敵陣をしっかり観察して、敵情を推察するっす。
それから、敵陣になんか動きがあったからって、それが全部直接攻撃してくる前兆ってわけじゃぁありませんからね。
使者を立てるって行動もあるし、陣地内での移動って事もある訳ですから。
その使者の態度も、敵さん本隊の動きと突き合せて、よーく観察して下さい。
使者自身はやたらと巧言令色使ってペコペコしてるのに、陣地の方では兵力増強してる時。
これは敵さんチーム、攻めてくる気満々ですよ。弁舌でこっちを油断させといて、隙を突こうって言う作戦です。
使者が強気発言連発しつつ、敵さん陣営が攻める気配を見せてるのは、これむしろ退却しちゃうつもりですからね。
こっちが警戒して守備固めをしている間に逃げちゃおうって言う算段。
軽戦車が隊列から抜け出て、列の両側にポジションを取ったら、部隊が隊列整えている最中ってことでしょう。
あ、そうだ。使者の件ですけど、まだそれほど困る状況になってない筈なのに、向こうから
「仲直りしましょう」
なんて話が来ちゃった時は、これ要注意っすよ。
敵さん、絶対悪いこと考えてるに違いないんで。
ホイホイ乗っちゃぁいけません。後で痛い目に遭いますから。
敵さんの陣地の中で、なんだかワタワタっとした動きがあって、戦車が整列し始めたら、気ぃ引き締めて下さい。
いよいよ敵さんが最終決戦の準備に入ったってコトですから。
敵さんチームがちょろっと進んですぐ引っ込んで、またちょろちょろ出てきて引っ込んで……みたいなアヤシイ動きを繰り返してても、吊られちゃイケません。
こっちが出てくるように誘いを掛けてるってことなので、こういうときは、迂闊に動いちゃダメですよ。
敵さんの陣地は外から見るだけじゃ足りませんよ。「中の様子」もかっちり観察しないといけませんよね。
外から見るだけじゃなくて、間者なんか潜入させちゃったりして。
あ、間者についてはまた後ほどまとめてお話しますから、ちょい待ってて下さいね。
例えば、敵さんの陣地の中にいる兵隊さんが、怪我をしてる訳でもなさそうなのに杖突いて立ってたとしましょう。
それ、普通に立ってられないくらいおなかペコペコだからです。
つまり、敵さんの陣地の兵糧の蓄えが相当減ってるってコトですよ。補給もままならない常態かも知れませんね。
陣地から水場へ給水に出た兵隊さんが、汲んだ水を持って帰るより前に、自分でがぶ飲みしちゃってたとしますよ。
それ、完全に喉がカラカラの水分不足だってことですね。
陣地の中の水が全然足らなくて、ギリギリまで節水してるもんだから、兵隊さんがこういう行動に出ちゃうワケですよ。
敵さんにとって絶好の好機ってとき――こっちチームが本気でポカやらかした場合でも、そう装って敵さんを誘き出そうという作戦だったとしても――とにかく逃せないはずの好機に進軍してこない。これおかしいと思うでしょ?
それは、向こうがもう進む気も起きないくらいヘトヘトに疲れちゃってるからです。
陣地の上空とかすぐ側のあたりに、警戒心が強いはずの鳥さんたちが平気で集まって来てたとしましょう。
それ、鳥さんたちが警戒する必要がなくなってるってこと。つまり、そこはもう撤退済みのカラッポで、人っ子一人いないってことですよ。
もし、夜中に陣地の中から、
「ひぃいいい」
とか
「うわぁあああ」
とか
「ぎゃぁあああ」
みたいな、いかにもヤバゲな叫び声が聞こえたら……それだけでもうヤバイって感じですけど……。これは敵さんチームの兵隊さんそうとうビクビクおびえてるってことですね。
夜になってもおとなしく寝てられる精神状態じゃなくなってるんですね。ちょっとカワイソウ。
敵さんチームの陣地内で、兵隊さんたちが好き勝手バラバラに動いてて、規律も何もあったものじゃないようなら、向こうチームの将軍が尊敬されてない証拠ですね。むしろ、味方から思いっきり軽くみられてるってことです。
命令を伝えるための幟旗がアチコチウロウロ動き回ってるなら、これ完全に指揮系統がぐちゃぐちゃになって、統率なんか取れなくなってるんですよ。
兵営内の役人がプンプン怒って、下役の人や兵隊さんたちに雷落としまくってるっていうなら、皆さんのやる気がダダ下がりになっって、サボタージュ決めてるってことでしょう。
戦車を引く大切な動力であるお馬さんを、殺してモグモグ食べちゃってるなら、もう完全に兵糧がなくなってるんです。補給も望めなくなってるんじゃないですかね。
兵隊さんが竈やら水瓶やらをガッチャンガッチャン放りだしちゃって、しかも宿舎に戻ろうとしないのは、相当ギリギリに切羽詰まってる証拠です。
もしかしたら決死の覚悟で最後の一戦を挑む気かも知れないですよ。
向こうさんの上官が、気ン持ち悪いくらいに優しい、ニャーニャー猫なで声で兵隊さんたちに話しかけるようになったら、兵隊さんたちがもう上の言うことをこれっぽっちも信用しなくなってるってことですよ。
向こうの将軍さん、慌て優しくして取り繕おうとしてるんでしょうけど、こうなったらもう間に合いゃしませんね。
やたらと無意味に表彰なんかするのは、どうにかして士気をアゲアゲに持って行きたいという窮余の策ってヤツですね。
ま、大体上手くいきませんけど。
逆にやたらと懲罰なんかしちゃうのは、もう兵隊さんたちがグダグダに疲れ切っちゃってて、偉い人の言うことを聞かなくなってるからですね。
そうなったら、いくら殴っても叱っても絶対動かないんですけどね。
先に暴にして後にその衆を畏るるは、不精の至りなり。
あ、今ちょっと本音が漏れちゃったカモ。
上司の部下に対する接し方でホントいけないのは、最初ガミガミと乱暴に厳しく当たっているくせに、後になって、
「自分が嫌われてたらどうしよう。部下に逆らわれたら困る。逃げられたりしたら大変だ。査定が下がって、降格させられちゃう」
なんて心配しちゃうことですよ。
それも相手のことを気遣うんじゃなくて自分の首のコトばっかり心配するの。
至高の屑ですよ、そんなヤツは。




