2話
目覚めてから月日が経ち、私は4歳になっていた。
転生してすぐの頃は生後6カ月位だったようで、当初は身体との繋がりが薄かったのか、身体は動かせるものの触感などの感覚が曖昧だった。
1歳になる頃を境に自然と感覚もハッキリしていった。
これが自我の芽生えってやつ?
それとも、魂とやらがこっちの世界に馴染むのを待ったような感じ?
どちらにせよ、自分で動けるようになったから全然OKだけどね!
こうして自分で動く事が可能になった事で、一先ずここがどういう世界なのかを知りたかった。
これについてはちゃんと作戦を考えていた。
その名も『お姉ちゃんと一緒にお勉強作戦!』
うん。そのまま~。
というのも、私が転生してきた時、姉のエディタは6歳であった。
そして、父のロワイエが母スサナと家庭教師を雇うという話をしているのを聞いていた。
そこで小さい子の特権の我が儘『ねぇねと一緒じゃなきゃヤダ』を使用して、一緒にお勉強しちゃおうと思いついたのだ。
それにはエディタにぴったりくっついて行動し、お姉ちゃんが大好きな子と印象付けなければならない。
感覚は曖昧でも動かす事はできるんだからと、ハイハイの時期からエディタを見かけると追いかけるようにした。
エディタは嬉しかったようで、甲斐甲斐しく歩く練習まで一緒になって手を曳いてくれた。
また、イレーネにも同じように接していたので、二人揃って世話をしてくれた。
一人だけだとトラブルの元にもなるかもしれないしね。
こうして準備を進めている内に、私は1歳の誕生日を迎え、一層エディタとイレーネにくっついているようになった。
そして、エディタが7歳の誕生日の食事時。
家族全員で囲うテーブルで父ロワイエがエディタに言った。
「エディタ。前にも話しをしていた教養の話しだけど、そろそろ家庭教師の先生を呼ぼうと思っているんだ」
「はい」
持っていたナイフとフォークを置き、エディタが返事をする。
「家庭教師?」
まだ知らないイレーネが尋ねる。
「そう。世の中の事や字を読む事、書く事、あとは簡単な計算なんかを教えてくれる先生の事だよ」
頷いて、ロワイエが説明する。
どうやったら私も参加できるかな。
「…ねぇね、ないない?」
首を傾げて、言葉にする。
まだ喋るのは舌っ足らずになってしまうが、仕方がない。
「エディタはいなくならないわ。大丈夫よ」
優しくスサナが諭してくれる。
ここで引き下がってしまっては目的を達成できない。
椅子を降りて、エディタの元へと歩く。
「あら。ミラはエディタがいなくなっちゃうと思っているのね」
困った表情で、スサナが言う。
ロワイエも同じ表情で私の前にしゃがんで目線を合わせる。
「少しの時間お勉強するだけだから、大丈夫だよ」
私はエディタにしがみつき顔を勢いよく振る。
「や~」
「ミラ…」
ロワイエはお手上げ状態になったらしい。
あとひと踏ん張りか。
「そうだわ!ねえ、あなた。ミラがこれだけ離れないならいっその事3人纏めちゃったらどうかしら?」
ポンと手を叩き、スサナはニッコリ笑った。
あ、イレーネ姉様が巻き込まれた。
「イレーネだって結局は学ばせるつもりなんだし、ね。ミラは2人といれば落ち着くんだし、ね。先生には了承いただくようになっちゃうけど、使用人の中で付き添いを出せば、ミラが泣いちゃったりしても大丈夫そうじゃない?」
「むう…」
チラリと私をロワイエが見る。
もう一押しにエディタにぎゅっと抱き着いておく。
ロワイエは天井を見上げて考え、やがて観念したようにはぁ~と息を吐いた。
「それで了承してくれる先生を探してみよう」
「えっ…」
不意打ちで勉強を開始する羽目になったイレーネは固まっていた。
イレーネ姉様ごめんね☆




