情報収集するなら、お金をケチっちゃいけないっす。
これ、オレが考えてることなんですけども。
大分前に……えっと、作戦篇ぐらいだったかな……その辺で一遍言ったと思うんですけど、確認のためにもう一度繰り返しちゃいますよ。
十万人規模の大出兵を企画して、出征の総移動距離が四千粁ってことになると、国民が負担する費用とか王様のお財布から出るお金なんかをひっくるめて、一日当りの費用が大体千金ぐらい、もう平気でジャブジャブ消費されてっちゃいますよね。
そういう大イベントを企画しちゃうと、身内も部外者も、メチャクチャ大騒ぎになっちゃいますでしょ?
人がゾロゾロ動いて、資材とか機材とかご飯とかをのっけた重たい車がガンガン走ちゃう。そうすると、道路なんかもうボロボロになっちゃいます。
現地でヘルプのスタッフさんを雇ったりしても、そういう人達は慣れない作業をさせられるもんだから、もうボロボロになってバッタンバッタン倒れちゃったりして、可哀想なことになっちゃう。
そのせいで、本業のご商売とか農業とかが回せなくなっちゃう家が七十万軒ぐらい出ちゃう。いやこれ可能性っていうよりは、割とリアルな数字ですから。
そうやって国同士が何年も何年もやり合って、勝ち負け結果が決まるのなんてほんの一瞬。たった一日の勝利の日を、どえらい無駄と犠牲を払ってドンパチ争う訳です。
なんか、こー、むなしいなぁ。なんて……思いませんか?
だ、か、ら。
始める前に情報を収集しましょう。そのために十分な費用を使いましょうって事なんですよ。
ボーナス百金とか、貴族の地位とか表彰状とか、そんな些細な出費をケチって、敵さんチームの情報を「調べない、知ろうとしない」なんて王様や将軍がいたとしたら、そいつらハッキリ言ってケチです。人の心も思いやりのかけらも無いドケチです。
だって一日一千金を一年三百六十五日ジャブジャブ使うことを考えたら、戦争をその一日で終らせる情報を持ってきてくれた人に百金差し上げちゃった方がずっとお得ですよ。実質タダみたいなもんじゃ無いですか。
そのタダみたいな百金で、国の皆の負担が綺麗さっぱりなくなるんですよー。
今お財布から出す百金は、見えないところで溶けてゆく「国民と王様の血と汗と涙の一千金」の供給をストップさせちゃうブレーキです。
財布の中のお金をケチって、お家の金庫をカラッポにしちゃだめですよね。
そんなケチ野郎には、人の上に立つ人之將の資格はありません。王様を助ける主之佐の資格だってありません。ましてや、勝利を手にする勝之主の資格なんか、あるわけがない。
ですから、聡明で目端の利く王様と、賢明で頭の冴えた将軍が軍隊を動かして、さらっと敵さんに勝っちゃって、他の盆暗な王様や脳足りんな将軍なんかよりも、頭二つ三つぐらい飛び出して大成功を治めちゃうっていう、当然の結果を呼ぶには当然の理由ってのがあっちゃうんですよ。
それはつまり、オレ達のイケてる王様や格好いい将軍さんが、物事を敵よりも「先に知る」ことができたから。
これ以外に理由なんてありゃしません。
物事を誰よりも先に知るったって、そりゃ「神様仏様ご先祖様のお告げを聞く」なんてことをやるンじゃないですよ。
かといって、経験とか前例とか、そーゆー「昔から判っていたことから類推できる」っていうことでも、これまたない。
ま、確かに、お空のお星様やらお月様やら運行を観察して、そこから自然の法則みたいなものを引っ張り出せば、大分正確な「天気予報」はできますよ。んで、お天気の情報は戦況を左右する重要なモノではありますけども。
けども、ですよ。
それは、戦争そのものが「この先どんな風に動いちゃうか」を先に知る為のモノじゃないわけですよね。
情報ってのは、生きた人間がもたらすものなんですよねー。
人間から真実を聞き出し、敵の情報を知ることができちゃう人ってのが、つまりは「先に知る者」ってやつです。
そのために必要なのが間者、ってコトなんですよ。




