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一つはノコギリ。
もう一つは大きめの金鎚で、どちらも古びてはいるが綺麗に錆は落とされている。
「今日は兄ちゃんのベッドを作ろうと思ってんだよ」
「なるほど。それじゃあ早速やりますね」
俺は胸ポケットからミストルティンを取り出すと、まずはステータス画面を表示する。
『
ミストルティン
レベル:2
EXP:19 NEXT 20
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:魔法灯 2:古びた短剣
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得
』
そしてアイテムスロットに並ぶ二つのアイテムを順番に指で触りながら「クリア」と頭の中で念じる。
これでアイテムスロットは両方とも「なし」に戻った。
「いちいち空けないといけないのは面倒だけど勝手に入れ替わられても困るしね」
次に俺はノコギリにミストルティンの先端を当ててスキルを発動させる。
「アドソープション!」
発動と同時に脳内に聞き慣れた声が響く。
『アイテム:ノコギリ アドソープション完了――EXPを9獲得――得られた知識と経験をマスターに転送いたします』
思ったより多いの経験値が得られたことに少し驚く。
同時に流れ込んできた経験によると、この開拓村に新品で持ち込まれてからこのノコギリは余り使われてなかったようで。
それなのに例の短剣よりも多い経験値が得られた理由は簡単だ。
「経験取得のスキルのおかげだな」
どうも『経験取得スキル』はアドソープションしたものの経験を得るだけでなく、同時にそれを経験値にプラスしてくれるらしい。
正直、かなり経験を積んでいた短剣で8しか経験値がもらえなかったことで先が思いやられたが、この先必要経験値が上がってもなんとかなりそうになってホッとしている。
早速おれはもう一度ステータスを確認してみることにした。
『
ミストルティン
レベル:2
EXP:19 NEXT 20
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:ノコギリ 2:なし
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得
』
次のレベルまで残り1。
今度のレベルアップではどんな能力が追加されるのだろうか。
「次、行きます! アドソープション!」
俺は期待に胸膨らませながら、古びた何の変哲も無い金鎚をアドソープションし――
『アイテム:金鎚(ランクA) アドソープション完了――EXPを200獲得――レベルが上がりました。新しく『性能回復』が追加されました――レベルが上がりました。新しく『鑑定』が追加されました。スロットが追加されました。得られた知識と経験をマスターに転送いたします』
頭に響いたそんなメッセージに、俺は一瞬何が起こったのか理解出来なくなったのだった。




