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【行軍篇 第九】の「鳥の起つは伏なり」がらみで、本邦の源平合戦における「富士川の戦い」の話【「鎌倉殿の13人」的な】

【主な登場人物】


(たいらの)維盛(これもり)

 平安時代末期の平家一門の武将。

 平清盛(きよもり)の嫡子・重盛(しげもり)の嫡男。ただし父が早世し、年少の彼ではなく叔父である平宗盛(むねもり)が平氏棟梁を継いだたため、一門内での立場は微妙。

「光源氏の再来」と呼ばれた美貌の貴公子。


武田(たけだ)信義(のぶよし)

 平安時代末期から鎌倉時代初期の武将。

 (みなもとの)義光(みつよし)(新羅(しんら)三郎(さぶろう))の曾孫(ひまご)、源清光(きよみつ)の子。逸見(いつみ)光長(みつなが)の弟。

 甲斐源氏四代当主。武田氏初代当主。武田晴信(はるのぶ)(信玄(しんげん))のご先祖さま(信玄公が十六世の孫にあたる)。


◇◆◇◆


 治承四年(1180年)九月二十二日(10月12日)、源頼朝(よりとも)ら関東方面の源氏の挙兵に際して、平維盛は「東国追討軍」の総大将として出立することとなった。その武者姿は「絵にも描けぬ美しさ」だったらしい。


 ところが、


「早く出発するでおじゃる(維盛)」

「お日柄(ひがら)が悪いからダメ(藤原(ふじわら)忠清(ただきよ)※維盛の乳父(めのと))」


 という、いかにも()()っぽい感じのゴタゴタが発生。結局、出発は二十九日(10月19日)になった。


 平家サイドは進軍途中で諸国の駆武者(かりむしゃ)(臨時雇いの兵士)を掻き集めて、七万と号する大軍となった……というが、実際は兵員は中々集まらず、また凶作のため糧食の調達もままならなかった。当然士気なんかぐだぐだ。


 そんなこんなで平維盛は一級河川・富士川まで進軍。武田信義軍(源氏)と向き合う形になった。


 十月十八日(11月7日)、富士川の東岸に布陣した甲斐源氏の軍勢は二万余騎。

 西岸に対する平家は、前記の通り七万騎どころか、実際には四千騎が関の山。

 さらに、逃亡・敵軍へ投降するものが相次ぎ、残兵は二千騎以下となっていた。


 ここで武田信義は維盛に挑戦状を送りつける。

 (いわ)


「いやー、前々から逢ってみたいなと思ってたところへ、ソッチが京都からのメッセンジャーとしてきてくれたので助かっちゃいましたよ。

 それでもこっちから会いに行くには遠いし、道が悪いんで、チョット無理っすわー。面倒くさいっすわー。

 いっそ、浮島ヶ原(現在の静岡県富士市から沼津市にかけてに広がっていた沿岸低湿地帯)あたりで待ち合わせ、ってことにしません?(意訳)」


 (あお)られて怒った侍大将の藤原忠清が激怒し、


使者(メッセンジャー)は斬っちゃ行けないって兵法(ルール)はプライベートな喧嘩(ケンカ)の時の約束事で、俺達みたいな『正義の官軍』は『(ぞく)』が寄こしたヤツらなんかを打っ殺(ブッコロ)しても問題ない」


 というワガママムーブで使者二名の首を()ねてしまう。


 そんなことをしている間に、陸路海路から合流するはずだった平家の軍勢が、片っ端から源氏方に行く手を阻まれたり捕らえられたり。そのさまを見聞きして、それまで日和(ひよ)っていた地方豪族達も軒並み源氏側に付く……と言う状態で、どうやっても平家が勝てるはずがなくなっていた。

 なんやかんやで、平家方は戦う前から戦意喪失。将兵はかなり神経質(ナーバス)になっていた。


 夜。

 武田信義の部隊は平家の後背を()く作戦のために移動。富士川の浅瀬へ馬を乗り入れる。その足音に、周囲の沼地失地で眠っていた数万羽の水鳥が驚いて、一斉に飛び立った。

 その羽音を敵の夜襲と勘違いした平氏の軍勢はあわてふためき総崩れとなって敗走。

 逃げに逃げた維盛が京へたどり着いた時には、供回りわずか十騎になっていた――。


……というのが、

「太平の世で武家でありながら戦に不慣れな『貴族』となっていた平家の軟弱さを示す」

 ものとして軍記物などに書かれた「水鳥の羽音」のエピソード。


 しかしこれは脚色・創作された「物語」であるとされる。


 平家軍は水鳥の羽音を()()()()()()()()()()()のではなく、

「水鳥の羽音で()()()()()()()()、迎撃の準備ができていなかったので()退()()()


 あるいは、


「羽音とは無関係に、()()()()()()()()()退()()()()()


 と見る方が現実的と言えるようだ。

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