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炎上マーケティング(物理)は諸刃の剣っす。

 これ、オレが思ってることなんですけどね。


 一口に火攻めって言っても、これ五つぐらいのパターンに分けられるんじゃないっすか、って。


 一個目は、敵陣にいる人間に直接攻撃(ダイレクトアタック)しちゃうやつ。

 敵の兵力をゴッソリ削っちゃう、人的被害が目的ですね。一番エグいパターンです。


 二個目は、敵陣に野積みしてある「すぐ使う用」の物資や資材をダメにしちゃうヤツ。

 直近(チョッキン)で使う予定だった建設資材とか、今夜の兵糧(ゴハン)とかを灰にしちゃう。

 これ失っちゃうと敵さんチームの兵隊(メンバー)さんたちが、(すご)くがっくりきちゃうってとこを燃やしちゃうパターン。


 三個目は、敵さんが資材人材運搬用に使う輜重車(トラック)とかを燃やしちゃうヤツ。

 モノを運び出すことも、人間を移動させることもしんどくなっちゃうパターン。

 ダメージがじわじわっと後からきちゃうんで、地味に痛いですね。


 四個目は、敵さんが武器とかご飯の元とかをしまってる備蓄倉庫を、中身ごと消し炭にしちゃうヤツ。

 敵さんチームのこれからの作戦行動の計画を強制的(キョーセーテキ)白紙(パァ)にしちゃうパターンです。


 五個目は、敵さんの陣地(ベース)とか、宿営(キャンプち)とか、目的地までの(ルート)の重要地点とか、そういう場所を割と広めの範囲で焼き払っちゃうヤツ。

 ほら、桟道(さんどう)みたいに材木で舗装(ほそう)したり、あとは板壁で区切ってあったりする道があるでしょ? 地上の道だけじゃなくって、水の道、つまり川の橋とか渡し場とか、あと係留してある船とか、そういう(トコ)も。

 そういう交通の要所が燃えちゃったら、通れなくなるじゃないですか?

 それに、ちょうど部隊が通りかかったときにその道が火事になってたら……そりゃもう大変ですよね。道路が燃えちゃってるんだもの、逃げようがないですよね。


 燃えちゃったところを直すとしても、時間と労力と資材と、ぶっちゃけ資金(コレ)が結構掛かっちゃうから、そうそう簡単には修復できないっすよね。

 敵さんチームの一部隊を全滅させちゃおう、とか、後詰め(バックアップメンバー)が合流できないようにしちゃおう、っていう、ものごつい作戦のパターン。



 こんな風に、火計は目的ごとに色々手段の取り方を変えられちゃうし、ホント効果絶大なんですけども……。ぶっちゃけ、そうそう簡単にはやれないでしょ?

 っていうか、そもそもお気軽に取っちゃいけない作戦なんですよねー。


 大体、火計って予定(スケジュール)を立てるところから大変ですもん。

 そもそも、お天気とか風向きとか地形とか、そういう「火が燃えやすい条件」が整ってないとダメじゃないですか。

 火って、人間の手で制御(コントロール)するのが難しい元素(エレメント)っすから、条件がバッチリ整ってないと、思ったような効果は出せないんですよ。

 例えば、ジメジメしてると火が付かないし、風向きが悪いと燃え思った方向が燃えてくれないし、地形によってはうまいこと燃え広がらなかったりするし、雨なんか降ってきたら消えちゃいますからね。


 事前の準備もいろいろ必要になっちゃいますよ。

 火を付けるためには火種とか油とかが要りますでしょ? 燃え広がらせたいなら薪とか芝とか、そういう燃料系、これ絶対必要でしょ?

 一応、消す方の用意もしときましょっか。こっちに燃え広がっちゃったときの用心に水をたくさん用意するとか、延焼防止に下草を刈っとくとか。万一、こっちの陣地とかに飛び火しちゃった場合の損害も、ちょっとは考えて置いた方が良いかも知れないですよ。

 それから、上手いこと燃えた後に、トドメの攻撃をするときに必要になってくる武器とか機材。モチ、人員も充分に用意しときましょう。

 もしものために救急箱も備えておきましょうよ。煙を吸い込まないようにする覆面(マスク)とか、煙が目に染みちゃったときに目を洗う酢水(めぐすり)とか、やけどの薬とか。普段、キッタハッタの戦争をやってる時の常備薬とは種類も違って来ちゃいますよね。


 ほらね? 結構モロモロ「余分な用意」をしとかないといけないものがあったりしちゃうでしょ?


