1話
目を開けるとそこは部屋の中だった。
木目の天井に白い壁。
窓枠も木でできていて、コンクリートで埋め尽くされた風景ばかりだった前世よりこの世界の文明は古いらしい。
窓から入る陽射しと風が心地よい。
部屋の中を見ようとすると、ベッドの脇でこちらをじっと見つめる女の子が二人いた。
「起きちゃった」
「たった??」
5歳から3歳位の姉妹であろうブロンドの髪の女の子達は、小さな声で話をしている。
妹の方は頻りにお姉さんの真似をしていて可愛らしい。
ほっこりするような心が温かくなるような光景に頬が綻ぶ。
「ねぇたま!ねぇたま!」
「しぃ~!イレーネ!大きな声出しちゃダメだよ!」
「わらってる!」
「え?!」
少し大きな声が出てしまった妹を諫めていた女の子はパッとこちらを見やり、花が咲くように笑った。
そして脱兎の如く駆け出して部屋を出て行った。
「母様~!」
部屋の外から女の子の弾んだ声が聞こえる。
ワンテンポ遅れてイレーネと呼ばれた女の子も部屋を出て行った。
勿論、お姉さんの真似をしながら。
一人になって落ち着いたところで、自分の状態に気付く。
手、小っちゃい。赤ちゃんの手だ。
自分の手をまじまじと見て握ったり、開いたり動かしてみる。
ん~、やっぱり身体はまだ起き上がれないみたい。
起き上がってみようとするが、筋力が無い所為か起き上がれない。
生まれて1年も経っていないような月齢らしい。
転生と聞いて何となく感じていたが、精神的には16歳なのに自分で身体が動かせないのは辛いな~。
時間が経つのを待つしかないか。
それでもやれる事は何でもやってみようか。
今後の方針を大雑把に決めていると、姉妹が母親を連れて戻ってくる声が聞こえた。
「笑ったのよ!ミラが笑ったのよ!」
「のよ!」
「エディタもイレーネもミラが笑ったのが嬉しいのね」
キャッキャッという笑い声が近づいてきて姿が見える。
母親も姉妹同様ブロンドの髪が素敵な20代後半位だろうか、3児の親と言わなければ分からない位若々しい人だ。
それなのに3人で手を繋いで歩いている姿はとても可愛らしく温かな印象を受ける。
「ミラ、お昼寝気持ち良かったね」
母親が優しく抱き上げてくれる。
胸に抱かれると心臓の音と共に例えようのない安心感が心と身体を満たしていった。
抱っこするだけでこの安心感。母親ってなんだか偉大だな。
抱かれる感覚と母親と姉妹の声を聞いていると、睡魔が襲ってきた。
抗う事も出来ずに、私の意識は落ちていった。




