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召喚勇者とミストルティン  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!


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 衝撃的な報告だけ残し勇者クェンジーことケンジは「戦後処理があるので」と帰って行ってから一ヶ月ほど経った。


 ときおり届く報告によれば王国は北方の国々による分割統治ではなく、大まかに五つの地域に分けて、それぞれに領主を置き自治領として存続することになったという。


 ただし戦争を引き起こした王族と、積極的にそれを後押しした貴族たちは一部を除いて重い罪が科せられた。

 国王やストルトスをはじめとした戦争推進派は全員極刑に処されたとも。


 逆に戦争犯罪を犯してない兵士や国に逆らえず従った人々には重い罪は科せられないことになったという


 穏便な解決に至った理由の一つは、今回の戦争による被害者が少なかったことが大きい。


 初期こそ王国側にも侵攻を受けた側にもそれなりの死傷者や被害が出たものの、勇者クェンジーが参戦してからの被害はごく僅かにおさられることになった。

 というのもクェンジーはその有り余るチート能力を使ってあっという間に王国軍を一人の死者も出さずに無力化させていったからである。


「魔物とかなら躊躇無く倒せたんですけど、流石に人殺しは出来なくて……」


 最初に開拓村を訪れた彼からその話を聞いたとき、俺は心底ホッとしたのを覚えている。

 なぜなら俺は、彼が戦争の最中に強大な力を振るって王国軍の兵士の命を奪ったものと思っていたからだ。


「人を殺してたら日本に戻った後も一生後悔しそうだったんで……でもどうしても許せなくて再起不能にした奴らはいますけどね」


 異世界で力を得たら人を殺すことに躊躇してはいけないだの、人殺しをためらう主人公が嫌だの言う人がいるが、俺は現代日本で普通に生まれ育った人間なら当たり前だろうと思っている。


 だけどケンジはこの戦争の処理が終わった後、日本に帰るのだ。

 サイコパスでも無い限り、異世界であろうとなかろうと人を殺したという記憶は彼をさいなむに違いない。

 きっと俺と違って彼には日本に彼を待っている人もいるのだろうし、そんな人たちにもう一度会うためにも彼の手が血に汚れて無くて良かったと俺は心底安堵した。


「といっても俺はきっといつか決断しなきゃ行けない日もくるんだろうな」


 もちろん異世界には異世界のルールがある。

 そこで暮らし続けるならいつかはその壁を乗り越えなければならない日はくるだろう。


 元の世界へ戻る手段を失った俺はこの世界でこれから一生暮らしていかなくちゃ行けない。

 自分たちの生活を守るためには手を汚すことを躊躇わない決意が必要だ。


「責任重大だな」

「すみません。迷惑でしたか?」


 久々に顔を出したケンジが俺の顔色をうかがうようにそう口にする。

 今日、彼はこの開拓村の今後について、戦後処理会議で決まったことを伝えに来てくれていた。


 王国から追放同然の状態だったとはいえ、この村にはバスラール王国の姫であるリリエールがいるのだ。

 もし彼らがリリエールを差し出せと言うなら、俺たちは全力でそれに対抗すると村人全員が心に決めていた。


「本当だったらルリジオンさんが適任なんだろうけど……」

「俺様は神官だから忙しいんだよ。それにそういう雑事はリュウジの方が上手くこなせるだろ?」

「雑事って……自治領領主の仕事って雑事の一言で済ませられるもんなんですか?」

「知らねぇよ。そんなもんやったことねぇんだから」


 ケンジが伝えに来たのは俺がこの開拓村の領主に決まったことと、リリエールを正式にルリジオンの養女にすることで王族としての地位を無くすことであった。



次話で完結です。


すみません

諸事情で間に合いそうになく、次話は明日25日のお昼更新となります。


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