 火攻めの時は、時間とか、お天気とか、タイミングもシビアになってきますよ。特に火攻めでは、普通の戦争よりも日取り何かをしっかり決めとかないとダメなんですよ。

 ほらぁ、まだ友軍(オトモダチ)があっちの方にいる、って時に、あっちの方に燃え広がるように火を付けちゃったら、かなり問題でしょ?

 そのためにも、ちゃんと日時の細かいところまでかっきり計画して、打ち合わせしておかないとマズイじゃ無いですか。


 じゃあどんなタイミングで仕掛ければいいか、ってことになりますよね?

 例えば、空気が湿っぽいとか、雨バンバン降ってます、なんてときに火ぃ付けちゃダメだってのは、これ言わなくても判っちゃいますよね? 濡れてるものにはなかなか火ぃ着いてくれないし、生乾きだと着いてもすぐに消えちゃいますからね。

 つまり、お天気的には、もうカラッカラに乾燥注意報出てるようなときに実行しないとダメってことになります。

 だからお天気の様子をしっかり見て、そういう機会が巡って来なさそうだったら、悪いこたぁ言いません。火計はスパーッと諦めちゃった方が良い。別の手段を考えましょう。


 まあ一応は、いつ頃が火計に向いてるのか、ってのは、あるっちゃぁあるンですけどね。

 お空のお月様、ありますよね? これが、中華な星座で言うと、()(ヘキ)(ヨク)(シン)のあたりにある時期がベストっぽいんですよ。

 

 ()ってのは、ざっくり二千と三百年後ぐらいの人達が西洋占星術とか()()()()()っていうヤツで「射手座(サジタリアス)」って呼ぶことになるんじゃないかなーっていう黄金(ゴールド)な星座でいうところの、大体下の方半分ぐらい部分の天空域(エリア)のことっすね。

 (ヘキ)は、同じ()()()()()で言うところの、「仙女座(アンドロメダ)」と「飛馬座(ペガサス)」をとかいう、なんとなく青銅(ブロンズ)っぽいところを中心に、「鯨座(ケイトス)」と「魚座(ピスケス)」がちょこっと入るくらいの天空域(エリア)

 (ヨク)は、「コップ座(クラテリス)」のちょこっとと、「海蛇座(ヒュドラ)」のちょびっとをいい案配(アンバイ)に混ぜちゃった感じ。

 (シン)は、翼のすぐ隣。「鴉座(コルヴス)」と、「コップ座(クラテリス)」から「海蛇座(ヒュドラ)」の(ヨク)に入ってないとこが引っかかってくるあたり、みたいな。


 それで、なんでこの四つの時期が良いかっていうと……いや、占いとかそういうんじゃないんですよ。ちゃんと科学的根拠のある理由があります。

 大体この時期になると、そりゃもうえげつない大風が吹くんですよ。ええ。

 強風が吹くってぇ事は、火がガンガン煽られて、こっちが特に燃料追加とかしなくたってバンバン燃え広がってく、って事になります。

 逆言うと、風が無いときには普通に火を付けても、あんま広がってくれないんですわ。

 手間をかけて、兵隊(メンバー)さんとか間者さん(スパイのヒト)とかの命を危険に(さら)しちゃうっていうのに、効果が薄いんじゃ、これお得感(ゼロ)、じゃないですか。

 だから、風が強い、()(ヘキ)(ヨク)(シン)の時期を選んだ方が良いですよ。


 ま、お天気には地域差ってモノがありますから、必ずしもこの季節にメチャクチャ風が吹くとは限らないですよね。だから一応、地元のお天気博士な人をめっけて、情報仕入れて置いて下さい。


 で。

 実際、火計を仕掛けた後の状況に関する注意事項って、これも大体五パターンぐらいあるんですよ。

 現場では、その五パターンの組み合わせとか変化とかに応じて、――これ「またかよ」って突っ込まれちゃうのを承知で言いますけど――臨機応変(リンキオーヘン)に対処しちゃってください。


