根性論で勝てるほど、現実はイージーじゃないっす。
そんで、さっきもチラっと、
「昔の凄い戦争上手の先輩方っていうのは、勝ち易い時に戦ったから勝った」
って言いましたよね?
こういう言い方しちゃうと、なんか簡単なように聞こえちゃいますけど、実際はそうじゃないんだなぁ、これ。
偉い先輩方は、まず相手が負けるように段取りを付けるところから始めたんです。
全部整えちゃってから、絶対勝てるって判った時に、ガツンと戦っちゃう。
そうやって「勝ち易い時を作った」から、するっと勝てちゃったんです。
表からは見えない裏側の努力が重要なんですよ。
だから、そういう意味で「戦争が上手い」人たちは、かえって名前が知れ渡ることがなかったんですね。当然伝説が残されたりもしなかった。
本人にとっても周りの人にとっても「戦えば勝つのが当前」になっちゃってたんですかねぇ。たとえて言うと、戦争芸術家というよりは戦争職人だった、って感じですかね。
でもそれが当然でしょ? 先輩方が目的にしてたのは国に勝利をもたらしちゃうことであって、歴史に自分の名前を残すことを目指して戦争をしたんじゃないんですもん。
勝ち易いように段取り付けるのは通常営業。勝利するのが日常業務。国家安寧が営業目標。
だから戦争に勝ったってコトは、とりたてて騒ぐようなことじゃなかったんですよ。
そんなこんなでですね。
名前も伝説も残さなかったマジモンで凄い先輩方は、絶対負けないように足場を固めて、敵さんチームのヤラカシを見逃さずに攻め立てて、当たり前に勝った、って訳です。
是の故に、勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。
……って、また名言出ちゃったかな。
これ、つまりですね。
勝つ人は、勝つと確信を持って戦うから、勝つ。
負ける人は、戦った結果の勝ちを目指すから、負けちゃうんです。
目的とその過程を取り違えちゃぁ、否否、なんですよ。
戦争が上手いリーダーが、実際の戦争をやっちゃう前に、下準備としてガッチリやることは、まず地元の政治です。
公正な政で地元民の心をがっちり掴むんです。皆が王様と一緒に一つの目標を目指して走ってくれるように持ってくためには、国内の地盤をしっかり固めておかないといけません。
国元の地盤が固まったら、今度は軍の中です。こっちも国内で公正な政をやるのと同じですよ。ルールをかっちりきっちり徹底させちゃう。
そうすれば兵隊さんもしっかりかっきり動いてくれますし。
イヤ実際、こういう戦争を始める前の政治力ってヤツが、戦争が始まってからの勝ち負けを決めちゃったりするんですよね。
実のところ、戦争ってのは、度、量、数、稱、勝、の五つ成り立ってるようなもんなんですよ。
つまり、距離を測る。物資を量る。兵力を数える。相手と比較検討する。で、勝敗を見極める。……ってことですね。
まず、自分の国や敵の国の広さ、戦場までの距離なんかを、きっちり【計って】おきましょう。
距離や規模が判ったら、そこまでチームを動かしたときに必要な物資の【量】が算出できちゃう。ここを何日かけて移動すると、一人分のご飯はコレくらいかな、とか。どれくらいの期間ドンパチ続いたら、補給物資はどれくらいいるかな、みたいなのね。
必要な物資の量が判ったら、動員出来ちゃう兵隊さんや戦車の【数】が判ってきちゃいます。
自分チームの動員力が判ったら、それを敵さんチームの兵力と【比較】しちゃう。
比較ができたら、どっちが【勝】つかが判る。
勝つと判ればやるし、負けそーだと判れば、無駄なことはしないことですよ。兵隊を動かさない他の手段を考えちゃいましょうよ。
あ、計量大事、比較大切……って言いますけど、ただ測って比べただけじゃダメっすよ。
例えば……そうですねぇ。おにぎり三個とご飯粒三つあったとしましょーよ。
これ比べたら、おにぎり三つの方に天秤が傾くに決まってるでしょ? 物理法則は変えられないですからね。
「だからおにぎり三個以上になるための準備をしましょう」
って、冷静に判断するところまでが勝つチームの物差。
ところが負けるチームは、ちゃんと測っても、目の前で天秤がメーター振り切ってても、
「いや、ご飯粒三つでもおにぎり三個の天秤を傾かせること方法だってある筈だ!」
と考えちゃう訳。物理的にムリですよねー。
根性論じゃ、現実は動きませんよ。
さてさて、イロイロ量って計算して比べて、いよいよ
「これ戦争すれば勝てちゃうぞ」
って判ってから、実際に兵隊さんを集めてドンパチおっ始めるんですけども。
兵隊さんたちも勝つのが判ってるから戦争をやるんだって理解をしていれば、みんなノリノリで突き進んでくれちゃいますよ。
勝ち馬に乗っかっちゃうのが人間ってもんです。
その勢いってのは、ダムの水をバーっと放水するみたいな、下流の地形も変えちゃうんじゃないかって言うくらいの猛烈な力になります。
チームをこの形……自信とやる気に溢れ、統率の取れたオラオラ集団……まで持って行くのが、何よりも大切なンすよ!