1話
閲覧いただきありがとうございます。
初めての投稿となるので、お見苦しい点や誤字・脱字等あるかと存じますが、優しい眼差しでご覧いただけたら幸いです。
のんびり、ゆっくり更新していきます。
真っ暗闇の中で誰かが叫んでいる。
必死に手を伸ばしているが、見えない檻にでも捕らえられているかのように阻まれている。
私はただそれを呆然と眺めている。
──!───!
目に涙を溜めて必死で何かを叫んでいるのに、まるで透明な防音室に隔離されているかのように私には何も聞こえない。
──!──!!
何故彼女はあんなにも必死で叫んでいるのだろう。
何故?
ただただ頭の中で「何故」を繰り返す。
次第に黒い靄がかかり、彼女を包んでいく。
私の意識も遠くなりかけた頃、何もかも打ち消すかのような声が響く。
「ねぇ!お姉さん!!聞こえてる?!」
ハッとして目を向けると、そこには小学生位の背丈の少年が腰に手を当て、プリプリとわざとらしく怒ったような表情でこちらを見下ろしていた。
ぼんやりと周囲を見回してみる。
ビルの屋上らしく、夕日に染まったビル群が目の前に広がっていた。
「お姉さん、いきなりここに来て飛び降りるんだもん。僕びっくりしたよ」
「…君は…」
「僕が助けなかったら、大変な事になっていたんだよ?!分かってる?!」
こちらの言葉を遮り、ずいっと顔を近付けお説教をされる。
その時の記憶は曖昧だが、状況は突飛であったことだろう。
「…すいません」
迫力にのまれて謝る。
それでも何か言いたそうにこちらに目を向けてくる少年。
「…助けていただきありがとうございました」
小さくお辞儀をして感謝を伝えてみる。
少し沈黙した後、フンッという言葉と共に少年は離れた。
「それで?」
「えっ?」
「何でこんな事したの?」
「え~っと…」
あまり話したくなくて、言い淀んでいると
『ギロリ』と睨まれた。
…目力が強い。尋問されているみたい。
誤魔化す事はできないようなので、正直に答える。
「…分からないんです」
「……は?」
「それが!分からないんです!」
少年はポカンと口を開けて固まっている。
自分でもおかしな事を言っていると思うが、事実なのだからしょうがない。
「覚えているのは、学校が終わって寄り道をしているところまでで、その後は覚えていないの」
「気付いたらここにいた。と?」
コクンと力強く頷く。
「なるほどね」
少年は合点がいったように頷いた。
「お姉さんはきっとここに溜まっている奴らに連れてこられたんだね」
神妙な面持ちで少年が説明してくれた。
「ここはさ、自殺の名所なんだよ」
「だった?」
「そう。かなりの人数がここから飛び降りたみたいだよ。塵が積もるように奴らの怨念もこの場所に溜まるようになってしまって関係のない人まで巻き込むようになったんだ。だから、僕がその怨念が外に漏れないようにしていたんだよ。」
「お姉さんは僕の隙をついて外に漏れてしまった奴らに連れて来られたって訳」
「じゃあ、直接の原因はあなたなの?」
「そうみたい☆」
その瞬間、身体中の血が沸くかのような怒りがこみ上げた。
「そうみたい☆じゃないわよ!!死にたくなんてなかったのに殺されて!しかもそれが怨念とか意味分かんないし!元に戻してよ!!」
少年の胸倉を掴みかかるかのような勢いで捲し立てる。
元に戻せと言ってもできないのは分かっているのに、心がついていかない。
涙を流して叫ぶ私を少年はただ見つめていた。