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 畑は村の南端に作ってある。


 村の周囲を囲む壁は今後拡張していく予定になっているが、現状ではそれほど広い畑を作る余裕は無い。

 なので本格的に作物を作るというよりは、俺が『鑑定』して栽培が可能だろうと判断したものの試験栽培をしている程度ではあった。


「ジータさん」

「おう、リュウジ君じゃないか。見回りご苦労さん」

「これ、ブレドさんからです」

「ブレドから? ああ、弁当か。忘れてた」


 ジータは俺の手から麻袋を受け取り中をのぞき込むと「面倒掛けてすまなかったね」と謝罪を口にする。

 俺は両手を振って「気にしないでください」と笑い返すと畑の奥に目を向ける。


 そこには彼の息子であるロールともう一人見知った顔があった。


「リュウ兄ちゃんも手伝いに来てくれたの?」

「リュウ。見て見て! こんなにおっきいお芋が出来たんだよ!」


 両手を土まみれにして立派なサツマイモを掲げて自慢げに見せつけてくるのはリリエールだ。

 彼女は自分より年下のロールがこの村にやってきたことに一番喜んでいて、まるで弟のように思っているらしく一緒に遊んでいるのをよく見かける。


「凄いな」

「でしょう?」


 俺はリリエールからサツマイモを受け取ると土を払う。

 もちろんこの世界には薩摩もないしサツマイモなんてものはないのだが、どうやら俺自身が唯一授かったスキルである言語翻訳スキルが自動的に前の世界の似たものに翻訳してくれるらしい。


「植えてまだ一月位なのに」


 異世界サツマイモを偶然見つけたのは狩りの最中だった。

 土を一心不乱に掘っているイノシシのような獣を狩ったあと、ヤツが掘っていた穴を覗き込んだときに半分囓られていたそれを見つけたのである。


「ここら辺は土も気候もいいからね」

「そういう問題ですかね」

「それでも普通はこんなに早くは育たないというのには同意だね」


 この開拓村がある地域は季節の変化はかなり少ない。

 辿り着いて半年経つが気温の変化は上下五度程度しか変わってないように感じる。

 基本的に常春の気候で、時々肌寒い日はあるものの厚着は必要としないと先住民であるルリジオンは言っていた。


「たぶんこの辺りに魔物が多いのと何かしら関係があるのかも知れないねぇ」


 基本的に過ごしやすい土地ではある。

 だがその代わりに周囲の森には多数の魔物が住み着いているため、常に警戒を怠れないという最大の問題は残っていた。


「魔素が濃いとかなんとかルリジオンさんは言ってましたけど」

「魔素ってのは栄養素の一つだからね。それが濃いと作物や動物の成長速度が上がるってのは間違いないがね」

「濃すぎると魔物になってしまう可能性も上がるんでしたっけ」


 森の中に蠢く魔物は基本的に自然繁殖したものだ。

 俺がこの村に来て最初に倒したオーク一家のように魔物も交配し子供を産み育てる。

 しかしその魔物自体が最初に生まれる原因は魔素によって動物や植物が突然変異するせいだと言われていた。


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