41章 早送りで港街 到着
メイドにお風呂に入れられぐったりしている私は……
お風呂になった後すぐにベットにもぐりこんだ。もぐりこむとすぐに微睡に身を任せて眠りに落ちた。こんな生活がしばらく続いて、次の年の春になった。私は会長達が卒業するのを聞いて卒業式の時に式典には出席しないで、綺麗な光の混合魔術の「花火」を作った。それをその日の夜の夕食会の時に盛大に打ち上げた。
私は学院の一番高いところのベランダに立って打ち上げた花火を見届けると眼下に広がる街の景色を見て一息ついた。会長達は喜んでいてくれたようだ。私はこれ以上用はないので、その場から立ち去り、城に戻った。それから私は最上級生になった。私は会長職を引き継ぐ事になり、ソフィーとの約束の事を思い出したが、今更別の場所に住もうなんて気も起らなかったので、そのまま城に身を寄せる事にした。
それからしばらく経ち5月の半ばになって、新しく入ってきてくれた子もちゃんと仕事を覚えてくれている。なので私に掛かる負担が数倍楽になった。書類作成などは会長に押し付けられてきていたので、すっかり覚えてしまって、会長が卒業してから数日は自分一人で作成していたので相当な負担が消えた。役員が継続の人がいて体系が整っていった。そしてそのまま時は過ぎていき、8月になり長期休暇が始まった。長期休暇が始まると以前とは役職が異なるのであまり長い時間学院を離れる訳にはいかないので、数日の帰国となった。それから、執務の時間に追われていた。何故かというと今は下の子達が地元の方へ帰省中なので、今学院にいる執行部は私一人となっているためである。下の子達の予定は私が組んだのでわざと同じ時期に皆を返したのである。しかし、少ない。今までの仕事量を考えると少なすぎる。いや、仕事が少なくなったのはむしろ喜ぶべきなのだろう。
それから数日経って、下の子達が帰ってきてくれた。それぞれ私にお土産をくれた。そういえば私は会長にお土産なんてしていないので少し後悔した。
「ミーシャ少し疲れたからお茶を淹れてくれる?」
「はい、分かりました」
私は淹れてもらったお茶を飲みながら、書類に目を通していた。すると、ノックの音が聞こえてきたので、出ていくと、クレール先生が立っていた。
「何か用でしょうか?」
「いや、少し付き合ってくれないか?」
「はぁ、分かりました。でも行く場所にあてはあるんですか?」
「それは……」
「分かりました。最近は行ってないのですが、私のとっておきのお店に行きましょう。着いて来てくださいね」
「あぁ、分かった」
そうすると、先生は静かに後ろをついてきて数分するとあの喫茶店に着いた。
「いらっしゃいませ」
「どうです?この店雰囲気がとても良くて料理もおいしいので私のとっておきなんです」
「あぁ、とてもいい店だ」
「さて、では本題に入りましょうか?」
「あぁ、尋ねた用件なのだが相談なのだ」
「はて、教師の貴女が私に相談なんですか。なかなか体験できない事ですね。何でも行って下さい」
「それはな……私の教育方針についてなんだ!」
「はい…」
「そうなんだ。私の教育理念は“闘いにこそ真なり”なんだ。戦いの中でこそ本当のスキルが解放出来ると信じていたんだ。しかし、他の先生が“厳しいのではないか?”と思っている人がいてな」
「私は先生の授業を少ししか受けた事がありませんが確かに実践や木剣の試し試合にしてもその時初めて出てくる才能もあるので、それは良い事だと思います」
「そうだろ!確かに厳しく育てているさ。のちに冒険者になるってやつもいるんだから厳しくしないとモンスター達に倒されてしまう。それは命が危ない。だから今の内に敵意や、殺意に敏感になってもらった方がいいと私は考えているんだ」
「そうですね。その理念自体私は良いものだと思います。それに、その厳しさとやさしさは美徳だと思います」
「そういってもらえると助かる。しかし、イリスの場合は相当な場数を潜ってきている冒険者のような太刀筋で剣を持っていてもこっちが打ち込むのが怖いものだ」
「そんな感じなんですか」
「そうなんだ。しかし、そんな感じの覇気を手に入れるなんて何をしていたんだ?」
「乙女には秘密が付き物じゃないですか。あまり詮索する者ではないと思いますけど、少し教えるとするならば、立場上命を狙われる事があるので、暗殺者を退けたりなんかですね」
「つくづくイリスは規格外だな」
「そうなんですかね」
「そうだよ!はぁ、まぁ何はともかく言いたい事が言えてよかったよ。スッキリしたらお腹が空いたな、何か頼んでくれないか?」
「何でもいいんですか?」
「あぁ」
「では、マスター今日のおすすめを二つお願いしますね」
「はい、かしこまりました」
数分待つと、料理が運ばれてきた。今日はボロネーゼだった。牛肉とトマトソースや野菜も絡み合ってとてもおいしい。
「本来私が聞く事ではないですが、どうですか。味の方は?」
「あぁ、流石イリスがおすすめするだけはある。とてもおいしいよ」
「よかったです。喜んで頂いけて」
それから、しばらくしてマスターにお代を払って店を出て先生とも別れて私は執務室に戻った。