 先ず、敵の陣地やお城の内側から発火させて燃やしちゃうパターン。

 決死隊送り込んで火を付けるとか、敵さんチームの中にいる()()にちょっと【お願い】して放火して頂いちゃうとか、そういう感じで「中から火の手が上がった」ときの事後処理(アフターケア)の方法ですね。

 ズバリ、早めに外側から攻撃を仕掛けちゃいましょう。

 火が付いて、相手が慌てている所を、ガツンと叩いちゃって下さい。

 何度も言ってますけど、戦争は基本「先手必勝」なんすからね。


 あ、でも、火の手が上がったって言うのに、敵さんチームの皆さんがものすごく冷静に対応してる……なんてときは、絶対に攻撃しちゃダメです。

 こういうときは多分……敵さんチームの統率がバッチリ取れてて、いつ攻め込まれても大丈夫な状態でいるとか、こっちが攻め込むのを待ち構えてるか……まあなんにせよ、こういうときはしばらく待った方が良いです。っていうか、待って下さい。

 つまり、いつも以上に情報収集と判断をスピーィディーに行う必要があるって事ですヨ。火を付けてからしばらく待って、火が大きくなって来たな、ってのを見極めてから、更に敵さんチームの動きも確認して、イけそうだったら攻め込む……この判断を(チョー)迅速(スピード)で下して、がーっと仕掛けるんです。

 (チョー)迅速(スピード)で判断して、こりゃダメだな、と思ったら、即撤収(テッシュー)ですよ。


 もしかしたら、火を付ける作戦を実行する前でも、

「今、チャンスじゃね? わざわざ中に入り込んだり、中の人に頼んだりしなくても、外から火を付けても行けちゃうんじゃね?」

 って判断できちゃうときってありますよね?

 そーゆーときは、迷わずバシッと外から点火しちゃってください。

 ほら、タイミングってやつは絶対逃がしちゃダメですもん。

 もし中の人と火を付ける約束してたとしても、はたまた突入部隊が絶賛準備(セットアップ)中でも、そっちは待たなくて良いです。

 イけるときにイっちゃいましょう。ドンドン行っちゃえ、行っちゃえ!

 

 んで、実際に火を付けたとき、点火場所とか風向きとかの都合で、自分達チームの陣地から見て風上の方から燃え広がっちゃうこともアリアリですよねぇ。つまり自分達チームが風下になっちゃったってパターン。

 こういうときは、そのまま風下の方から攻め込んでっちゃダメです。

 だって、ほらぁ。炎も煙も熱も風に乗って風下(こっち)に来ちゃうもの。火に向かって突っ込んでくことになりますよ。

 そしたら、敵陣だけじゃなくて自分も燃えちゃうってことじゃないですか。それ全然おいしくないでしょ? ってかむしろ大損じゃないですか。

 だからそういうときは、マッハで避難してください。んで、スピーディーに風上に回り込むんです。攻め込むのは、それからですよ。


 そうそう。これお天気あるあるになるンですけどね。

 お日様が出てる間はめっちゃ「いい風」が吹きっぱなしだったのに、夜になるとぱったり止じゃうっての。……ね、あるでしょ? でしょ?

 だから、

「いつまで燃えてて欲しい」

 とか、

「どの辺まで燃え広がって欲しい」

 とか、

「突入のタイミングを計りたい」

 みたいなご希望があるときは、風の吹き方もよく注意してください。これ大切ですよ。

 思ったように燃えなかったとか、考えてたのと違う燃え広がり方をしたとか、そうなったら、いくら緻密に練り上げた作戦でもオジャンになりますからね。


 ま、こんな感じに五パターンぐらいの「火攻めの注意事項」を説明したんですけど、これよーおっく覚えておいて下さい。

 ……って言っても、火って人間様の思った通りには動いてくれないじゃないっすか。火だけじゃありませんよ。敵さんチームの人達だって、こっちの考えたとおりには動いてくれっこない。

 だから、火の燃え方とか、敵さんチームの反応とかを、よく観察するのがマジで大事なんですよね。

 持てる知識(インテリジェンス)技術(テクニック)を全部駆使して、現場で臨機応変(リンキオーヘン)にあたっちゃいましょ。


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