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「成功だ」
背後から聞こえてきた声に俺は慌てて振り返る。
しかしそこには先ほどまで歩いてきた道も建物もやはり見当たらない。
「何が起こったんだ」
思わず呟いた俺の目に映るのは、石造りの部屋で。
薄暗い室内を部屋の四隅に並んだ燭台が照らしている。
どこか陰鬱とした空気の漂う室内には四人の人間がいて俺を見つめていた。
「えっと……ここはどこですか?」
俺はその中の一人に恐る恐る尋ねてみる。
顔立ちからすると西洋人っぽいので日本語は通じるのだろうか。
「ここは召喚の間でございます勇者様」
「召喚……?」
「此度は我々の呼びかけに応えていただき、感謝いたします」
そう言って深く頭を下げる四人の男たち。
彼らの姿はアニメや映画、それかイベントでしか見たことが無いような。
いわゆる剣と魔法の世界における魔法使いそのものの姿であった。
*****
結論から言おう。
俺は物語でよくある『勇者召喚の儀式』によって召喚された。
召喚したのはバスラール王国という国で。
王国はここ何年も魔王による侵略を受け続けているとか。
魔王。
そう魔王がこの世界にはいるらしい。
魔王はその力によってバスラール王国周辺の国々を配下に治め。
その国々を操り王国に幾度も攻め入って来ていた。
王国は他の国々に比べ豊かな土地で軍備も豊富で精強だった。
なので今までその侵攻をはねのけ続けていたのだが。
「さすがに四方から攻められては我が国がいくら精強であろうとも限界が来てしまうのは必然」
むしろよく何年も持ち堪えたと誉めるべきだろう。
「そこで我々はこの国の窮地を救うという伝説の勇者様を召喚することにしたのです」
そして俺がここにいるというわけだ。
「俺が勇者?」
「はい。勇者召喚の儀式で召喚されたのですから紛うこと無き勇者様でございましょう」
ここまでの話を聞かせてくれたのは、今俺の横に立っている老齢の男である。
ストルトスと名乗ったその男はこの国最強の宮廷魔道士らしい。
「我らの導きに応じ、魔王の脅威から我らを救いたもう勇者よ。そちの名を聞かせてはもらえまいか?」
一段も二段も高い壇上から声が掛かる。
素人目に見ても豪奢な壇上。
そこにあるのは金ぴかの王座。
「名前ですか?」
「名を聞かぬと何かと不便であろう」
その玉座に座るのは四十代位の立派な顎髭を蓄えた金髪碧眼の男だ。
道すがらストルトスからその名は聞かされていた。
彼がこの国の王、シェイム・バスラールである。