに』と彼の持つ聖剣レーヴァテインをアドソープションさせて貰ったのだ。

 だが結果は俺の予想を超えていた。


「名前もなんか聖剣ミストルティンとかになってるし、アイテムスロットに固定されて消去できないしさ」


 聖剣となったミストルティンは、どうやらアドソープションした武器全てに変化することが可能らしい。

 しかも性能回復スキルのおかげでその武器が最高性能だった頃の能力を発揮することが出来てしまうのだ。


 ただし聖剣状態のミストルティンは俺以外は使うことが出来ない。

 他の形状であれば他人に貸すことも可能なのだが。


 現に今のミストルティンは最大で四つのアイテムに同時に変形できる。

 村の人たちと共同作業をするときは皆にそれを貸すことでかなりの効率化が計れるようになっているのだが、聖剣として使う場合はそれが出来ないのだ。


「とにかくそんな力を持つ人を相手になんて誰もしたくないんですよ」


 ケンジはそう言ってから俺がサインした書類といくつかの手紙を机の上から取り上げ、書類は丸めて卒業証書の入れ物みたいなものに仕舞うと椅子から立ち上がる。

 そして「短い間でしたが」と片手を差し出した。


 俺はその手を握り返すと改めて頼み事を口にする。


「元の世界に戻ったらその手紙の投函をたのんだよ」

「はい。任せてください」


 手紙の宛先は会社と住んでいたアパートの管理会社、そして例の占い師だ。

 占い師だけは住所がわからなかったので、俺がよく見かけていた場所をケンジに伝え、いたら渡してくれと頼んだ。


「それではルリジオンさんもお元気で」

「勇者様が無事帰れることを祈ってるぜ」


 俺に続いてルリジオンと握手を交わしたケンジはそのまま数歩後ろに下がると『それではさようならです。転移!』と呟く。

 すると彼の足下に小さな魔方陣が浮かび、同時に彼の体が淡い光に包まれたかと思うと光と共に消え去った。


「転移魔法まで使えるとか。やっぱりアイツはチート過ぎますよ」


 一度行ったことのある場所でイメージ出来る所にしか跳べないらしいが、あの力があれば便利だろうなとはおもう。

 だけどあれはアイテムでは無く彼自身の勇者の力なのでアドソープションは出来ない。


「でもまぁアイツもこれでいなくなったわけだし。この世界の勇者様はお前だけになるわけだ」

「からかわないでくださいよ。俺なんて此奴が無ければ平凡以下の男でしかないんですから」


 俺はそう応えながら胸ポケットからミストルティンを取り出した。


 あの日突然おかしな占い師にワンコインで押しつけられた小枝。

 俺を幸せに導く小枝はミストルティンとなり、たしかに俺を今も、そしてこれからも導いていってくれるだろう。


「これからもよろしく、ミストルティン」


 ミストルティンの枝先をつっつきながらそう口にし――


『はいマスター。私はいつも、いつまでも貴方様と共に』


 帰ってくるとは思わなかった声に思わず小枝を取り落としかけ――


『幸せになるその日まで……ずっと』


 その小さな幸せを逃がさないようにと優しく両手で抱きしめたのだった。



~Fin~

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。


これにてミストルティンのお話はいったん完結となります。

後半駆け足になってしまいましたが、なんとか最後まで書ききることが出来ました。


次回作を書くモチベーションのためにも少しでも「おもしろい」「たのしかった」「もう少し続きが読みたかった」「応援したい」と感じていただけましたら

↓下の方にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして評価で応援をおねがいします。



※ お 願 い ※


今作を『アルファポリス次世代ファンタジーカップ』に応募しました。

タイトルを少し変更して、内容もそのままでは文字数が足りないので中盤以降加筆していく予定です。

ですので出来ましたら↓こちら↓もブックマークして応援してもらえると嬉しいです。

下方に直接飛べるリンクも貼っておきますのでよろしくお願いいたします。


「異世界召喚されたけど無能扱いされて追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境を開拓しようと思います」

https://www.alphapolis.co.jp/novel/409404883/365622638

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[良い点] イライラしなくて楽しい作品でした [気になる点] なし [一言] 妙に凝ったり妙なひねりが無く真に楽しく読ませていただきました
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