それから数日経ち、一般生徒の夏季休暇も終わった。しばらく経って、ミスコンが開催され例の如く私が受賞してしまった。今年は誰か他の人にと思ったが、来年のはじめにこの学院を出て行ってしまう私が受賞してしまった。生徒の過半数が私に入っていたそうだ。この結果は多少分かっていたが自らの耳で確認する事になるとは思わなかったが。
それから数か月が経ち、私は私は卒業の時期を迎えた。祝いの席には沢山の来賓の人が来てくれた。来賓の席には、クルス達も来ている。私は卒業生代表として前に出た。目の前にいるのがいつも会っているソフィーだったので、そこまで緊張せずに済んだ。私達卒業生はその晩の夕食会でクルスやソフィー達、帝国の皇との会談を行った。私達はこの場所にはもう用がなくなってしまったので、明日一番に馬車でドラゴシアの方へ帰還する事になった。
朝一で学院を去る事いなっていて、全然話していない内容だったのだが、どこから聞きつけたのか教師含め、教師までいた。みんなで見送ってくれた。流石に目に来るものがあった。熱いものが流れてきた。しかし、いつまでもそんな事をしている訳にはいかないので、袖口で拭って窓から手を振ってあげると、後ろの方から黄色い歓声のような声が聞こえてきた。
「やっとイリスと一緒に居られるわ」
「そんな事はないよ。世界を見てみたいんだ」
「生活費はどうするの?」
「冒険者をやって生活費を捻出しようと思っているわ」
「いいわよ」
「いいの?」
「そうよ。そういってるじゃない」
「分かったわ。ありがとう」
「その代わり条件があります」
「?」
「条件は、安全に探索する事よ」
「それだけなの?」
「えぇ、それだけよ」
そうして、冒険者になる事を告げて2週間経ち、ようやく国から旅立てる事になった。駅馬車を使い東の端へ行き、日乃本を目指すつもりだ。冒険者ギルドの前に立っていると利用者や、馬車が集まってきた。終点まで行くと違う場所に着いてしまうので、最後から2つ前の駅で降りてそこから歩きで向かう。地図を持って馬車に乗り込むと他には数人の利用者がいた。
「お嬢さん貴女はどこまで行くんですか?」
「最後から2つ前の港街で降りるつもりですよ」
「そうなんですか長旅になるでしょうから頑張ってくださいね」
ここで私がなぜお嬢さんと呼ばれているかというと、軽い皮鎧をつけているのだが、装備しているものの男性用が無かった為女性用になったのだ。さらに女顔でエルフならば特に間違われやすくなるだろう。だかたこの冒険者は私の事をお嬢さんと呼んだのだろう。その呼び方に慣れていたので、私も気付かずに反応せずにいた私も私だと思う。
「貴方は一体どこまで行くんですか?」
「あぁ、僕は次の駅で降りるよ。クエストがその場所からでね」
「そうなんですか、頑張ってくださいね」
「ありがとう」
数時間が経ち、さっきの冒険者の人が駅で降りていき、私は話相手が居なくってしまったが数日我慢すれば着くので、我慢していたが最終日まで持たなかった。近くの老婆に話しかけたくてうずうずしていると相手の方から話かけてくれた。
「あんたは数日程前に冒険者と話していた子だね」
「えぇ、そうですね」
「我慢が出来なさそうだから私が何か話てやるよ」
「本当ですかありがとうございます」
「あぁ、この老婆との話に付き合ってくれるかい」
「本当ですか!ありがとうございます」
「さて、何から話したものか。そうだ、自己紹介でもしようかい」
「そういえばしていませんでしたね」
「あたしは、あんたの行く港街に住んでる薬屋のグラニーってもんさ」
「私はイリスです」
「イリス?はて、どこかで聞いた名前だね」
「そうですか?こんな名前多いんじゃないですか?」
「そうだろうか、何かが喉につっかえているんだがね。出てこんよ」
「そうなんですか。まぁ、お話ししましょうよ」
「そうさね。ここから北に2週間ほど行ったところに古い王国があるのは知っているかい?」
「えぇ、知っていますよ。私はそこの生まれですから」
「そこにはドラゴンと共存したという話が有ってそれが王国の名前の由来らしい」
「知っていますよ。王国に住む者なら大体の者が知っている内容だと思います」
「そこの王国になる前、大きな戦争が起こって、ドラゴンの助力を手に入れた街は当時最強と言われていた国を潰してしまったのさ。その国の領土を吸収して合併して今のドラゴシア王国になったのさ。偉い事にその国の王様はドラゴンの力を自分のために使わずに領民のために使い、ドラゴンからの硬い絆を構築したそうだよ」
「それは初耳ですね。今度王様に直接聞いてみますね」
「あ、思い出したよ!ドラゴシア第1王女ドラゴシア・イリスというのがあんたの本名だろ!」
「いえいえ、そんな事はありませんよ」
「いーやそんな事無いね。確かに、王国記念祭の時に見た顔だよ」
「あら、いらしゃったんですか」
「見ていたよ。美しい顔をしていて特徴的な耳、つまりエルフという事をねしっかりとこの目で見ていたからね」
「いやはや、参りましたね」
「今、外套を深く被っている理由が分かったよ」
「そうです。私がドラゴシア・イリス本人です」
「そうだったのかい」
と、話していると目的地に着いてしまったようだ。
今回も読んでいただきありがとうございます。ようやく学院から卒業させる事が出来ました。
大分駆け足になってしまいましたが、まだまだ続くと思いますので、引き続きよろしくお願いします。




